週刊READING LIFE vol.149

金欠ライター、成田山で一口栗蒸しようかん片手の食べ歩き。《週刊READING LIFE Vol.149 おいしい食べ物の話》

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2021/11/29/公開
記事:高橋拓己(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
JR成田駅から出て東の方角の道路を進むと、様々なお土産屋が並んでいる。
成田山の新勝寺へ向かう旅人を出迎えるように、どの店からも甘い匂いが漂ってくるようだ。
寺への参拝と共に、この土産物屋の道で売られるお土産を食べ歩くのも、成田山での楽しみの一つである。
 
しかし、ここで贅沢し過ぎるわけにも行かない。例えば私のように、人生初めての一人暮らしで、生活費から将来に向けての貯蓄まで、首が回らないという言葉があるがむしろ色々考えねばならずで首をあちこち向けなければならない今日この頃。野口さん一人分を使うのを躊躇うほどお金の使い道はしっかり考えねばならない日々を過ごしている。
 
もはやお出かけは気楽に出来ず、部屋にこもり読書でもネットでも金のかからない休暇を過ごすしかないだろうが、しかしそれでは満足を得ようとしても心の楽しみが困窮してくる。今あるものだけ消費しても、残るのは明日もこのギリギリの生活で生き残れるかという不安だけだ。
 
そんな気持ちに押し潰されそうになるのは、お腹が満たされないからだ。楽しみは工夫で満足出来ようが、腹が寂しいという現実は徐々に精神を餓えさせていく。
節約も時に休暇と安寧を。そんな気持ちでふと近所にある成田山へ寄ってみたくなる。
 
成田山にあるのは、関東最大の寺であり、国内だけでなく海外からの観光客にも人気の新勝寺。仏教の世界ではメジャーな不動明王を信仰し、毎日決まった時間に大々的な祈祷が行われている。周囲には大きく広がった林や池などの雅な光景もあり、散歩するにはいい場所だ。
そしてJR成田駅からそこまでの道程にある土産物屋は、どこも意外とこじんまりしていて、どこも想像以上に盛況であった。
手持ちが少ないので、基本は100~200円程度のお菓子を買い、神社に向かう道程でそれを食べ歩き甘味と和の心を堪能する。
この土産物屋にはそんな菓子が充実している。どれも安く、また片手で持って食べるには便利な菓子ばかりだ。
 
今日は先日私が行ったときに食べた成田山周りの土産物屋を紹介させていただく。
花も団子も堪能できる、安価で気楽に行ける土産物屋が成田山にはあるのだ。
 
まず目にする大きな土産物屋といえば“なごみの米屋”だ。
他の土産物屋よりも内装が広く、裏には羊羮の博物館などもあるこのお店には、130円からワンコインの範囲で買えるお菓子が多く販売されている。
 
その中でも特にオススメ出来るのは、ぴーなっつくりーむサンド(130円)だ。
甘くとろけるクリームとザクザクしたサンドという食感の組み合わせはまるでアイスとモナカのようであり、ぴーなっつ味の甘味も口に広がる贅沢な菓子だ。悩んだらコレが一番といえるオススメ品だ。
揚角大という蜂蜜醤油味のせんべいもいい。ザクザク、あまあまとした食感が76円の価格で癖になる。
 
次に目にする土産物屋は“林田のおせんべい”だ。名前の通りせんべいをメインとした土産物屋であり、せんべい特有の香ばしい匂いが漂ってくる。
多種多様なせんべいの中でも、醤油せんべい(100円)、みたらしせんべい(150円)、ねぎ味噌せんべい(200円)という、串で揚げられた3種のせんべいが安価でオススメできる。
どちらも優先順位に悩むほど味がいい。醤油せんべいは最も安価であり、醤油の染み込んだパリパリのせんべいの味わいと食感が良い組み合わせだ。
甘さを重視するのであればみたらしせんべいも捨てがたい。こちらはみたらしのタレの甘さが、成田山での食べ歩きにぴったりと言える美味しいものだ。
やや高めなねぎ味噌せんべいであるが、実はこれもオススメできるというか、私個人の一番のお気に入りとなってしまっている。ねぎと味噌の味わいにプラスして、ピリッと辛いスパイスがせんべいの香ばしさの中にトッピングされていて、舌の上にいい刺激を与えてくれる。
どれらも串に刺した状態のため、タレ漬けながら手を汚さずそれぞれの旨味も堪能しながら食べ歩き出来るのが良ポイントだ。
 
その次の店。私が最も気に入っている食べ歩きのお供は“日進庵”の玉こんにゃく(200円)だ。
菓子ではないのだが、食べ歩き道程の中で私が最も気に入っているモノであるのでここに綴りたい。
見た目はシンプルに、カップの中にタレ漬けのこんにゃくが3つ串刺しされているものだ。
鍋の中で温まり、渡される直前にもしっかりとタレをかけられた3つのこんにゃくは、それ特有のプニプニ食感に、温かさとタレの甘味が合わさってほっこりリラックス出来る仕上がりだ。冬の入り始める今のような寒い日には、特にその温かさと味が身に染み渡り、食べ歩きの中でも特に思い出に残る味わいとなるだろう。
 
そのすぐ次にあるのは“ごま福堂”というごまの専門店だ。そこには金ごまのコロッケやアイス、芋ごまドーナツなど様々なごまの菓子がある。どれもごま特有のさっぱりした味わいがあり、菓子の持つ甘さを引き立ててくれる。私はこの中で最も安価であるゴマかりんとう饅頭(120円)を食べ歩く中で最もオススメできる菓子として取り上げる。かりんとうのパリパリ具合と饅頭のふっくらとした生地の持つ甘味がごまの味わいに引き立てられ、更に買った直前であれば温められていて、こちらも寒い日には良い食べ歩きのお供となってくれる。
 
成田山新勝寺が近づいてくる頃、その直前には“茶和々”というま抹茶菓子の専門店がある。
京都の宇治抹茶を取り寄せている本格的なこのお店は、外観も値段も高級な抹茶菓子が揃っている。
どれもワンコインでは買いづらいそこそこ高めな菓子であり、種類もアイスや焼き饅頭、切りたてのわらび餅などメニュー表を見るだけで甘い香りが漂ってくるものばかりだ。
少し奮発しようか……そう悩んで悩んだ末に貯金を優先して選んだ菓子は宇治抹茶ヴァッフェル(184円)と、ふわっ茶(194円)だ。
固めのサンドと抹茶の渋みが味わい深いヴァッフェル、ふわふわな生地と苦くない甘味たっぷりのふわっ茶。どちらも高級かつ安く食べられる、本堂の前で一休みするにはいいお供の菓子だ。
 
さて、JR成田駅から本堂まで様々な土産物屋を見て回ったが、最後にまだ一件紹介していない場所がある。
それは土産物屋の入り口から本堂の真ん前まで、3店は出ている“米屋の羊羮”だ。一番人気かと思うぐらい羊羮はどこにも売られており、成田山に来て羊羮を食べないのは勿体ないのでは?と思うほどだ。
その中でも特に目立つのは、濃い茶色の中に金が輝く一口栗蒸しようかん(160円)だ。栗の羊羮といえば市販にもあるが、あれは羊羮の上に薄い栗が置かれてるようなものだ。
一口栗蒸しようかんはそこが違う。羊羮のなかにしっかり大粒の栗が入っていて、羊羮のしっとりした甘さと栗の固くも甘い美味しさがそれぞれ引き立てあって美味しいのだ。
その落ち着いた甘さは、荘厳ながらも落ち着きのある新勝寺の雰囲気とも合っている。
新勝寺の前でリラックスする、そこまでの道程にある林道を鑑賞しながら食べ歩く。そのお供に栗羊羮はお腹満たしの頼りになるだろう。
 
以上が私の考え抜いた食べ歩きの例だ。ここまで食べると、だいぶ腹が満たされ、心がホッとしてくる。
組み合わせ次第では野口さん一人分で堪能できる成田山の散歩道。高い買い物だけが観光ではない。気軽に買える美味しい食べ物を片手に新勝寺へお参りに向かう。それもまた一興である。
 
私は食べ歩きで腹を満たし、そして到着した新勝寺にて祈願成就の祈祷を受けて心を染み入りさせ、これからの将来に向けて奮起する気力を貰い受けた。
成田山の土産物屋の全店制覇、抹茶菓子を気軽に買えるようになる。そんな甘そうな夢を掲げながら、見も心も満たした帰路のなんと爽快なことか。
 
美食とは心の平穏を保つ一つの方法でもある。
心も腹も満たす成田山での安い食べ歩き、そんな楽しみを皆さんも近所などで探してみてはいかがだろうか。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
高橋拓己(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

東京成徳大学人文学部卒。将来刻む墓碑銘は「クールなライター高橋拓己、ここに眠る」

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2021-11-24 | Posted in 週刊READING LIFE vol.149

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