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もしもメロスがアンガーマネジメントを習得したら


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡邉翔太(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
「メロスは激怒した」
ちょっと待ってメロス、深呼吸してみよう!
次に100から6ずつ引いてみて!落ち着くから!
 
僕の父はよく怒る人だった。
いたずら盛りの小学生の時は結構な頻度で怒られていた。小学校高学年になると、ゲンコツをされるのが嫌で度々家から脱走していた。とはいえ小学生の行動範囲など限られているものなので、家の裏側にあるマンションの階段に隠れて座る程度。そうすると決まって、父はたまたま外にタバコを吸いにきた感じで探しだしてくれて、怒った理由を優しく説明してくれながら家へと連れて帰るのであった。
 
振返ると、その怒りには愛があった。
 
社会人になってから、一度だけ本気で怒られたことがある。
製薬会社に営業として入社。当時3年目で、ある病院の先生に自社の薬剤の売り込みをかけていた。この先生は薬剤の良し悪しの前に、その営業マンが信頼できる人かどうかを重視していた。半年程通いつめ、ついに自社の薬剤を使ってもらえることになった。携帯電話の留守番電話には「君が熱心に紹介してくれていた薬剤を使おうと思う。使う時の注意などを折り返しの電話で教えてくれるか」と。喜んですぐにかけなおすと「なんで電話をかけてきたんだ? 君はもう二度と僕の病院に来なくていい」という反応。意味が分からなかった。突然難しい『なぞなぞ』を出された気分であった。とは言え大事な先生を怒らせてしまった。翌日朝いちばんで謝りに行った。
 
穏やかな口調で先生は言う。
「なんで怒ったか分かる?」
続けて先生は言った。
「渡邉君は信頼のできる営業マンだと思っていたんだ。ずっと熱心に紹介してくれていたあの薬剤、ちょうど困っている患者さんがいたから使おうと思ったんだよね。僕は、渡邉君だったら患者さんのことが心配ですぐに飛んできてくれると思ったんだよね」
 
あぁ。
謎がとけた。裏切ってしまったのだ。
そこに患者さんという視点はなかったのだ。
先生の穏やかな口調が、逆に厳しく感じた。
 
振返ると、その怒りにも愛があった。
 
これだけ愛のある「怒り」に育ててもらったにもかかわらず、僕は怒り方が下手な人間になっていた。入社7年目。悩んでいた。社内でも中堅としてみられる年次。期待されるのは「うまく周りを巻き込んだ大きな仕事」であったり「個性を伸ばしながらの後輩指導」といったところだろうか。しかし実状は上手くいっていなかった。こちらが思った通りに動いてくれない先輩に容赦なく噛みつき、期待通りに伸びてこない後輩には怒鳴り散らし。
 
僕の怒りには、愛がなかった。
 
愛がない怒りでは、相手に一切こちらの気持ちや意図は伝わらない。そして自分自身も感情に振り回されて疲れ切っていた。双方になんのメリットもない状況であった。「このままじゃまずい」と思ったその日、本屋である1冊の本を手にした。
 
『マンガでやさしくわかる、アンガーマネジメント』
 
ドンピシャの名前、キャッチーな表紙。むさぼるように読んだ。300ページほどの本であったが、読み終わるのに1時間もかからなかった。この本の内容は非常にクリアにまとめられている。下町の信用金庫に勤める主人公が、社内で大きなプロジェクトをリーダーとして進めていく。その中で当初は怒りという感情に振り回され、同僚との関係性もイマイチであったが、体系的にアンガーマネジメントを学ぶことで徐々に主人公が変わっていくという内容。
 
「怒りを感じたら、まずは深呼吸」
「次に頭の中で100から6ずつ引いてみる」
 
この方法は数あるアンガーマネジメントの手法の中のひとつで、100から6を引く作業をしていくと、段々と怒りという感情がおさまっていくというもの。
 
この方法は早速次の日に試された。朝8時の集合に5分遅れてきた後輩。いつもなら問答無用で『お前なに遅れてんだよ!』と怒るところだが、まずは深呼吸。そして100から6を引いていく。94、88、82……。僕の算数力の問題か?なかなか難しい。そして段々とアホらしくなり、気づくと後輩への怒りなどどこかへ飛んで行ってしまっていた。『なにかトラブルでもあったか? 次からはもう少し早く来るようにな!』
 
おそるべしアンガーマネジメント!!
 
「愛のある怒り」は、部下の育成や物事を進める劇薬として大いにありだと考える。しかし「愛のない怒り」は双方にとってメリットがないケースが多いので、マネジメントをする必要がある。『マンガでやさしくわかる、アンガーマネジメント』では具体的な手法を交えて習得できるので、怒りという感情に振り回されがちの方は一度読むことを、そして実践してみることを進める。
 
ふと、『走れメロス』の主人公メロスにアンガーマネジメントを勧めてみたいと思った。きっと無駄に走ることもなかったし、親友のセリヌンティウスが人質になることもなかった……かも?と思う。
 
 
 
 
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2019-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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