妻を支える夫のやくわり!糖質制限編
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記事:山本周(ライティング・ゼミ平日コース)
「わたしの食べたものをどうしてチェックするの!?」
妻はわたしに向かってそう言った。
たぶん、最近、妻は糖質制限ができていない、と漏らしていたので、自分が「食べたもの」に、より神経質になっていたのだろう。普段の会話に比べ、少しきつめの口調でわたしに問い返してきた。
わたしも少し驚いた。
このお菓子類、子どもらが児童館からもらってきて食べたの? とわたしは聞いただけだった。それ以外にまったく他意はない。
彼女を責めたわけではまったくなかった。
そうか、でも、これらを君が食べちゃったのね。
それはそれで、また、問題かもしれない……
9歳と6歳の子どもらは、食卓に座り、神妙に夫婦の会話を聞いている。
ああ、親が、言い合っているような場面は見せたくないなあ、と思う。止めよう、止めたい、そんな気持ちが沸いた。
でも、ついつい、言ってしまう。
「いや、普通に目に入るだろう、ゴミ箱に、こんなに包装紙が捨ててあるんだから」
「でも会社で、同じように同僚とかに言わないでしょ? 」
妻はたたみかけた。
うん、そりゃ、言わんな。
でもこれは、身内だから、夫婦だから、気安く、軽い気持ちで言ったんだ、とわたしは胸のうちで思う。決して、非難しようとしたわけではない。
妻については、精神的にも不安定になる時もあるので、わたしも体調全般について気を配っていたつもりだ。
妻が毎日測る体重と体脂肪の数値が、わたしも目にしやすい場所に書き込まれ続けている。その推移表を、わたしは見るともなく目にするが、わたしがコメントするようなことはない。
体重が増えている時より、減っている時も、なんというか、どう反応していいのか難しい。素直に喜んでも、皮肉にとられたり、またさらなるプレッシャーに感じてしまう可能性がある。かといって、無関心、とも違うのだ。
妻の取り組む「糖質制限」の食生活は、ご存知の通り、米や、パン、うどんなど、主食に穀物を摂る習慣を絶つものだ。これにより、糖質が体内に取り込まれないため、体は糖のエネルギーをメインに扱う「解糖系」から、「脂肪酸」を使う回路に切り替わる。体の「脂肪」が、肝臓の働きを得て、エネルギーとして使用される循環に変わっていく。
糖質制限しようとした際、誤ってよくやってしまうのは、食事内容を、鶏のささ身や、豆腐、納豆、白身魚だけにしてしまうことだ。これだとそもそもカロリー不足で失敗してしまう。糖質制限、という言葉に惑わされることなく、バターやオリーブオイルを使い、お肉などからも積極的に「脂質」を摂ることが必要だ。
わたしが家族の食事をつくっている関係で、妻の糖質制限が始まった頃から、わたしは、皆と違う食事を、妻に準備することになった。彼女は3食、基本的に白米を食べないので、おかずを増やし、空腹感を減らすようにした。魚なども、種類を変えたり、味付けを変化させたりして、食事の満足感を得られるようにした。
これら糖質制限の知識や、食事方法は、妻は公開講座を受講して、わたしは書籍などを読んで得た。
でも知識だけで頭を満たし実践しても、妻の気持ちは満たされなかったのだろう。
乳児、幼児の大変だった子育て時期を経て、わたしたちは今に到る。
その大変だった時期の、夫の役割としてよく言われたのは、「夫は直接、子育てに係るより、むしろ妻のメンタルのフォローを大事にした方がいい」という教えだ。
下手に育児を中途半端に夫がやって、妻がその中途半端さにイライラ感を募らせるよりも、夫が、妻の大変さを親身に傾聴し、共感することで、妻は支えられているという充足感を得るというものだ。
妻のダイエットに際し、またしても、それが問われているような気がする。
妻から聞くところによると、糖質制限のカラダは、再び糖質を取り込んでしまうと、体重がリバウンドしやすいとのことだ。彼女はまさに今、その時期だったらしい。
その時期に、冒頭のような発言をすることに、わたしは、もっと慎重になるべきだった。
妻自身、どんなに気をつけていても、モチベーションの低下や気のゆるみ、仕事などでのストレスが重なることがある。すると自然と甘いものに手が伸びることもあるだろう。
そして食べた後に、食べた行為に対し、落ち込む。
体重の増加に対し、彼女自身が歯がゆく、悔しく思ったこと、自己嫌悪に陥ったかもしれないこと、彼女こそが、自分の食生活の乱れを一番気にしていた、ということに思いを馳せよう。
なにごとにも、意思疎通、それをふまえての気づかい、心遣いの世界だと認識させられた今回の出来事だった。
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