メディアグランプリ

読書会でのセールス行為は歓迎します


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:小菅 千晶(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ダメだ……開始時間を過ぎている……」
 
目が覚めるなり、深い絶望感に襲われた。
今日は初めての読書会に参加する……はずの日だった。
 
都内で読書会というものが流行っていると聞く。
開催時間は早朝、参加者それぞれ好きな本を持ち込んで内容や感想を共有することが多いそうだ。
 
子供のころから通知表に“よく本を読む子”と書かれた私にとっては、非常に興味深いイベントだ。
しかしながら、現在は地方に転勤中だ。今住んでいる地域には読書会というものは開催されていないようだ。
 
どうしても気になって、東京行の切符とホテルを予約し、土曜日の早朝に開催されている会に申し込んだのだった。
 
「すみません!寝坊してしまいました!」
 
慌てて主催者さんにメールを打ってみたが、返信は無い。
きっと呆れられてしまったのだろう。
二度目の申し込みは出来ない気がする。
その日はむなしい気持ちでぶらぶらと東京散策して終わった。
 
「二度目の正直!」
私も簡単に挫ける人間ではない。
2週間後の休みの日、私はリベンジをすることにした。
寝坊問題を回避するために、お昼開始のイベントを選んだ。
 
おそるおそる集合場所のカフェに向かう。
 
知り合いに見つかったらどうしよう。意識高い系だと笑われないだろうか。
参加者に怖い人がいたらどうしよう。
持ち込んだ本のチョイスをバカにされたりしないだろうか。
参加者の人達ってあのグループかな、それともあの席の人達かな。
 
頭の中をぐるぐると不安が駆け巡る。
 
……あの人たちだ!
 
「こんにちは、参加申し込みをした小菅といいますが、ここが読書会ですか?」
「ああ!小菅さんですね、お待ちしていました!」
 
主催者とおもわれる男性がにこやかに応対してくれる。
6名ほどだろうか。ほかの参加者の皆さんの顔つきも平和そうだ。
 
幸い、私も普段から飛び込み営業を行っているためか初対面の相手にはさほど緊張しない。すぐにその場に溶け込むことができた。
 
そして自己紹介をした。
発表の順番を決めた。
最初の人が、持ち込んだ本の紹介を早速始めた。
自分なら普段読まないジャンルの本だ。面白かった。
 
「何でその本を手に取ったの?普段からよく読むジャンルなの?」
「その著者って普段何やっている人なの?」
「紹介してくれた箇所以外のページには何が書かれているの?」
 
いろいろ気になる。他の皆も同様らしい。
質疑の時間も盛り上がった。
 
自分の順番が回ってきた。
事前に作ったカンペの内容を思い出しながら拙く喋る。
6人全員が私の方を向いている。本当に緊張する。
きっと私の声はうわずんでいただろう。
 
当時私が持ち込んだのは営業スキルに関する本だった。
1人からコメントを貰った
「小菅さんは、商談よりも、商談後のアフターフォローを大事に考える人なんですね」
確かにそうかもしれない。自分だと普段気づかないけれども、言われてみるとはっとする。
 
「その本、読んでみたくなった」
別の1人がそう言ってくれた。
この場に来てよかった、心からそう思った。
 
その後、私は転勤が終わり東京に帰ってきた。
お気に入りの読書会を見つけ定期的に通ったり、自分で開いてみたりもした。
その様子を雑誌に投書したら、取材を受けたこともあった。
今では自分の趣味のひとつだ。
 
読書会というものは、営業の仕事に似ている。
 
営業マンは、まずお客様の現状をヒアリングし、
ニーズを汲み取らなければならない。
しかし、お客様が必ずしも自分のニーズを把握しているとは限らない。
営業に訊かれたことに答えながら、「そういえばこんなことに困っていた」と気づくことも少なくない。
だから、営業の側としても、いかに鋭い質問を投げかけるかというスキルが問われる。
 
読書会の聴き手も同様だ。
発表者が思いを十分に語りつくせるように、いろいろな方面から質問を投げかける。発表者が気持ちよく語り尽くせる会が、良い読書会なのだろう。
 
そして営業マンは、自社の製品を魅力的に見えるように紹介し、「買いたい!」という言葉を引き出さなくてはならない。
 
読書会の発表者側も同様だ。
どんな人に向いている本なのか、
読むことでどんなメリットがあるのか、
目新しいポイントはどこなのか。
 
その本の魅力をわかりやすく説明する必要がある。
「読みたい!」という言葉を貰えたら勝ちだ。
 
読書会の場は、聴き手も、話し手も、みんな営業マンなのだ。
 
このスキルは、セールスの仕事以外の人にも役に立つ。
相手のニーズを汲み取り、自分の考えを伝わるようにプレゼンすることは、
事務でも、設計でも、サービスでも、組織に努めている人にとって
社内営業スキルを身につけるために欠かせないものだと考える。
 
読書会での実際のセールス行為は通常禁止されている。
しかし、読書会を使ってセールススキルを上げることは、私は歓迎だ。
 
 
 
 
***
 
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/zemi/86808
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-07-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事