メディアグランプリ

聞き上手は○○を下ろさなければ自動的にできる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:のぐちまりゑ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「どうやったらそんな聞き上手になれるんですか?」
 
大学生の頃、サークルの後輩くんに訊かれた質問だ。
 
そのときは男性アイドルが大好きな友人と、ライブの良さについて話が盛り上がっていた。友人が席を外したすきに、後輩くんが私に近づいてきてこう言ったのだ。
 
「彼女の話、いつもうまく聞いてますよね。俺ぜんぜんできないんっすよ、なんでですかね?」
 
私は会話が非常に苦手である。話にオチも設定できず、記憶力も弱いので過去のおもしろエピソードも説明不足で伝わらない。
 
アイドル好きの彼女は話すのが上手で、いつも場を盛り上げてくれる存在だったのだが、好きなものの話になると暴走しがちな傾向にあった。けれど後輩くんから見ると、私はその暴走に振り回されることなく会話を楽しんでいるように見えたらしい。
 
のちにその彼女からも「ほんと聞き上手だよね、いつもちゃんと聞いてくれる」と言われたのでどうやら確かなようだ。
 
実は話すのがめちゃくちゃ苦手だから聞いている方が楽だ! という消極的な理由で聞き役に徹していただけなのだが、「聞き上手認定」される回数はどんどん増えていった。
 
たとえば、個別指導の塾講師をしていたとき。
中学生の男子生徒を担当することになって授業を終えたあと、近くで眺めていた上司から「話聞くのうまいね? あの子あんなにしゃべったことないよ」と言われて驚いた。
 
他にもびっくりだったのは、ある会社の入社面接で、面接官が気持ちよさそうに長めの話をしてくれたときだ。
 
「いやぁごめんなさいね、ついしゃべりすぎちゃったね。君、聞くのうまいね」
 
と言われ、その会社の内定が決まったのである。
 
他にも美容師さんやエステのスタッフ、心療内科の先生にまで聞き上手の称号を贈られた。毎回そんな状況にびっくりする。でもそれ以上に、心地よく話してもらえることが嬉しかった。
 
私はカウンセラーのような特殊な訓練を受けているわけではない。
表面的な相槌のテクニックも使わない。
 
では、どうしてこんなに聞き上手認定されるのだろうか。
 
自分の中の答えとしては「質問をする」という態度だ。
 
人の話に自然と興味が湧くので、質問も自然に出てくる。
 
いやいやいや、自然に興味が湧いたら苦労しないよ、という方のためにもう少し噛みくだいてみよう。
 
よく「5W1H」で質問するという手法を見かけるが、人と話をしているときに「what, when ……」なんて考えてはいられない。会話というのはどんどん流れていくものだから、ややこしいことは考えない方がいい。
 
私の場合はシンプルだ。
 
「違い」を見つけることだけに集中している。
 
実はそれは「誰でも自動で」できるのだ。
 
たとえば、アイドル好きの友人とライブの話題に触れたとする。
 
私はロックバンドのライブに行くことがあるので、ライブの体験自体は「同じ」だ。
自分も体験したことがあるから、当然それは自動でわかる。
 
同じライブでもアーティストは全く違うので、「違い」も自動でわかってくる。当たり前すぎる話だが「同じ」ではない部分は、すべて「違い」だ。
 
・音楽ジャンルの違い
・楽器があるかないかの違い
・舞台セットの違い
・トークなどの構成の違い
・ファンの持ち物や服装の違い
 
などなど無限にあるだろう。私はその「違い」がどのくらい違うのかを質問しているだけである。
 
質問のやり方としては、
 
「(バンドは楽器があるからメンバーは動かないけど)アイドルのライブだとすっごく近くまで来てくれたりするの?」
 
「(バンドのアンコールは「アンコール!」と叫ばずファンが歌を唄うルールがあったりするけど)アイドルのライブでも何か暗黙のルールとかあるの?」
 
基本はこんな感じで、丸カッコ内のセリフも適宜使いつつ質問していく。
 
実際に質問してみたら「違い」がなくて「同じ」なこともある。でもそのときは「共感」ができるので、どちらに転んでも結果オーライなのだ。
 
自分と「同じ」ことは誰でも一瞬でわかるし、「同じ」がわかれば「違い」も自動で浮かび上がってくる。難しいことは何もない。
 
ではサークルの後輩くんを筆頭に、あらゆる人たちが聞き上手をうまく発揮できない理由はなんだろうか。
 
ポイントは「シャッターを下ろすかどうか」だ。
 
人は、相手と「同じ」部分を見つけると嬉しくなる。
反対に「違い」を見つけると身構えるようにできている。
 
「違う」ものは「わからない」もの。
「わからない」ものは「こわい」もの。
 
そんな連想ゲームが瞬時に行われて、心のシャッターが勝手にガシャーンと下りてしまう。
 
ところが、聞き上手はシャッターが全然下りない。
24時間営業のコンビニばりにずっと開いている。
 
それが聞き上手の基本姿勢だ。
 
もちろん、セクハラやパワハラのような会話は即シャッターを下ろした方がいい。いくら24時間営業でも危険な人物がいれば締め出すのと同じだ。
 
でもほとんどの場合、仲の良い相手だったり初対面でも交流を深めようとする相手ならシャッターを下ろす必要はない。
 
「違い」があることは当たり前だと心得る。自分と同じ人間なんて、この世に一人も存在しないからだ。
 
「同じ・違い」を発見したら「良い・悪い」の評価をせず、質問をするだけ。こう説明すると、簡単すぎて表面的なテクニックに見えるかもしれない。
 
しかし、「違い」を発見して質問をするのは「違いを尊重する」ことに他ならない。それは「他者を尊重する」ことと同じだ。
 
つまり「聞き上手」とは「他者を尊重する」姿勢なのである。
 
私は過去、苦手ながらもたどたどしく話をしたときに、熱心に質問してもらえたことがあった。
 
「あぁ、ちゃんと興味持ってくれてるなぁ」と安心できたのである。それ以来、人の話を聞くときはなるべく質問をするようになった。
 
そして、もともと関心の薄い話題であっても、興味のかけらをかき集めることができるようになっていったのだ。
 
もしあなたが、会話の相手に心地よいと思ってもらいたいなら、気をつけることはシンプルである。
 
・「違い」を見つける
・見つけてもシャッターを下ろさない
・どのくらいの「違い」なのか質問してみる
 
これだけで、聞き上手の芽が育っていく。
そしてどんどん他者を尊重できるようになっていく。
 
そうすれば今までよりずっと、心地よい会話を楽しめるようになっていくはずだ。
 
 
 
 
***
 
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/zemi/86808
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-08-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事