メディアグランプリ

偽笑顔と脳の関係


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:上野清香(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 

笑う門には福来るに始まり、笑顔には魅力があり、笑っていると良いことが起こるというような諺から格言が日本だけでなく世界中で溢れている。
有名人、著名人も笑顔について沢山のコメントを残し、彼ら彼女らのファンたちはその言葉を支えに生きていると言っても過言ではない。
 
 
営業マンや従業員たちが受ける接遇の授業も営業スマイルをいかに営業スマイルに見えないか? の笑顔レッスンがあったり、笑顔は人の防御の壁を崩すパワーがあるのだ。
 
 
買い物に、食事に、様々なシーンで人との表情よるコミュニケーションが必要になる。
誰かに声をかけて質問するときに、人は無意識に表情豊かな、笑顔のある人を選ぶだろう。
 
 
わざわざ、強面や仏頂面や不服顔の人に声をかけるチャレンジャーはそうそういないだろう。
 
 
日常の中でも、親、パートナー、上司、同僚の顔の表情、コンディションを確認することはないだろうか? 「今日は機嫌がいい」「今日はイライラしていそうだ」「頼み事は機嫌のいいときに」とか。
 
 
このように私たち人は顔の表情から相手の気持ちを汲み取ったり、読み取って
微妙な関係を保っている。
 
 
表情の中で王座を長年維持し君臨してきた「笑顔」に近年崩壊の影が近付いてきている。怒り、悲しみ、蔑み、哀れ、多々ある表情の中の最強の技である「笑顔」が自分自身にとって危険因子になり、精神だけでなく脳も攻撃するという研究が発表された。
 
 
ひと昔まえにフェイシャルフィードバックという言葉が心理学や表情学で盛んに言われていたことがある。それは脳が顔の表情で騙されるという研究結果だ。
 
 

簡単にいうと心では楽しくもない、面白くもない、辛くて悲しい気持ちだけれど、
口角(口の両端)をクイッとあげて笑顔をつくると、脳が勘違いを起こし
不幸のどん底にいてもなんだか幸せな気持ちになるというわけだ。
悲しくても笑顔をつくれば悲しくならない。
人は楽しいから笑うのではなく、楽しくなりたいのなら、幸せになりたいのなら
「笑うべき」である。笑っていれば良いことが訪れる。ようは自分の心持ち次第なのだ。
このようなことから、苦しくても笑え! 的な根性論ともとれる風習が蔓延している。
 
 

苦しくても笑顔を後押ししたのは笑うことでキラー細胞が活性化し癌に対して有効だと
報じられたからであろう。笑い、幸せな気持ちは身体の免疫の力を増し、ミスコピーされた悪い細胞をやっつけるキラー(殺す)細胞が働くからだ。
病で苦しんでいる方は率先して、お笑いテレビをみたり、笑うシチュエーションを作っている。また、欧米から始まったホスピタルクラウン(道化師)は病気で苦しんでいる子供たちに笑顔を届ける重要な仕事だ。
 
 

私は表情筋トレーナーとして笑顔のレッスンを長年行ってきたが、フェイシャルフィードバックの考えがどうしても好きになれない。
泣きたいときには泣きなさい。苦しいときには苦しいといえるようになりなさい。
自分の感情と上手に付き合いなさい。職場で泣けないときは風呂場で泣いてシャワーで泣き声を消しなさい。感情を隠すのではなく感情を上手にコントロールすることの方が
健全だと思うからだ。
 
 

笑顔が悪いと言っているのではなく、コメディを見て笑うことと、笑いたくもないのに、
 
 
苦しくてたまらないのに無理して笑うことは同じではないと思っているからだ。
脳を騙す必要はないのだ。
 
 
私の考えは笑顔信者の方にすると異端であり、目の上のタンコブである。
だが、タンコブは私一人ではなかった。
現在、無理して笑うことは脳へダメージを起こすことがわかってきた。
本当の笑顔と偽物の笑顔では脳への回路が全く異なることが分かった。
脳は騙されてはいなかったのだ。
 
 

目的があり、例えば病気に打ち勝ちたい! 元気になりたい! その強い思いから
面白いことを見たり、聞いたりして笑うことは脳を傷つけない。
苦しいのに笑いたくもないのに無理して笑うことが脳を傷つけるのだ。
これは「似て非なるもの」なのだ。
 
 
偽物の自分を偽った笑顔が脳を傷つけるとはいったいどのようなことなのか?
それはすぐに起こるのではなく蓄積によって生じてくると研究では言われている。
それが「認知症」と言われている。
 
 
現代社会において営業スマイルや笑わなければならない状況があるのはよくわかる。かく言う私も日々偽笑いで生きているし、上手に笑い周りを和ませている作り笑いの申し子といっても過言ではない。だてに表情筋トレーニングで顔を鍛えあげていないのだ。ただ、心の中はきちんと自分に向かって話しかけている。「面白くないのに笑っている」「作り笑顔で対処している」「発散しないとね!」と、言った具合に。
そして、一日の顔疲れは入浴時にゼロセッティングがお勧めだ。手鏡を持ち怒った顔、困った顔、泣き顔、好きな人を思い浮かべての満面の笑顔、そして無表情で締めくくる。
 
 
心の中は誰の物でもない。自分だけのもの。本当の笑顔も自分のもの、偽笑いも自分のもの。上手に使って偽笑いの申し子になってみてはどうだろうか? きっと脳が喜んでくれるはずだ。

 
 
 
 
 

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2019-08-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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