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週刊READING LIFE vol.90

主婦はもっとラクしていいんだ《週間READING LIF Vol,90 今、この作家が面白い》


記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
「あっ、なんかコレ、いいな」
 
人との出会いと同じように、本との出会いもまた不思議なご縁を感じる。
ふと、立ち寄った書店で、思わず手を伸ばした本から人生を変えるような影響を受けることはしばしばあるものだ。
 
私にとって、そんな出会いの一つが、20年ほど前に出会った「だれか来る日のメニュー」という料理本だった。
タイトルからして、仰々しいおもてなしの本ではないことがわかる。
なんだかとても敷居が低い、おもてなしの料理本のように思えたのだ。
 
当時の私は、まだ妻として、母として、家族だけではなく、夫の会社の関係者、親族、友人家族などをおもてなしすることを義務のように考えていたのだ。
特に、夫の会社の上司、同僚などを招くこともしばしばあって、ここは妻として頑張らねばという精神が強かった。
 
そのために、食材は奮発し、足りなければ食器も買い足し、中華料理ならコースで作るような意気込みを持っていた。
ところが、頑張りすぎてしまうので、その後はどっと疲れてしまい、当分人を招くことは勘弁してほしいというような感じだった。
 
ところが、「だれか来る日のメニュー」の著者である、行正り香さんはある本の中で、おもてなしをする際の自分なりのルールをこう書いていた。
 
招くのは、自分を含めて5名まで。
食材、調味料は、コンビニでも手に入るようなモノを使う。
後片付けは、積極的にゲストにも参加してもらう。
メニューはメイン、プラス、サラダ、サイドディッシュ、デザートなどのシンプルなモノ。
お料理に合うお酒と音楽は吟味して選ぶ。
 
というような内容でした。
つまり、主催者だけが負担を感じたりすることなく、無理のないような内容でおもてなしをするというものだ。
そうでないと、自分も楽しめず、せっかくの食事会もつまらないものになってしまうから。
 
この行正さんの言葉を読んで、私の中で人を招く、おもてなしをするというハードルはグッと下がったのだ。
ここ一番でいいところを見せようと頑張りすぎたり。
奮発した食材で思わぬ出費になったり。
食事会の後味が微妙だったことが多いのだ。
「食事会で人をもてなす」という概念が覆されたような、そんな衝撃を受けたのだ。
 
そして、「だれか来る日のメニュー」を読んでみると、おもてなしのシーンだけではなくて、週末などの時間があるときに、ちょっと丁寧に夕飯を作りたいときにも使えるメニューだったりしたのだ。
 
オーブンで手羽先を焼いたり、ピザを生地から作ったり。
丁寧な食事作りは、自己肯定感を上げてくれるものだ。
もちろん、家族も喜んでくれる。
 
こんなふうに、私にとっての「おもてなし革命」を展開してくれた、行正さんご自身もとても魅力的な人なのだ。
高校時代、成績が振るわずおちこぼれだったけれど、英語の先生からその発音がきれいだと褒められたことだけが自信となって、アメリカ留学を決めたというのだ。
その行動力が素晴らしいものだ。
ところが、最初のホームステイ先で出会った老夫婦からは、「食事を作る代わりに、働いてくれる若者」というような扱いをされたそうだ。
食事も最低限の量しか出してもらえず、日に日に痩せてゆく姿にクラスメイトが心配し、ホストファミリーを変えることにしたのだ。
そして、次に出会ったホストファミリーが素晴らしかったのだ。
短大に進学した行正さんに、さらに大学への編入を勧めたのだ。
ところが、学費や生活費の負担をこれ以上日本の両親にかけられないと言うと、ホストファミリーの食事を作ることでステイ費用は要らないと申し出られたのだ。
 
当時、お料理はしたことがなく、実家でもたまに作ったモノは飼い犬も食べなかったくらい、まずかったそうだ。
そんな行正さんも、試行錯誤を繰り返しながら、ホストファミリーのために毎日料理をすることで、料理好きな一面を持つようになったのだ。
そこから帰国して、大手広告代理店に勤務したのだが、週末に友人を招き開く食事会が評判となり、そこから料理本を出版するようになったと言われていた。
 
料理のレシピは、アメリカ時代、ホストファミリーのために作っていた懐かしいモノから、実家のお母さま直伝のメニューなど、誰でも短時間で簡単にできる内容ばかりだ。
これにも、子育て中の当時の私はとても勇気づけられたのだ。
 
特別なこと、豪華なことをしなければいけないというような食事作りへのプレッシャーからは、行正さんの料理本のおかげで解放されたのだ。
 
さらには、一輪の何気ないお花を飾ったり、お客様を迎えるときにお香をさりげなく焚くなどの心遣いも素敵だとあらためて気づかされたものだ。
 
結婚して、お子さんを育てながらも仕事を続ける時のコツとして、周りの人に助けを求めることや、時には手を抜くことなどもとても参考になった。
 
料理本でありながら、主婦業、子育て全般に対して、「お母さん、そんなにも頑張らなくていいんだよ」といつも訴えてくれているような、そんな存在だった。
 
この本、そして行正さんとの出会いから20年。
今は、以前のようにお料理を作る機会も減ったのだが、この本はずっと私の心のバイブルになっている。
 
なので、本棚の一番いいところにずっと置いている。
 
行正さんの本は、料理本、ワインの本、インテリアなどのジャンルに渡り、すでに30冊以上は出版されているはずだ。
 
それらのどの本からも、食事作り、子育て、人付き合いなど、主婦がぶち当たる数多くの壁、
それらをどう乗り越えるか、いや、どう付き合ってゆくのか、そんなヒントをふんだんにくれる本ばかりだ。
 
料理のレシピだけではなく、著者の人柄からも多くの学びを得られた、とても貴重な出会いだった。
この作者である行正り香さんとの出会いが、主婦として奮闘していた私の思考をゆるやかに開放してくれた。
今ではもう、人を招いておもてなしをすることはなくなったが、時々、本を手に取って、懐かしいメニューを一品作ったりもしている。
 
いつ手に取って、本を開いても、そのメニューを作っても、あの頃、私の食事作りを助けてくれた思い出がよみがえり、心が喜んでいることがわかるのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
2013年1月断捨離提唱者やましたひでこより第1期公認トレーナーと認定される。
整理・収納アドバイザー1級。

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2020-08-03 | Posted in 週刊READING LIFE vol.90

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