【NHKプロフェッショナル】世界を驚かせる37歳/プログラマー・アーティスト真鍋大度
天狼院書店店主の三浦でございます。
僕はあまり、Perfumeというグループに興味がありません。
けれども、先日、何かのテレビでPerfumeが繰り広げる「HERE THE FUTURE」的なパフォーマンスに言葉を失いました。
フランス・カンヌで行われた、プロジェクトマッピングを使った演出ですが、そもそも、プロジェクトマッピングとは、東京駅やディズニーランドで話題になったように建物をスクリーンにしてやるものです。
それを、激しく動く人をスクリーンにして見事に一体感をもたせて成功させている。
ご存じのようにPerfumeは3人のガールズユニットですが、Perfumeがステージ上に立体的に投影された自分たちと一緒に踊るという離れ業をやってのけている。
もはや、圧巻。
いつか、もしかして現れるかも知れないと、どこかで空恐ろしく空想していた存在。
未来を、一気に今に引き寄せてしまうまさに天才。
それが、プログラマーにしてアーティストである真鍋大度という人です。
マルチタレントの人は、昔から様々いたことでしょう。
今でも、音楽をやりつつ、文章を書くという人もいますし、リリー・フランキーはイラストレーターであり一流のエッセイストでもある。
けれども、そういった人に感じるものと、真鍋大度に感じるものは全く異質なもののように思えてなりません。
切迫感というか、ああ、来てしまったかという諦観のような、その圧倒的なクリエイティビティに嫉妬を覚えるような、未来を引き寄せてしまう力に焦燥感を感じてしまうような、実に複雑な感情を、この人を見ると抱いてしまうのです。
いやー、すごいな、と笑顔で軽く手放しで言えるのではなく、どこか怖さを感じながら、「すごい」と思うような感覚。
様々なタレントの組み合わせの中でも、このアーティスト&プログラマーというのが、あまりに時代に適っているように思えてなりません。
この両刀が、未来を一気に引き寄せる。
圧倒的なパフォーマンスを現出させる。
大学では数学を学んだと言います。その傍ら、DJもやっていたという。
高校では数学の模試で全国1位になるほどだったが、東京理科大学へと進学すると、周りは数学の天才たちばかりで自分の特長をそこでは見いだせなくなった。アーティストと言っても、DJとして一気に頭角を現せるほどでもない。
若い頃は悩んだと言います。
方向性を見失い、暗中模索していたと言います。
それは、なまじいろいろできるからこその苦悩だろうと思います。
贅沢な悩みと言えば、それまでのことですが、自分には何らかの才能があると手応えがありつつ、その能力を存分に発揮することができないというもどかしさは、できないよりも、あるいは苦しいのかも知れません。
それなら、元々ないほうがいいかも知れない。
人生を変えるきっかけとなったのは、岐阜の情報科学芸術大学院大学に入ったことです。
そこでは、新時代のアートを生み出そうとする人々との出会いがありました。
自由は発送との出会いがありました。
中途半端な自分を包んでいたもやもやがいつしか晴れていました。
自由な発想で芸術を創りあげることに、2年間没頭しました。
そして、彼が持つ潜在能力に、時代がようやく追いつくことになります。
自分の脳力が存分に発揮できる場所を見出すことになります。
それが、プログラミングとアートの組み合わせによる、パフォーマンスでした。
現出させる出口を見出した才能は、一気に吹き出します。
YouTubeに投稿した動画が、世界中で100万回以上再生され、一躍注目を集めるようになりました。
世の中が未だかつて見たことがない芸術を、作品を次々と発表し始めることになります。
様々なアーティストや大企業が、彼とのコラボを望むようになりました。
その中のひとり、世界的な音楽家坂本龍一はこう言います。
「直接メールでお願いしたんですけれども、出てくるまで何が出てくるかわからないスリリングな仕事のやり方っていうのかな。信頼もしていますね」
そこにプロフェッショナルの真髄が隠されているように思えます。
スリリングであり、しかし、信頼もされる存在。
「真鍋と組めば新しい何かが生まれる」
その信頼感は圧倒的なクリエイティビティにあるのだと思います。
はたして、今の自分にそれができているだろうか。
とても、考えさせられ、そして衝撃を受けた回でした。