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悩みを聴けば聴くほど元気になる方法


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:池田和秀(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私は今、心療内科のクリニックでカウンセラーをしている。
「お仕事は何ですか?」
と尋ねられたときにそう答えると、たいていの人から
「大変ですね。心を病んだ人の話を聴き続けていて、自分の気持ちが滅入ってきませんか?」
という反応が返ってくる。
 
「大丈夫ですよ。むしろカウンセリングすればするほど元気になってきます」
と答えても、真に受けてもらえないことが多い。
 
でも本当のことなのだ。
 
クリニックには、さまざまな心の病を抱えた方がいらっしゃる。
なかには重度の方もおられる。
青白い顔で目に力がなく、「死にたいんです」と口にされる方も稀ではない。
 
そういう方々と毎日対面をし続けていても、私の心が苦しくなったり病んだりすることはない。
 
それはなぜか、というと、目の前の方を「病気の人」とは見ていないからだ。
たしかに、確かに私の前に座っておられるのは、「うつ病」とか「神経症」とか「摂食障害」とかの診断名が付いた方だ。
さまざまな原因があって一時的にそういう心の状態になっておられるが、もともとのその方は「病人」ではない。
 
相手を「病人」として扱うと、病気に焦点が当たり、病気が固定化されていく。
だから相手の病気にフォーカスをするのではなく、その人が持っている本来の素晴らしさの方に焦点を当てていく。
すると、その方が本来持っている心の健康さが引き出されてくる。
 
私がどれだけ病の苦しみを聴き続けても、心が落ち込むことがないのは、相手の素晴らしさにだけ意識を向け、相手の言葉の中にかすかでも現れる光を捉えようとしているからだ。
そして、その結果として、元気を回復していかれる姿に日々接しているからだ。
 
このアプローチは、三日月と満月の関係に例えることができる。
 
三日月が病気の状態で、満月がその人の本来の姿とイメージしてほしい。
夜空に浮かんでいる三日月のお月さまを見て、人は「ああ、あれは三日月だ」と口にする。
けれど、空の上に三日月の形のお月さまが浮かんでいるわけではない。
太陽の光が当たっているところだけが光って見えて、人間の目に三日月と認識される。
本来、空に浮かんでいる月は、まんまるだ。
影になっていて人間の目にはそう見えなくても、月はもともとまんまるだ。
 
人の心もこれと同じだ。
目の前の人が三日月のように欠けた状態に見えたとしても、「本来はまんまる満月」という前提で、相手の素晴らしさを発見し、そこに光を当てていく。
そうすると、今まで影だった部分が光りはじめ、本来のまんまるな状態を取り戻していく。
 
この技法に出逢ってから、私は、どんな状態の人が現れても大丈夫と思えるようになった。
どれだけ「辛いんです」「苦しいんです」「死にたいんです」と訴えられても、回復へのサポートができると確信できるようになった。
 
カウンセリングの基本に「傾聴」という技法がある。相手に寄り添いながら共感を持ってひたすらクライアントの話を伺う。辛さや苦しさを丁寧に聞いてもらえば、たしかに一時的に楽にはなるのだが、それで病が解消するかというと難しい。
カウンセラーにとっても、相手の辛さや苦しさに共感しているうちに、自分の心の中にその苦しみを引き受けてしまう人も出てくる。
私に「大変ですね」という言葉を返してくる人たちの中にも、こんなカウンセラー像があるのだろう。
 
単なる共感は、三日月を訴えてくる相手に対して、「あなたは三日月なんですね」と返しているようなものだ。だから三日月状態を固定化してしまう。
 
「辛い」「苦しい」といった三日月の言葉をそのまま受け取るのではなく、その方の「生きようとする力」として翻訳し、相手に返していくことで、その人が本来持っている生命力が引き出されてくる。
言葉の力で心の自然治癒力にスイッチを入れていくのだ。
 
私が勤めるクリニックでは、この技法によるカウンセリングを実施し、各種ワークと組み合わせた治療カリキュラムとして提供している。
その治療成績は、うつ病の方であればカリキュラムに取り組まれた90%の方が寛解していく(※寛解とは症状がなくなった状態のこと)。そして再発率は2.3%だ。
ちなみに、投薬中心の一般的な治療法では、うつ病の再発率は60%といわれている。
 
それだけの治療実績をあげているメソッドなのだが、この技法に取り組んでいる病院は、全国に2つしかない。だから、費用と時間をかけなければ受けることができない。
 
とはいえ、この技法はカウンセラーという専門職だけが使える特殊技能で、クリニックのカウンセリングを受けない限り、接することすらできないのか、というとそうではない。
誰もが日常生活の中で活かしていくことができるものだ。
 
今、クリニックに来院される方で、うつや引きこもり、不登校など、心に病を抱えたお子さんをもつ親御さんからの相談が増えている。
 
そういったときに、こう親御さんにお伝えする。
「親御さん自身が『満月対応』を身につけて、日々の生活の中で、お子さんのことを『まんまる満月の存在』として接していってください」
 
こんなケースがある。
心因性の口の痛みに苦しむ高校生の親御さんがクリニックに相談に来られた。
そして、「満月対応」を学んでいかれた。
それまではお子さんに対して上手くコミュニケーションが取れず、子どもから反発を受けていたらしい。
だが、カリキュラムに取り組む中で、子どもが発するどんなきつい言葉も「私を愛してほしい」という言葉として受け取れるようになられた。
そこから親子関係が改善していき、今では親子で楽しく会話ができるようになっておられる。
 
うつ病の夫を、妻が「満月対応」でよみがえらせた例もある。
この方は、相談に来られた当初、自分ではクリニックに来ようとしない夫に腹を立て、夫のことを三日月と見ていた。
しかし、ワークをする中で「夫は若い頃から家族のために猛烈に働いてくれた。ありがかった」と夫の素晴らしさに気づいていかれた。そこから毎朝、夫に対して感謝のメッセージを伝えるようになられた。
すると夫のうつ症状が少しずつ改善していき、みずから「自分はもう治った」と口にされるまでになった。
妻の「満月対応」が、心の治癒力を引き出し、夫の心を変化させたのだ。
 
心の病を改善させるくらいだから、「満月対応」を意識すれば、あなたは、職場の部下や同僚、家族や友人など、まわりの人の元気や意欲を引き出してあげられるようになるはずだ。
 
人間はみんな自分のことをわかってほしいという承認欲求を持っている。
それに応えてあげたとき、あなたはまわりの人たちにとってどんな存在になるだろう。
想像してみたとき、「満月対応」を試してみたくはならないだろうか。
 
 
 
 
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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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