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思考をリセットする方法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:大原亜希(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「疲れたら休む」
小学生でも知っている。私もそうするべきだと思っていたし、実際に社会人になってからもそうしてきた。そう2年前の夏までは。
 
私は今、全く真逆の言葉に従って生きている。
「疲れたら動かせ」
もっと早く知りたかった、と思った。この原理を知った時は。
 
私は昔から悩みやすくて、とても疲れやすかった。「深く考えすぎだよ」と人に言われてきたし、自分でもそう思う。気づくとスイッチが入っていて何かしら考えている。考えないようにしようと思うと、「考えない」ことについて考えてしまうのだから、自分でもお手上げである。
「なんであの上司あんなこと言うんだろう」「なんでこの会社のシステムってこうなんだろう」に始まり、終いには「そもそも、人を信じるって何?」みたいな哲学的な問いにたどりつく。こうなると、頭の中を思考がぐるぐるし始めて、止まらなくなる。ハッキリした答えの無い問いだから、ますますそうなる。
 
そんなわけで私はいつもなんだか疲れていた。休日は基本的に家で寝ていたり、起きていてもぼーっとしていたり、出かけても出先のお寺でぼーっとしたりしていた。でも休んでも休んでも疲れはとれなくて。それはここ数年の私の悩みだった。
 
そして2年前の夏に、私は会社を辞めた。人生で一番ぐらいに疲れていたこともあって、16年間務めたサービス業の世界からは、卒業することを決めていた。とはいえ、他の会社にまた転職することも、すぐには考えられなかった。本当に疲れていたんだと、自分でも思う。
心配した家族や友人は「次はどうするん?転職活動は?」と、事あるごとに私をせっついた。私は「ひとまず休む」と答え、何度同じことを尋ねられても、全く反応しなかった。
 
「16年も真面目に仕事してきたんだから、ちょっとぐらい自由にやってもいいじゃないか」と、あの時私は感じていたんだと思う。
好きなこと、ワクワクすることだけをやりたい。やりたくないことは、やらない。そんな風に生きていくと、心に決めていた。ネットで見つけた面白そうな講座に片っ端から行ったり、Facebookで流れてきた絶景写真のお寺を次の日に尋ねたり。
 
そのうちのひとつにテニスがあった。テニスをすることを思いついた、というよりは、思い出した、という方が正しい。私は中学・高校と6年間テニスをしていて、社会人になってからも地域のサークルでテニスをしたり、なんなら6年間の海外生活にもテニスラケットを持って行くぐらい、テニス好きだったのだ。すっかり忘れていた。
 
そういえばここ7年ぐらいテニスをしていない。行きたい、行きたい、と思いながらも、休日になると仕事の疲れで気力がわかなくて、ずっと行けていなかった。
 
テニスをしている自分を思い浮かべたらいてもたってもいられなくなって、近所のテニススクールを調べて早速体験レッスンに申し込んだ。一年中、どんな季節でも出来るように、屋根付きのコートを持っているスクール。
体験レッスンの日は、ブランクでボロボロだったのだけど、ボールを打てることが嬉しすぎて、その場ですぐにレッスンに申し込んだ。毎週水曜日、朝9時から1時間半。
 
元々学生時代に基礎を叩き込まれていることもあって、2週間もするとそれなりに打てるようになり、1か月後には上のクラスに昇格。久しぶりに、楽しくて楽しくてたまらなかった。
新しいクラスに移ってから1か月ぐらいした時、私はあることに気が付いた。テニスのレッスンの後は、なんだか頭がスッキリしているということに。自分の好きなことをやっているからそうなのかな、と思っていたけれど、例えばカフェでお茶をしたり大好きな読書をしても、頭はスッキリしないんだから何故だろう?
 
気になって色々と調べてみたら、「左脳を休ませるには、右脳を動かすと良い」という記事をネットで見つけた。何でも現代人は左脳を使い過ぎていて、バランスが非常に悪いらしい。左脳を休ませるには、パソコンを閉じる、スマホを見ない、とかだけではダメで、体を動かしたり右脳と繋がる五感を使うと良い、と書いてあった。
 
私はそこで、ああだからか、と思った。考えすぎて頭が疲れた時に、寝て体を休めたら逆効果だということ。だって、右脳も一緒に休んでしまうんだから。でも会社員をしていた時の私は、疲れたらとにかく寝ていた。そりゃ頭が休まるわけがない。実際、夢の中でも新しい商品のことを考えたりしていたし、朝目が覚めると頭はまるでスッキリしていなかった。
 
それに気づいてからの2年間、私は一度もテニススクールを休んでいない。テニスは私にとって思考をリセットするための場なのだ。頭と心と体の状態の、バランスをとるための時間。めちゃめちゃ激しく動いているけれど、癒やしのひとときでもある。
 
もっと早く知っていたら違う未来があったのかなあ、と考えなくもないけど、そしたら今の仕事とは出会えなかったのだからまあいいか、と思うことにしよう。
 
最近、仕事柄か「考えすぎてしまって自分でも止められないんですけど、どうしたらいいですか?」という相談をよく受ける。そうすると私は決まって、こう訊くことにしている。
 
「運動、してます?」

 
 
 
 

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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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