メディアグランプリ

いじめられたらギロチンの処刑人になれ


 
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記事:河瀬佳代子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「8月31日の夜に」という番組を見た。2学期の始業式、9月1日に自殺してしまう青少年が多いことから、その前日に生きづらさを抱えている10代に想いを吐き出してもらおうという企画だ。番組に寄せられた中から何人かピックアップし、掘り下げて話を訊いていた。
 
学校生活や、友人間の些細なことで行き違いがあり、そこからいじめの輪が広がる。今も昔もいじめのきっかけは変わってない、そう感じた。
 
番組を見ながら、私は自分がいじめられた時のことを思い出していた。
 
半生を振り返ると、私は完全に「いじめられるキャラ」だった。いじめられるというよりも、つまはじきにされたり、浮き上がったりすることが多かった。正義感が強く、適当に人気者におべっかを使ったり、如何にして人に好かれようかということを考えたりするのが性に合わない。こうして書いているだけでも、世渡りには損な性格だ。
 
沢山いじめられて来たが、1番酷かったのは中学の頃。部活の中に1人どうしても虫が好かない子がいた。仮に名前を沙恵としよう。沙恵はスタイルがいいこと、顔立ちが整っていること(私は美人だと思ったことは1度もないけどね)と、家が裕福なことを常に自慢して、頭の悪さをカバーしていた。
 
私とは水と油の性格の沙恵が、他の部員を引き連れて部活をサボりがちで、それも嫌だった。中1の時にそのことを注意したら、関係が一気に悪化した。それからは部活に関係ない時まで悪口を言われ、男子にまで見に覚えのないことを言いふらされて好奇の目で見られ、卒業まで嫌がらせは続いた。
 
私をかばってくれたのはたった1人の女子だけだったが、その友達が中1の終わりに岡山に転校することになった時は、本気で死のうかと思ったくらいだ。学校にいくのが嫌で嫌で仕方なくて、縄跳びを鴨居に引っ掛けるところまでやった。それでも死に切れなかった。
 
親に言ったところで、特に母親は子どものことを本気で心配してくれなかったから、打ち明けることもなかった。なんとなく、死なない方がいいのかもしれないと思いながら中1の春休みが終わり、中2になった。
 
そこからはどうやって過ごしたのかよく覚えてないけど、部活が好きだったこと、沙恵とはクラスが別だったことも幸いした。沙恵の意地悪は続いて毎日憂鬱だったが、学校そのものには行かないと受験に不利だから通った。
 
私が第1志望の高校に合格し、沙恵は受けた高校を軒並み落ちた挙句に二次募集で底辺の高校に行くことになった時は正直痛快で仕方なかった。天罰ってマジであったんだな、ざまあみろ!神様ありがとう!心の中で礼を言った。
 
中学卒業の少し前に沙恵は私を呼び出し、「今までの分だから」と私の頬にビンタをしていった。何がそんなに憎かったのかさっぱりわからないが、沙恵のことは生涯許すことはない。沙恵が私に嫌がらせをしているのを見て見ぬ振りをしていた子たちのことも、不幸のどん底に落ちようが、本当にどうでもいいと今でも思っている。
 
中学の卒業アルバムに載せる連絡先は「掲載拒否」にして出したから空欄のままだ。昭和のあの頃、まだ個人情報なんて言葉もない時代に、そこまでやったのは私だけだったので、その空欄は白く輝いてとても目立っていた。
 
あの時、15歳の子が、それまで生きてきた狭い世界のクラスメートたちを全部切り捨てることができたのは非常に幸運だった。同じ学校の子が誰もいない高校に進学したのが大きかった。
 
高校・大学は友達に恵まれて、小中学校の黒歴史の人たちは一切要らなくなった。小中学校の同窓会には土下座してお願いされても出ないことにしているし、中学を卒業してから、クラスメートには誰にも会っていない。
 
今、いじめに遭っていて、学校に行くのが辛くて仕方がないという人もいると思う。でもこれだけは言いたい。
 
「生きろ」
 
「自分から死ぬな」
 
「とにかく逃げろ」
 
この3つだ。
 
いじめられた人間は、ギロチンの処刑人になるくらいの割り切りを持ってほしい。自分を陥れる人たちに出会ってしまったら、容赦なくバッサリ切り捨てていい。一瞬でも相手をすることは時間の無駄だから。
 
今いる環境をリセットすることはとても大事なことで、転校する、親戚宅に避難する、他の都道府県の知り合いに頼る、行政に頼る、何でもいい。親が頼りにならないなら、信頼できる大人に伝えてほしい。すがれるものには何でもいいからすがってほしい。とにかく今、自分の環境にいることが耐えられないなら、そこから逃げてほしい。逃げることは恥ずかしくないし、負けたことにもならない。
 
あれから何十年という時が流れた。いじめの構造は、残念ながら大人たちの世界にも根深く存在していて、様々な場面で嫌な思いをすることも実は沢山ある。それでも生きていれば、必ずいいことはあるし、人生の曲面で素敵な景色だって見ることができる。あの時、いじめにまつわることを徹底的に切り捨てたことで、私は立ち上がれないほどのダメージを負った時の避け方を学んだ。少なくとも、生きていくことで得はしたから。人生は損得で考えていい。誰かのせいで死ななければいけないことは一切ない。胸を張って生きて、大いに得をしてほしい。
 
 
 
 
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2019-09-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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