メディアグランプリ

元不登校児は看護師を目指す。


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:やまこん(ライティング・ゼミ 名古屋)
 
「ほのちゃん、そろそろ一回起きようか」
 
14歳だった娘はあの頃ずっと寝ていた。
もちろん学校なんて行かず、ほっといたら食事もせずとにかくずうっと寝ている。
人間、こんなに寝ても脳みそ溶けないんだって感心した覚えがある。
 
私自身が、いつも学校行きたくないと思っていて、ある日ズル休みしたのが父親にばれてパジャマのままで外に放り出された過去を持つ。
 
わかるよ~。
色々一気にしんどくなったんだね。
確かにあの担任は、やけに線が細くてずっとイライラしていて、でも保護者の目をまっすぐ見返せない、ちょっと心をざわざわさせるやつだよね。
まぁ学校には上手く言っておくから、気が済むまで寝ておくといいよ。
そのうち学校行く気になったら行けばいいよ。
 
甘かった。
やっぱり、ずうっと寝ている。
あと1年でリアル「三年寝太郎」になってしまう。それはできれば避けたい。
一応病院にも連れて行ったが、いろいろ検査しても結果は全て
「ストレスですね。」
「頑張ろうと思うのもストレスです。」
「過敏性腸症候群です。20歳以上には良く効くお薬あるんですけどね。」
 
はぁ~。
ため息とともに空を見上げる。
義両親の介護も仕事もあり出口が見えない日々って、結構しんどいなぁ。そう思っても、現状の変え方がわからない日々だった。
 
娘の卒業年度、私はPTAの副会長だった。仕事が地域を回るサービス業だったため、断れなかったのもあるが、少しでも学校との接点を増やそうと思い引き受けたおかげで、
「校長先生、今日の会議を娘の出席日数にしておいてください。」
なんてお願い出来るくらいの関係は築き上げられた。もちろん却下されたが。
 
この出席日数には悩まされた。
日数不足のため、ほとんどの高校に願書すら出すことができない。
岐阜と愛知にそれぞれ1校ずつ「不登校枠」なるものがあるのだが、歩いて10分の中学に通えない娘が、片道1時間の距離を通うとはとても無理に思えない。
 
知人の娘さんが定時制高校に通っていると聞き、なんだか知らない世界に興味を持ったので娘を連れて学校見学に行ってみた。
 
18:00スタートの学校。
19:30からは給食時間。
 
生徒は私服で、意味なく騒いで居ても教室の後ろにじっと座り込んで居ても、特に注意される様子はない。
 
何だかとっても自由な世界。
 
娘もそれは感じたらしく、楽しそうに感想を話していた。
 
一応受験をして、無事合格し晴れて高校生になった。
入学式の時、新入生の中でまっすぐ背を伸ばしじっと前を向いている娘の姿を見て、やっとここまで来たと一安心した時の事を昨日の事のように思い出せる。
 
新生活が始まると、びっくりするくらい前向きな生徒に変身した。
何故か生徒会のお手伝いを始めて、なんと2年になった時は生徒会長になり、同時に本来であれば4年で卒業の規定の定時制高校を3年で卒業するための「高卒認定試験」にもチャレンジすることに。
 
後で聞いたところ、
「進学しようと思ったら生徒会長しておけば推薦貰えると思った」
親もびっくりな進路設計をしていた。
追加でもう一つ、引きこもり時代は何をしていたの?と聞くと、
「Twitterと人狼ゲーム」
この2つはかなり娘の人格形成に影響を与えたようで、いまでもお付き合していただいているフォロワーさんも沢山いるようだ。
(なぜ知っているかというと、この頃私はTwitterを始めて、娘とは相互フォローの関係)
その中にも医療系のお仕事をされている方がいて、ぼんやり憧れを抱くきっかけになったのかもしれない。
 
「うちの定時制高校から、看護学校の進学実績は1人も居ないって」
ある日、先生との進路相談を終えた娘が、少し沈んだ声で話してきた。
「じゃぁ初の生徒になれるね。」
なんて返したものの、この先は難しい道になるな、ここは親としては気が変わらないようにしっかりサポートしないとまた引きこもりに戻られたら大変だなと思った。
その後面談した校長も
「オール5で生徒会長で推薦なら、普通は安心できますが、なにせうちは定時ですからね。
あとは神頼みするしかないですがね。」などと不安をあおってくる。
 
もう神頼みどころか、先祖さま総動員でなんとか合格させてやってくれと仏壇に手を合わせ、チーンとおりんを鳴らした。
 
受験の日、体調は何とか持ったようだが、肝心の面接が思ったような受け答えが出来なかったらしく、大泣きで帰ってきた。
生徒会室でみんなに励ましてもらったらしく、帰る時も心配そうな友人達にかこまれていた。
 
発表の日
私の記憶はほとんど無い。
 
合格の電話があった時は、良かった!!!以外言葉にならなかった。
 
今、娘は看護学校の3年生。
来年1年はほとんど実習に追われるはずなので、今年が最後と言ってバイトに明け暮れる毎日です。
Twitterと高校と看護学校とバイトで出会った沢山の友人たちのおかげで、この先も何とかやっていける、スキルを身に着けたようです。
親の役目もそろそろ少なくなって来ました。
 
ただ、親の欲は深くて……。
 
「お隣の森さん、おばあちゃんになったんだって~」
 
 
 
 
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2019-08-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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