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メディアグランプリ

蜜の味を楽しんでいただけているようでナニよりです。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:松尾美紀(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「ちょっと聞いてもいい? カミさんから聞いてこいと言われたんだけど、ここ閉めるってウワサらしいけど本当か?」
と受付で患者さんに問われた。
 
「院長がリハビリ中ですので、そう思われる方もいらっしゃるようですが、患者さんが来ていただける限り続けますのでご安心ください」
と応えたが、心はザワザワしていた。
ベテランスタッフに報告しながら、不覚にもうっすら涙が出てしまっていた。
(頑張っているのに、悔しいなぁ)
と無意識にコブシをグッと握っていた。
 
院長である弟がクモ膜下出血に倒れ、高次脳機能障害を負って2年以上が過ぎた。
当初は何の苦労もなく歯科医師として戻れると思い込んでいた。
ところが知能は低くなってはいないのだが、その知能を操る機能が壊れているのが高次脳機能障害だという現実をまざまざと見せつけられた日々であったし、今でもそれは続いている。
復帰に向けてのリハビリを続けてはいるが、言語障害をはじめとする様々な障害は残っており、診療ができるところまでは戻っていないため、治療は代理の歯科医師2名にお願いしている。
幸いにも弟が倒れる前のスタッフたちは、ほぼ全員残っていてくれる。
だから様々なことが支障なく進んでいっている。
 
毎朝毎晩20キロの距離を、弟の歯科医院と自宅を往復しているワタシには聞こえてこないが、定期的にネガティブなウワサは立っているようだ。
この地域に暮らしているスタッフたちの耳には、ウワサのタネを探すかのような発言が聞こえてくるらしい。
 
『他人の不幸は蜜の味』
人は他人の不幸がお好みのようだ。
それはワタシとて例外ではない。
 
井戸端会議が開かれれば、その場にいない他人様のウワサ話に花が咲く。
確証もないのに、そのウワサ話を「あぁそうなんだ」と信じ込むことも多い。
そしてそのウワサ話には尾ひれや羽がいっぱいついて、そこここに飛んでいく。
 
現代社会においては、SNSもウワサ話の発信源となっている。
 
ポジティブな発信も多いが、同じくネガティブな発信も多い。
共感した人々が共有していくことで、発信がどんどん広がっていく。
良い作用を生むこともあれば、悪い作用を生むこともある。
 
この夏には『あおり運転』の話題で、悪い作用を生んだ。
似ているから、被疑者とつながっているからと、間違った発信がされた。
良いことをしていると思い込んでの共有だったのだろう。
SNSが地域の井戸端会議と違うところは、世界中の人々が見られることにある。
そして、多くの人にとっては見ず知らずの人のウワサ話であるにも関わらず、正義の名の下で尋常ない拡がりをみせることだ。
これも違う意味での『他人の不幸は蜜の味』なのであろう。
 
共有する前に、自分がそのウワサ話の当人だったらと想像してみてはどうだろう。
『楽しい!』『うれしい!』と思えることだろうか?
『悲しい』『悔しい』と涙することだろうか?
想像すらできないことなのだろうか?
 
もしくは、SNS上で拾ったウワサ話を、自分や身内に置き換えることで、まずは一呼吸置いて想像してみよう。
その上で共有できるウワサ話だと感じれば、共有するとすればどうだろうか。
 
しかしあくまでもウワサ話はウワサ話である。
一番良いのは聞き流すことが、SNSとうまく付き合っていくコツではないかとワタシは考える。
自分自身の心に留めるだけでいいのではないだろうか。
 
そう考えれば、地域の井戸端会議で生まれたウワサ話も、聞き流してしまうのが、地域社会とうまく付き合っていくコツなのかもしれない。
 
「ちょっと聞いてもいい? カミさんから聞いてこいと言われたんだけど、ここ閉めるってウワサらしいけど本当か?」
と問われれば、満面の笑顔で
「頑張りますので、よろしくお願いしますね」
とだけ応えればよかったのである。
 
ある日も電話にて
「お盆の休み長かったんやね。もう止めたんかと思った」
と言われたこともあったが、これに関しても
「長いお休みをいただいて、リフレッシュさせてもらいましたので、頑張れます」
とだけ応えられれば、自分自身にも周囲にも波風を起こすことなく収まったであろう。
余分な一言が、相手の想像力を掻き立てさせるのだから……。
 
ウワサ話に心を乱される時間よりも、ワタシは弟のリハビリや歯科医院の経営などに時間をかけなければいけないのだから。
相手の想像力ではなく、ワタシ自身の想像力を上げていき、弟のリハビリに向かわなくてはいけないのだから。
 
そして、相手にこの人には何を言っても『暖簾に腕押し』だと思わせればシメたものだ。
その上で
(蜜の味を楽しんでいただけているようでナニよりです)
と心の中で唱えながら、笑顔で対応できれば、無敵になれるかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2019-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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