メディアグランプリ

スコール!(乾杯)のカタチ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:隈本康介(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
「スコール!」
ノルウェー人とお酒を飲んでいる。
場所は梅田のろばた焼き屋。このノルウェー人と知り合ったのは30分前である。
金曜夜の仕事帰りに同僚とろばた焼き屋に入った。昼間に気温は30度を超え、ビールが美味しい季節になってきた。カウンター越しの店主に注文する。
「大将!手羽先とホッケ開き、あと万願寺唐辛子を焼いて!」「はいよ!」
客も店員も活気があって好きな雰囲気の店だ。
 
 
そこへ、一人の外国人が入ってきて、空いている私の隣に座った。
「ジャミロクワイみたいやなぁ」同僚がぼそっと言う。
ハッキリした目鼻立ち、サラサラの金髪。いかにも欧州人という感じだ。
その欧州人?は、座ったが注文も出来ずに困っている様子である。
 
 
「なぁ……声かけてみぃな」と同僚が私の肩を押す。
しぶしぶ声をかける私。
「何を飲むねん?」もちろん日本語である。片言の英語とスマホの翻訳アプリを駆使して意思の疎通を図る。
欧州人?が私の飲む生ビールを指差す。
「OK!大将!生ひとつ!」
行きがかりで、私と同僚、欧州人?の三人の飲み会が始まった。
 
 
私が問う。
「どこから来てん?」「名前は?」
欧州人?が答える。
「ノルウェー……」「カール……」
ノルウェーから来たこと。名前はカール。サラリーマン、出張で日本にきており昨日までは東京にいた。などなど……判明してきた。
 
 
私は外国人とお酒を飲むとき、三つのアプローチを試みる。
 
 
一つ目は、“乾杯”だ。相手の国の言葉で乾杯する。
 
 
カールからノルウェー語で乾杯は「スコール!」だと聞き出した。
さっそく三人で「スコール!」
カールの笑顔が店の中に伝わった。
 
 
次に、相手の国の有名人談義である。
しかし……ノルウェー人の有名人って……自分の脳に問いかける。赤地に青の十字、ノルウェーの国旗を背景に思い出したのは……スキー滑降の選手をテレビで見たような……私の記憶はここが限界だ。
残念だがGoogle検索に頼るしかない。
“ノルウェー”+“スキー”+“滑降”……ヒットした。
アクセル・スピンダル。
「ああ、こないだのオリンピックで金メダル獲ってるやんけ!」
カールにスマホを見せて言う。
「スピンダルは凄いやないか!」
カールのテンションが上がるのが分かった。カールの心にヒットしたようだ。
 
 
そして最後に、オススメの神社紹介である。
日本の文化を伝えるのによく使う。
最初に相手の生年月日を問う。
カールは「1978年6月16日」と答えた。
1978年の干支をGoogle検索。午年だ。
日本には干支があり、カールは午年生まれであることを伝える。
「君の干支は“うま”や!」
 
 
そして、馬を奉った神社。
オススメは、京都府伏見区の藤森神社だ。競馬関係者も多く訪れる趣きのある神社である。
カールにGoogleMapを使い場所を示す。掲載されている写真の鳥居、拝殿などを見て盛り上がる。
 
 
お返しに、カールがノルウェーのことをいろいろ教えてくれたが、よく分からない、理解できたのは「サーモンがムッチャおいしい!」ということだけだった。
 
 
楽しい宴は終わり、店の前でカールとハグをして別れた。
その直後、カールは通りがかった若い日本人女性をナンパして、夜の東通り商店街に消えていった。
「ノルウェー人カッコイイ……」同僚と二人唸った。
 
 
飲み屋で困っている外国人を見かけたら、声をかけてみませんか?
日本の文化を伝え、日本のファンを増やしましょう!

 
 
 
 
 

***

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2019-08-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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