メディアグランプリ

「イライラは自分の成長の出発点」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:池田哲平(ライティング・ゼミ 2019年8月 日曜コース)
 
 
「なんか、あいつらむかつきます」
20代後半の中尾君が言ってきた。
中尾君は経営企画で働いている。
「哲平さん、あいつらはいつも人の話をさえぎりますよね」
 
彼のいう「あいつら」とはアメリカ人だ。
中尾君はTOEICの点数は900点越え、英語力は社内でも評判だ。
会議を終わった後の彼をみて僕は思い出していた。
20代後半の頃の僕だ。
 
「なんでお前は発言しない」
「意見がないなら会議に参加するな」
「数字が伴わない計画ならあげてくるな」
 
会議のたびに杉村先輩にどなられた。
「お前を会議に呼んでいるのは期待しているからなんだぞ」
会議のたびに緊張するようになっていた。
変な発言をすると怒られる。
だから静かにしていた。
静かにしていて一言も発言しないと
「No talks, No meeting, Idiot」
と言われた。
 
発言しては怒られた。
発言しなくても怒られた。
 
視点がずれていたら、杉村先輩にカットインされる。
僕は限界に達していた。
 
僕はついにキレた。
「杉村さん、どうしろと言うんですか。発言したら怒られ、黙ったら怒られ、何をしたらよいか分かりません」
「哲平、今回の内容で本当に上(うえ)が納得すると思っているのか?」
 
悔しくなった。
自分の詰めの甘さは分かっていた。
いつも会議前日や直前ギリギリに相談していた。
 
「しょうがなえな。まあ、俺がフォローするは」
と言ってもらっていた。
そして会議終了後の叱責。
僕は混乱していた。
フォローしてくれるといっていたから先輩は内容に納得していると思っていた。
「どこがまずいんですか?」
とくってかかった。
「えっつ、もしかして、どこがダメかもわかっていなかったのか?」
もう、隠しても無駄だ。
自分の何が間違っているか、もう隠しきれないと思った。
「すいません、プレゼンテーションの構造とかどこから作ったら良いのか分かりません」
 
杉村さんは僕にプレゼンテーションの作り方のプロセスを教えてくれた。
まずは、プレゼンテーションを聞いた経営陣が何をしたいのかクリスタルクリアにすること。それは文章にすることだった。
「プレゼン後、専務はこのプロジェクトにゴーさんをだせる」というようなものだ。
 
これができたら、そのゴールに向けて具体的な数字や説得のための材料を整理して論理的に説明できるように準備する。
 
そして、プレゼンテーション中には興味をもってもらうように、質問と意見をちゃんと分けて言うようにと教えてくれた。
 
作成の順番も教えてもらった。
この3つの骨子を作ってからパワーポイントを作るようにとアドバイスをもらった。
 
そのアドバイス後、僕のプレゼンテーションは飛躍的に上手くなった。
杉村さんから怒られることもなくなっていた。
いつのまにかプレゼンテーションが上手くなっていた。
 
そう、上手くいかないときには、何らかのボタンの掛け違いが起きている。
たった3つと作り方の順番で大きく変わったのだ。
そんなことを思い出しながら中尾君に聞いてみた。
「さえぎられるとむかつくって言っていたけれど、なんで?」
「だって日本だとみんな最後まで話を聞くじゃないですか?」
 
中尾君の視点に気づいた。
「最後まで話を聞くっていうのは、どこのルールだろう」
「えっつ!世界共通じゃないのですか」
 
日本の会話の多くは最後まで聞く。
そして、聞く人・話す人が交代する。
スポーツで言うなら攻守交替をする野球だ。
ところが英語での会話はバスケットボールなのだ。
相手からボールを奪った瞬間に攻守は交代する。
つまり、攻撃のために相手から会話の主導権を取るようにするのだ。
 
中尾君にそんな内容を伝えた。
 
具体的にも表現をいくつか伝えた。
Can I add on that? (付け加えさせてもらえないか)
Let me finish. (ちょっと話をさせてくれ)
などカットインする表現とカットインされても主導権を奪われない方法を伝えた。
 
「中尾君、英語力の問題じゃなくてマインドの問題。次回から使ってごらん。意外に上手くいくよ」
中尾君は半信半疑だったが、「ちょっと、やってみます」と言っていた。
 
7月末の会議。
中尾君は学んだスキルを全て使っていた。
 
Can I interrupt? (邪魔してもいいかい)
Greg, I am not finishing it. (グレッグ、僕は終わっていない)
Paul, this is not relevant to the point. (ポール、それは関係ない)
I will ask your opinion at the end of the meeting. (意見は後で聞くよ)
 
彼の会議の進め方には迷いがあるように見えなかった。
会議後、中尾君が僕に言ってきた。
「さえぎられたのは僕が悪かったんですね。ありがとうございます」
 
若い時の僕も中尾君も、業務が上手くいかないと他人のせいにしがちだ。
でも、それでは何も変わらない。
 
何事も、正しいプロセス・ルールがある。
まずは、自分の間違いや上手くいっていないことを認める。
イライラの原因が何かを探ってみる。
そして解決策を持っている先輩や上司から学ぶ。
そうすると事態は好転する。
 
ちょっとの工夫で解決の糸口が見つかるなら、絶対聞いた方が良い。
自分のプライドを横に置いて!
 
今の僕は聞けていれるのだろうか。
そんなことを思った。
 
 
 
 
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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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