メディアグランプリ

本当に正しい親孝行とは? 親孝行と子供孝行


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤薫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「僕の選択はあれで良かったのかがわからない。今も親不孝だったんじゃないかと自分を責めている」
私よりだいぶ年下の友達が精神的にキツイと私に相談してきた。
彼の父親は最近、大きな病気をして働けなくなってしまった。自宅のローンを払うのが厳しくなったお母さんが「自宅を売ろうと思う」と彼に言った。お母さんはローンを代わりに払ってくれとは言わず、むしろ彼に心配しなくても大丈夫と話したそうだ。
父親のかわりに家のローンを払って家族の生活を支えるべきなのはわかるが、彼も収入面で自信がなく、自分が払うとは言えなかった。
そして自宅は売却され彼は家族と別れて一人暮らしを始めた。
優しい彼は自分の選択は親不孝で間違いだったのではないかと自分を責めて悩んでいた。
そんな彼の話を聞いて私は亡くなった自分の母のことを思い出していた。
母は子供たちには決して心配をかけたくないと自分の病気の話をしてくれなかった。
父から母の病気が深刻であると聞かされた時は余命3か月。その時には入院していて最後にできる親孝行は、できる限り病院へ通って側にいることだけだった。そんな状態になるまで父に母を任せっきりにしていた自分を責めた。もっと早く病気のことを知っていたら何かできたかもしれない。
ベッドに横になる母の身体をマッサージしてあげると、こんな事しかできない私に「ありがとう」と今にも消えそうな声で言ってくれた。
母を急に亡くした私は、父の時には後悔したくないとできる限りの親孝行をしている。週2回、一緒に畑仕事をすること、病院に行くときは付き添う事は私の中で仕事より優先事項だ。
親孝行といいつつ、私の自己満足。私が後悔したくないからやっているだけ。
「おとうさんのせいで、フルタイムの仕事ができないんだからね。本当はバリバリ働きたいんだから」と悪態をつく私に「いつもありがとう」という父。
思えば、母とは大人になってからこんなに長い時間を過ごしたことがなかったかもしれない。
近くにいたのに子育てに忙しかった私は母と二人でゆっくり過ごすことがなかった。
周りの友達が母親と二人で旅行や観劇に行った話を聞くと「私も行きたかったな」とうらやましく思う。
まさか、余命3か月なんてことになるなんて思いもしなかった。
亡くなった時は後悔ばかりだったけど、父から母が何より私たちに心配させたくないという思いが強かったと聞いて、今はこれで良かったんだと思っている。
それは自分が子供たちに心配させたくないという思いと同じだから、母の気持ちがわかるからだ。
なので、年下の友達には「お母さん達が家を売ると決めたんだから、あなたは自分を責なくていいんだよ」と話した。
親孝行はできる時が来たらすればいい。仮にできないとしても、子供が元気でいてくれるのが一番の親孝行だとおもう。
だけど、大切な人はいついなくなるのかわからない。恥ずかしくても気持ちだけは伝えてほしいなと思う。
本当の親孝行ってなんだろう。私は究極の親孝行は親に心配をかけることだと思ってきた。大人になっても心配をかけて、頼りにして、たまに泣きつく。
私はこれを故意にやってきた。やりたくなくてもやってきた。そういうと友達からは「なんで? 親に心配をかけないのが親孝行でしょ?」といわれる。
これは自分が親になって、ますます実感するのだが、子供の面倒をみるのは親の喜びである。もしかして全員ではないかもしれないが、私の両親はそういう親だった。
私も含め世間の母親は表向き「うちの子は手がかかって」とか「部屋の掃除もしないし、上げ膳据え膳で何もできないのよ」と言っているが、内心は違う人が多い。
何もしないわが子や親に甘えてばかりのわが子がかわいくて仕方ない。
だから、私は父に「庭の木がとなりの家まで伸びているんだけど、お父さん、切ってくれない?」と頼んだり、魚料理が得意な父を買い物に連れていき「鯛の刺身が食べたいから、
お父さん、さばいてくれない」と頼む。時には「子供の大学の学費が足りないんだけど、お父さん何とかしてくれない」という頼み事までする。内心はどう思っているかわからないが、そんな時、いつも父はうれしそうだ。
「お父さんがいてくれるから、私たち家族は生活できるんだよ」とアピールする。
母が生きていた時は、母に子供を預けたり、入園・入学やバレエの衣装を作ってもらったり、自分でやろうと思えばやれることも母にお願いした。そして、感謝の言葉を伝える。周りからは頼りすぎと言われていたが、これが私の親孝行。頼りにすることが親孝行だった。
母は私たち子供には迷惑かけたくない、頼りたくないとおもっていたが、わたしは
子供として病気の時くらい頼りにされたかった。父はそのことをわかってくれて 「明日、病院なんだけど付き添ってもらえない?」と頼りにしてくれている。
すっかり親孝行しているつもりの私は父に子供孝行してもらっているのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 
http://tenro-in.com/zemi/97290
 

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事