失礼な質問に隠された本当のメッセージ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:結珠(ライティング・ゼミ平日コース)
海外で周りに日本人の少ない地域に住んだことのある日本人たちが困惑する、聞かれがちな質問がある。
青年海外協力隊で途上国であるラオス南部の田舎町に住んでいた私も、その当時は例にもれずその質問を聞かれまくっていた。
それは
「結婚しているのか?」
という質問である。これをそれほど親しくないラオス人からも聞かれることがまあよくあるのだ。
現地の友人についていった飲み会で数回だけ言葉をした人に聞かれたり、ちょっとした買い物で商店の店番のお母さんとやりとりをしてる最中など様々な場で訊ねられる。
正直に、「いや、してないよ」と答えると大体決まって、「早く結婚しないといけないぞ」や「私の娘はどうだ?」と返ってくる。
あまりに同じことを聞かれるくらい続けるので、たまに「日本に恋人がいるよ」と全くの嘘をを言ってみたりする。
すると、「こっちにも作ればいいじゃないか」と度量の広過ぎるお言葉をいただいたりもする。
ある程度の仲になり、お互いの素性を分かった上でこの話題が出るならまだ分かる。
しかし、顔を合わす程度の店番の人や飲み会で出会った知らない人など、現地の人と会う度に何度もこの質問をされると流石に辟易する。
「どうして、こんなプライベートな事をそんなにズカズカ聞いてくるのか?」
これは協力隊隊員間でもあるあるネタで、正直、日本だったらセクハラと言われてもおかしくないような質問にストレスを感じる女性隊員も少なくなかった。
男性隊員である私も大きなストレスこそなかったが、何度も同じことを現地の人に聞かれる事にうんざりしてしまうようになった。
そして、てきとうにはぐらかすようになっていき、現地の人たちとの距離感も段々離れてくように感じていた。
「なぜ、こんな不遠慮な質問を多くの現地の人はしてくるのだろうか」
しかし、そんな漠然とした疑問の答えは意外なところから見つかった。
「沼のハナヨメ」というWebマンガをご存知だろうか?
糸井重里さんが主宰するほぼ日刊イトイ新聞というWebコンテンツを日々発信しているサイトの中のコンテンツの1つで、
震災後の宮城県気仙沼市に嫁いだ女性が、気仙沼の人々と生活と仕事をともにする中で起きる出来事を発信しているマンガだ。
外の視点から見て気づくちょっとした文化の違いや地域社会独特の人々のやりとりをマンガとして面白く発信していおり、楽しいコンテンツだと思っていた。そして、外から地方に移り住み、馴染みのない地域コミュニティの中で気仙沼の人々と過ごしている姿に共感を感じていたこともあり、ラオスにいた頃は配信を楽しみしていた。
そして、ある日の更新されたマンガを読んだとき、私はその内容に驚きを覚えるとともにずっと疑問だった「結婚しているのか?」質問の意図を知ることができた。
そのマンガの内容は、その作者の女性が気仙沼のおばさんに「子供はまだ?」と聞かれてお腹を触られるという所から始まる。
そして、そのことに驚きとストレスを感じた作者に対して夫が1言アドバイスを伝え、そこから得た作者の気づきで締められていた。
曰く、見知らぬ人に「子供はまだなの?」と聞かれることはその人になりの「仲良くなりたい」「コミュニケーションを取りたい」という意図だというのだ。
現地の人からしたら違う生活圏から来た人とコミュニケーションを取ろうとするが共通の話題があまり無い事が多い。
その中で子供の話や結婚の話は大半の人に共通の話題であるため、話の最初として投げかけやすい。
なので、その「遠慮のない質問」も「コミュニケーションを取りたい」と考えて、自分から他の話題を降ったり質問を返してみるといい語られていた。
私は、このマンガを読んでまず、「途上国の田舎も日本の地方も同じだ」ということに驚いた。
そして、私自身に置き換えることで彼らの質問意図に気づくことが出来た。
たしかに、1人の外国人(しかも言葉もおぼつかない)がコミュニティの中に入ってきたとき、おのずと関心が湧く。
しかし、違う文化圏から来た外国人とコミュニケーションを取ろうした時に、共通の話題が無い事は当たり前だ。
その中で、「結婚」や「恋人」、「子供」の話はどの人種も世代も性別も超えて共通の話ができるテーマである。
転校生がやって来た学校で、男子だったらスポーツや戦隊モノの話をすることで打ち解けたり、女の子なら可愛らしいアニメやおしゃれなどの話が出来れば仲良くなるのは早いのと一緒だ。
これまでお互いの知らなかったもの同士がコミュニケーションを取り仲良くなるためは、取っ掛かりとなる共通のプロフィール情報が必要になるのだ。
彼らは、よそ者である私に興味を持ってくれて仲良くなりたいからこそ、その質問をしている。
「沼のハナヨメ」のマンガを読んで、そう気づくことが出来た。
そして、私はこのマンガをすぐに「結婚しているのか」と聞かれすぎて悩んでいた女性隊員の友人にシェアをした。
すると後日、その友人から
「気持ちが楽になって、現地の人とコミュニケーションが取りやすくなった」と報告が来た。
私自身も、「沼のハナヨメ」を読んでからはその質問に対して
「いるように見える?」といったように少しだけウィットの効いた(と自分で思っている)返しが出来るようになり、彼らとのコミュニケーションの中に親近感を感じれるようになった。
見知らぬ人同士でコミュニケーションを取ろうとするとき、共通点を見つけると仲良くなりやすいというのはよく言われることである。
住んでいる地域、文化圏、国、言語が違っていて同じことだが、そこが離れているほど共通点は少なくなっていくため踏み込んだ質問になってしまうこともあることが我々人間同士仲良くなりたい人の事が知りたいというのは人類共通の思いである。
例え、自分にとって驚きがあったり失礼だと思う質問をされることがあっても直ぐに拒絶する前に、一旦その質問の裏にある意図を見定める意識を持ってみてはどうだろうか。
もしかしたら、その奥には「あなたの事を知りたい」「仲良くなりたい」というメッセージが込められているかもしれない。
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