遠くまで飛べる羽を手に入れる方法
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:中野ヤスイチ(ライティング・ゼミ日曜日コース)
「ありがとうございました、また会いましょう!」と笑顔で最後の挨拶をした。
そう、僕は新人から8年間務めた会社を辞めた。辞める瞬間まで、辞める感覚はなかった。いや、辞めたあとも、1ヶ月間は辞めた感覚はなかった。
むしろ、仕事をしない事に対する罪悪感がどんどん増してきて……。仕事がしたいなぁと思った。仕事とは何なのかわかなくなっていたけど……。
会社をやめて、次の日から気がついたら、ベットから起き上がれなくなっていた。
今までだったら、1日寝たぐらいで元気になるのに、今回は中々、回復しなかった。
会社をやめたら、羽が生えたように自由になれるとずっと想像していたのに、それはどうやら、幻想だったようだ……。
回復する所か、どんどん悪化している感じがあった。このまま、動けなくなったらどうしょう、という不安の波に飲み込まれなっていた。
「これは、まずい、病院に行こう」と思い、すぐに近くのクリニックに向かった。
いつも歩いている慣れた道が遠く感じた……。
まるで、砂漠でオアシスを探しているよう感覚だった。
「こんなに、遠かったっけ……」と思いながら、なんとか、病院に着いた。
先生からの診断は、「そうですね、風邪ですね、薬出しておきますね」だった。
「あ、はい。ありがとうございます」と言って診察室を出た。「え、こんなに辛いのに、ただの風邪かぁ……」と思いながらも、先生にみてもらったことで少し平常心に戻っていた。
処方箋をもらい、病院を後にして、近くの薬局で薬をもらい、家に帰った。
あまりに疲れていたのか、薬を飲んで、直ぐに寝てしまった。
気づいたら、夕方になっていた……。
ベットに横になりながら、疲れていたんだなぁ、としみじみと思った。
思い返せば、8年間が余りにも濃すぎて、「もう意味がわからい」と叫びたくなるほどだった、会社をやめる直前は軽いうつ病みたいになって、運転しながら、自然と涙が溢れていた。
「何が悲しくて、泣いているんだろう……」と訳がわからなくなっていた。ただただ、涙が流れるのである。自分では制御する事が出来なかった。
決して会社では、弱みを見せないようにして、常に元気な姿を見せようと、気を張っていた。今の自分ならわかる。
当時の自分は当たり前になりすぎていて、自分が辛いということすら気がついていなかった。
社会人になったら当たり前、私情を入れてはいけない、この私情は入れてはいけないという硬い箱の中で、もがき苦しんでいた。常に誰かに好かれようとして、自分らしさを失い、意見も言えない、サンドバックになって、打たれ続けた結果、心の糸が切れてしまった……。
心の糸が切れた瞬間、人はもう自分を制御することができなくなってしまうらしい。
その日の夜、妻に会社を辞めることを告げて、了承してもらった。
「もう辞めなさい、体を壊してまで頑張る必要はない」と言ってくれていた妻の目には、涙が溢れていた。それを、見るのすら、とても辛かった……。
会社を辞める理由は色々とあると思う、統計的には「人間関係が上手くいかなかった」が多いらしい、僕の場合はなんなんだろうか。
「燃え尽き症候群かもしれない」と思ったが、どうやら違うようだ。
答えは、「このまま、この会社にいたら自分を失う」とわかったからだった。
いつの間にか、自分の心に、素直に向き合うこともせずに、来る日も来る日も目の前の仕事、上司からの指示に追われ、意味の無い会議に追われ、戦う力すら残っていない中、営業マンとして戦っていた……。その状況を改善する程の熱量がもう僕には残っていなかった……。
きっと、本当の僕の気持ちも知らないで、辞めたという事実だけを知った人は、「アイツはプレッシャーに負けたな、数字が悪から仕事できなかっただけだろ」と言われているかもしれない……。
僕は、それで、良いと思えた。やっと開放される自分がいたから、気を張って、頑張る必要もない、誰かに好かれようとする必要もない、自分の心が望む方向に進もうと決めれたから。
「時には、潔く、負けを認めて、違う方向に逃げる方が勝ちである」
でも、意外とこれを実行に移すのは難しい、だから、会社を辞めた後に、張っていた気が抜けた瞬間、ベットから起き上がれなかった。
僕よりも少し先に仕事を辞めた先輩が、送別会の次の日に肺炎になって、2週間もう動く事ができず、休んでいたと聞かされていたので、まさか、自分も同じようなことが起きるなんて思ってもみなかった……。
人は常に努力して、嫌な事があってもガンマンしながら、前を向いて頑張っている。
それも、自分の心にムチを打ちながら、傷ついている事に気が付かなくなるほど……。
僕の場合は、体が先に悲鳴をあげてくれたから、気がつけて、ラッキーだった。
結果的に、社会人になって初めて2週間、ゆっくり休むことができた。
もしかしたら、気が付かずにがむしゃらに頑張っている人が多くいるかもしれない。
そんな人に、「負けたって、良いじゃない!? 違う輝く道が見えるかもしれないよ」と今の自分は伝えてあげたい!
負ける事を自ら認めることで、失うモノより得られるモノがある。
今の僕は羽がついたように軽くなり、自分らしく遠くまで飛べるようになった。
きっと、あなたにも、もっと遠くまで飛べる羽がついているに違いない。
自分の人生を生きる為に、潔く、負けを認めてみるのは、いかがだろうか。
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