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ぼくが「ゲイ」を使いたくない理由

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:近藤頌(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
ぼくは自分のセクシャリティーを言った方がいいという判断になった時、「自分はセクマイなんです」という言葉を使うようにしている。
 
そもそも、自分のセクシャリティーについて言っておいた方がいいと感じるときはいつなのかというと、そんなに機会があるわけではなく、だいたいセクシャルマイノリティー関連イベントや勉強会での懇談会とか、たまに行くゲイバーとかでぼくの場合は言うことが多い。言うとはいってもそれとなく話の流れで匂わせたり、逆に聞かれた流れで答えるといったりすることがほとんどだ。
普段生活している間には言う機会はまるでないし、別に積極的に言おうとも思っていない。が、言った方が良さそうだ、というときはやってくるのだった、
 
セクシャルマイノリティー。略して、セクマイ。
ぼくは「ゲイ」という音の響きがどうしても苦手なのだ。
セクマイの中には「ゲイ」であることに誇りを持とう、と言って積極的に使っていこうとする人もいる。その中身、意味内容については賛同しない理由はない。ひとりひとり、それぞれが各々を生きていける世界というのは、まあ悪くないのではないかとは思う。
ただ、その名称が男性同士の場合、どうして「ゲイ」なんだと思うわけなのだ。なんでそんなゴキブリに代表されるようなケバケバしさの含まれた響きの言葉で表現されなくてはならないのだろう。中学生の頃からずっと思っていた。
 
なぜ、男性同性愛者のことを「ゲイ」と呼ぶようになったのか。
これは諸説あるらしいが、もともと「ゲイ」は英語で「お気楽」「陽気な」「派手な」という意味だそうで、そこから紆余曲折あり「享楽的、放蕩」といったイメージが抽出され、主に異性愛者たちから侮蔑の意味を込めて呼ばれるようになったようである。
そう考えると余計に思うのだが、どうして男性同性愛者は「ゲイ」と呼ばれなくてはならないのだろう。確かに性に奔放であることを肯定する文化があるのは事実といって差し支えないと思う。でもそれがどうして、異性愛者の人たちが考えた同性愛者への呼び名で呼ばれ、そして自分たちも呼び合い確認し合わなければなければならないのだろう。
「ゲイ」とはつまり異性愛者の目線で名付けられた同性愛者への呼称だと勘づいてしまうと、もうなんだかぼくは「ゲイ」という言葉を使う気が失せてしまったのだ。その主従関係にも似た目線で作られたこの「ゲイ」という言葉に、果たして固執する必要があるのだろうかとぼくは疑問をずっと拭えずにいる。
それなのに「ゲイ」に誇りを持てと言われても、腑に落ちる訳がなく、もはやそれは異性愛者に対する執拗な突っかかりにしか思えず、素直には頷けない取っ掛かりがある。
本当に“誇りを持つ”ということを目標にするならば、自分がどう呼ばれたいかを今一度検討してみることが必要なのではないだろうか。
 
そこでぼくの場合、「セクマイ」っていいなぁ、と思い始めているのだ。
何より響きがいい。「ゲイ」より断然響きがいい。柑橘系の爽やかさのある口当たりである。
確かに意味内容に重点を置く見方をすると、いささかふわっとしすぎている、という指摘が入るかもしれない。セクシャルマイノリティーはわかったけど、つまりはどういうこと? それがわからないとこっちとしては何に気を付けたらいいのかわからないのだけれど、といった具合に。
はっきり言って、セクシャリティーをハッキリさせたところで、そもそも気を遣わせているということ自体がこちらとしてはストレス以外の何物でもない。
よく言う、普段とおんなじように接してくれればいいというのは本当にそうで、同性愛者でも、性的違和を感じている人でも、何を言われたら嫌とかは人によって違うだろうし、セクシャリティーとは別に、人間不信な人もいるだろうし、大概のことはどうでもいいと思っている人もいるだろうし、積極的に人と関わりたいと思っている人もいるだろうし……。
そんなにガチガチに固めてハッキリさせることが本当に重要でかつ必要なことなのかはやっぱり疑問である。異性愛者であるからといって異性がすぐに恋愛対象になってストーカーになるなんてことがあるだろうか。人によりけりではないのだろうか。
 
ぼくはだから自分のセクシャリティーをいう場面になったらこう言うのだ。
「ぼくはセクマイなんです」
そこからまた話が広がるだろうから。
 
 
 
 
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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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