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0があなたを狂わせる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:伊藤 千里(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
0は私を狂わせる。
 
先日、新しいパソコンを買うために家電量販店に行った。
 
私は最初、最低限のスペックさえあればいいと考えていた。
文書と表計算のソフトが使えて、ネットが見れて、かつ、持ち運びに苦労しない薄さと軽さがあればいい。
パソコンなんて7年に一回くらいしか買い替えないから、相場なんて全く知らないのだが、「5万円くらいでそれなりのものが買えるだろう」と軽く見積もっていた。
 
完全に甘かった。
 
店員さんに欲しいパソコンのスペックを伝えると、それっぽいパソコンが並んでいるコーナーに案内された。しかしそこに並んでいたパソコン達は、どれもだいたい10万円前後の値がつけられていた。
 
「長く使うのならCPUは、△△以上がいいですよ」
「メモリは○○GB以上あると、サクサク動きますよ」
 
確かにパソコンは高い買い物だから、長く使えるものを選びたい。動作が遅くてイライラするのも嫌だ。目の前にあるパソコンは、軽くて薄くてスタイリッシュで、持ち運びという点においては、私の理想通りのものばかりだった。
 
しかし、当初の想定は5万円くらいだったはず。
でも、軽くて薄いパソコンを持ち歩いて、スタバでライティング……なんてのもかっこいい。
 
そうだ。
スタバといえば、だいだいみんなMacを使っているような……私は、いままでMacなんて使ったこともないのだが。
「Macは置いてないんですか?」と店員さんに聞いてみると、専門コーナーに案内された。
 
やはり、Macはデザインが美しい。スタバでこれ使っていたら、それだけで絵になるだろう。でも高い。軽く12万円を超えてきた。
 
いや、待てよ。
さっきのパソコンは、だいたい10万円くらいだった。
だったら、あと2、3万円足してMacを買った方がいいんじゃないか。どうせ長く使うのだし、気に入ったものの方がテンションは上がるだろう。
 
結局その日は購入しなかったのだが、私の心は完全に「スタバでMac」に支配されており、12万円くらいのMacbook Airを買うつもり満々だった。
 
その帰り道でのこと。
スーパーに立ち寄ったら、どうしてもイチジクが食べたくなった。
 
果実コーナーには、二種類のイチジクが並んでいた。同じくらいの大きさのパックにイチジクが6,7個入っているものだった。
 
一つは、福岡ブランドのイチジク「とよみつひめ」。お値段450円。
もう一つは、ブランドではない普通のイチジク、298円。
 
298円イチジクに即決。
だって安いもの。
 
待て……ちょっと待て。
 
さっきは予算5万円でパソコンを買いにいったのに、10万円くらいのパソコンを買おうとしていなかったか?
さらに、「10万円出すなら、あと2、3万円足してMacを買った方がいい」と考えてなかったか?
それなのに、今ここで150円の差でケチる、謎の思考回路。
 
50,000円or 100,000円or120,000円
298円 or 450円
 
冷静になってみると、すごい差だ。
もし当初の計画通りに5万円のパソコンを買うのなら、5万円節約できる。
Macをやめて10万円のパソコンにしたって、2万円も違う。
5万円あったら……いや、2万円だったって、ブランドのイチジクが何パック買えんだよ!!とツッコミどころ満載すぎる。
 
ああ、そうか。
「0の数(桁数)」は日常生活との距離なのだ。
0が多くなると、日常生活から離れていく。
0の数が増え日常生活から離れれば離れるほど、私の判断力は落ちていく。
 
こういう経験は、誰にでもあると思う。
 
例えば、80円の玉ねぎと100円の玉ねぎがあったら、80円の方を買う。
でも、80万円のバイクと100万円のバイクだったら、なぜか「100万円のでもいいかも」という謎の思考回路が発動する。
 
500円のランチと750円のランチで悩むくせに、結婚式では10万円のオプションをポンっとつけたりする。
 
1万円のスカートを、セールで7,500円で手に入れることが死活問題なのに、家を買うときは100万円違っても大丈夫。
 
もちろん、ものすごくお金持ちで、日ごろから何千万円、何億円という数字を目にしていたら、冷静に太刀打ちできるのだろう。だって、それがその人の日常生活との距離だから。
 
しかし、一般庶民にとって、0が三つ(千の位)くらいが一番親しみがある。だから0が四つ(万の位)以上になると、途端に日常生活から遠ざかり、冷静な判断ができなくなる。
 
0はあなたを狂わせる。
まるで麻薬のように、冷静な判断力をなくさせる。
 
世の中にはこのことを知っていて、そこをうまく利用して商売をする人もいるだろう。家電量販店の店員さんとか、不動産屋さんとか、ウエディングプランナーとか……
もちろん、私はそれが悪いこととは思っていない。
 
ただ、0が自分を狂わせるのだと、麻薬みたいに冷静な判断力を奪うのだということは認識しておいたほうがいいと思った。
認識していたとしても、冷静な判断が期待できるかどうかは別の問題であるのだが……
 
0はあなたを狂わせる。
くれぐれもご注意を。
 
 
 
 
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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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