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仙人みたいなOLだったMさんの話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:川村 彩乃(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
あまり人付き合いが得意ではない。
人に出会うご縁はあるのに、連絡をいただいても返事をしなかったり、連絡不精なところがあるので、せっかく知り合った人とも結局会わなくなってしまう。
昔の知り合いとの付き合いもかなり悪く、学生時代の同窓会もすっぽかして、勿体無いことをしたと後々後悔したりする。
 
Mさんは大学時代に会った、2個年上のお姉さんだ。
出会った当初は地方から、東京に上京した社会人。
色鮮やかなお洋服に可愛い帽子、真鍮のアクセサリーをつけている。
「やあ!」
と元気よく声をかけてくれた。
絵本の中の小人のような、可愛らしい印象だった。
 
頻繁に会っている訳ではないけれど、
見た目のとおり、小人のような可愛らしい人、というだけだったら
6年も交流が続くことはなかったかもしれない。
 
Mさんを一言で例えるなら「仙人」だ。
小人ではない。妖精でもない。的を得た例えだと自負している。
 
仙人たる所以は、どことなく醸し出すMさんの粋さと渋さにあるのかもしれない。
とにかく、暮らしに対してまっすぐなのである。
OLとして23区内で働いているのに、毎日しっかり自炊をしている。
玄米を食べ、野菜を愛する。
ただ、料理を作るだけではない。
家で梅仕事をしたり、干し野菜作りまでする。
そんな渋い20代女子はなかなかいない。
インスタントのものや冷凍食品などの加工食品は食べない。
決してお金のかかる食品を買っているわけではない。
自分でできる、身の丈にあった身体に優しい食事を心がけていた。
 
工芸と芸術をこよなく愛する。
金工を学んでいて、カトラリーも自前のものが多い。
器へのこだわりも熱く、地方の工房を訪問するほどだ。
地方でのクラフト市や芸術祭を手伝っていて、その運営のために週末を利用して足繁く通っていた。
 
何が好きなのか、何が正しいのか、何が良いものなのか、
そういうものを感じ取って、それを受けてどうするのか、何をするのかを確実に実現する力がある。
いつも、大体はニコニコとしているが達観して物事を見つめるようなところがあった。そして、答えはいつもまっすぐなのだった。
 
Mさんは人の巻き込み方もすさまじい。
関東特有のおでんダネの一つ、「ちくわぶ」好きを集めて「ちくわ部」という部活をつくる。聞いた話によると、ちくわぶの工場見学をしたりオリジナルグッズをつくったりと、かなり熱心な活動をされていたようだった。
 
最近では、シウマイの美味しさを世の中に広める「シウマイ伝道師」として各地で布教活動を始めている。
たまたま食べた知人のシウマイに感銘を受けたそうで、
弟子入りをして、せいろから白衣まで揃える。
秘伝のレシピがことごとくオープンに掲載されているMさん特製のシウマイ本は、10ページと少ない頁数でありながら、シウマイとの出会いや食べた人の声が掲載されていて読み物としてかなり面白い。
 
多くの人を魅了する、ツッコミどころ満載の活動たち。
決して中身に角がない。
とても純粋な、まっすぐな興味から始まっている。
そこがMさんらしい。
フォフォフォ、と笑いながらひょいと色んなことをやってのける仙人。
 
自分で生活する力もあり、周りを巻き込む力もある。
つまり、生きる力がとにかく強いのだ。
それは、Mさんの創造力の高さから来るものであるし、何よりMさんの人柄の良さがあると思う。
 
私は学生時代、実家暮らしで両親と喧嘩をすることが度々あって、
家にいることができなくて、泊まるところに困ったことがあった。
色んな方や色んな施設に泊まらせていただいたが、Mさんにはかなりお世話になった。
急なご相談でも、大概「いいよ!」と2つ返事で快諾してくれた。
それが、当時の私にとってはとても有難くて、私もそれをだれかに還元できる人になりたい、と思った。
 
でも、社会人になってみると、身の回りを常に整えるということがかなり難しいと気付いた。
昼夜問わない職業であったこともあるが、
毎日の食事をこしらえたり、部屋を掃除したり、洗濯をした衣類を畳んで仕舞ったり、そういった日々の小さな積み重ねが難しいのだ。
お金を稼いでおしゃれな家具を一色揃えておくことより、
人が来るときだけお花を用意して飾ることより、
常に人を受け入れられるよう、常に整えておくこと。
人間の懐の大きさ、心の豊かさに繋がっている根本のところなのだと思った。
 
特に大きな喧嘩をして、かなり落ち込んでいたときに
泊まった翌日、持たせてくれたお弁当があった。
玄米と卵焼きとネギの照り焼き。
可愛いふりかけもつけてくれた。
美味しくてあったかくて、バイト中ぼろぼろ泣いた。
 
決して、落ち込んでいるからと言って深く潜り込んで来るわけでもなく、
仙人の目でこちらの気持ちを察してくれて
さりげない気配りがとても優しく、ありがたかった。
 
そんなMさんは、自身で描くライフプランを着実に実現している。
会社を辞めた。
OLを辞め、個人で活動を始めた。
そしてこの度、東京を出ることになった。
 
今度はいつ、どこで会えるか分からないけど、
Mさんはきっとずっと変わらない。
次会った時は、一体何の伝道師になっているんだろう。
 
どうかお元気で。また会ってね。
 
 
 
 
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2019-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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