週刊READING LIFE vol.156

「自己肯定感が低いことは悪いこと」に振り回されていませんか?《週刊READING LIFE Vol.156 「自己肯定感」の扱い方》


2022/02/08/公開
記事:垣尾成利(READING LIFE編集部ライターズ俱楽部)
 
 
私は自己肯定感が低い、と感じている人の多くは「自己肯定感が低いことは悪いことだ」と思っているのではないでしょうか。
 
私もずっとそう思っていました。
でも、それは間違いでした。
 
「今をしっかり生きてさえいれば、自己肯定感の高い低いなんて関係ない」
今はそう思うようになりました。

 

 

 

自分と向き合うことがしんどい、と感じていませんか?
もっと楽に自分と向き合えるようになりたい、って思いませんか?
 
私はずっと生きづらさを感じていました。
それはなぜか? と言うと、「自己肯定感が低いことは悪いことだ」と信じて疑わなかったからです。
この思い込みを手放すことができなかったことが生きづらさを感じ続けていた原因だったのでした。

 

 

 

Yahoo!で「自己肯定感」と検索すると約117,000,000件もの記事がヒットします。
こんなにも多くの記事が書かれているということは、それだけたくさんの人が興味を持っているワードだということです。
 
これに「高い」、「低い」のワードを加えて再検索してみると、
「自己肯定」・「高い」は94,200,000件もの記事がヒットするのに対し、
「自己肯定」・「低い」は6,810,000件しかヒットしませんでした
 
このことからも、自己固定感の高さを求める声が多いことが想像できるでしょう。
世の中の自己肯定感が低いと感じている人の多くが、自己肯定感が低いことは悪いことだと思い、自己肯定感を高めたいと思っているということです。
 
検索トップページに挙がってくる記事をいくつか読んでみましたが、正直なところどれも最後まで読めませんでした。
 
なぜなら、どの記事も自己肯定感が低いことは悪いことだから、自己肯定感を高めるためにこの記事を読んで実践しなさい、というものばかりだったからでした。
 
「あなたは自己肯定感が低いのね? かわいそうに。 ほら、私が教えてあげるから、言うとおりにしてみなさいよ。私の言う通りにやれば、簡単に自己肯定感を高めることができるわよ」
 
物腰は柔らかだけれど、どれもこれも上から目線で「自己肯定感が高いことは絶対的正義だ!!」とでも言いたいようなものばかりでした。
 
「自己肯定感が低いことは悪いこと」
果たして、本当にそうでしょうか?
自己肯定感が低いことって、そんなにも責められるべきことで、恥ずかしく思わなければならないことなのでしょうか。
 
こんなにも多くの人が自己肯定感の高さを求めるということは、日本人は全体的に自己肯定感が低い国民性で、それが日本人らしさだ、と言うことなのかもしれません。
 
「自己肯定感が高い人」の方が良さそうに見えるから、というだけでそう言っている人も多いと思うのです。
 
それは、地方出身なのに東京に住んでいるからといって「東京在住」と書くようなものだと思うのです。
その東京だって本当の東京のど真ん中に住んでいるわけでもないのに、「東京在住」と言っときゃ恰好いいじゃないの。と見栄を張る。
 
「私、自己肯定感が高いんです」って言っている人って、それと変わらないじゃないか、なんて思うのです。
 
確かに見た目は良さそうに見えるんです。
対比するとキラキラして見えるんです。
 
A群:自己肯定感高い・ポジティブ・積極的・楽観的・プラス思考・陽・明・表
B群:自己肯定感低い・ネガティブ・消極的・悲観的・マイナス思考・陰・暗・裏
 
ほら、こんなふうに対比して並べると、圧倒的にA群が良く見えちゃいますよね。
 
でも、本当に全てにおいてA群が優っているのか? と言うと、決してそうではないと思うのは負け惜しみなのでしょうか?
 
ものごとの捉え方っていくつもあって、どれが良くてどれが悪いと優劣を付ける必要は無いと思うのですね。
なのに、こんなふうに並べてみると、圧倒的にA群の方が良く見えてしまいます。
 
実はこれが「思い込み」なのです。
 
ネットの記事はA群贔屓な目線で書かれたものばかりで、B群を良く書いているものなんて見当たりませんでした。
 
ネットで目にするものは「自己肯定感が高い方が優れているんだ」的なA群寄りの目線で書かれた記事ばかりなので、B群属性の強い人たちは「あれ? もしかしてここに居たらダメなんじゃないのかな? そんなに居心地悪くないんだけどな……」と思いながらも、なんだかここにいることが悪いことのような錯覚に陥ってしまっていて、不安を煽られているのが「自己肯定感が低いことは悪いことだ」の発想に繋がっているのだと思うのです。
 
決してそうではありません。
何も悪いことはないのです。
 
B群気質を持っていることのメリットを今一度確認してみようじゃないですか。
 
私は、自己肯定感が低いことのメリットは、自分を過信しないことだと感じています。
何をやっても、どれだけ努力しても、周りは認めてくれないのではないか? といつも不安を感じてばかりいます。この努力では足りないのかな? もっとやらなきゃ認めてもらいないのかな? そんな不安がいつも付きまといます。
でもそのお陰で、人一倍努力するし、自分で自分に重いプレッシャーを与えて乗り越えようとします。
 
周りの目が気になって仕方がないと感じるのも、決して悪いことではないと思っています。これをやったらあの人はどう思うかな? みんなが受け入れてくれるためにはどうすればいいかな? と、いつも誰かを主とした判断基準を考えます。
これって、自分本位にならずに全体を考えた行動が自然にできるということでもあると思うのです。
 
ネガティブな思考も、いつだって最悪を想定した考え方ができるという点でリスクマネジメント能力に優れているという捉え方ができると思っています。
なんでも前向きに考えていればいいということではなく、万が一を常に想定しておかなければならない、その意識の高さはネガティブ思考の長所だと思います。
 
消極的である、これも一見悪いことのように見えますが、オールラウンダーが苦手なだけで無責任な訳ではなく、ひとつのことを誰よりも深く掘り下げて考えていたり、何かに特化させたら誰にも負けない強い責任感でやり抜く粘り強さを内に秘めている、なんてこともよくある話です。そんな姿をアピールしないだけなのです。
 
悲観的であることも重要なことで、ネガティブと共に悪い状況をイメージする力に長けているということなのです。「今はいいかもしれないけれど、その状況は長くは続かないから次の手を考えないといけないぞ」といったふうに、一寸先は闇だといつも思っているからこそ、様々な対処法を考えているのです。
 
マイナス思考も、謙虚で控えめ、決して自分を過大評価しないところが良いと思っています。
 
人を押し退けて前に出たりもしないし、人の意見に惑わされずに自分を冷静且つ低く見積もるからこそ、地味だけど安定感のある働きができるのです。
 
私はB群に属する考え方の方がむしろ良いとさえ思うようになりました。
 
確かに、A群に属する資質を持っている人の方がリーダーに向いているし発言力も高い、行動力もあるなど、良いイメージがあるとは思います。
でも、それができるのは、縁の下で我々B群の面々がしっかりと下支えをしているからこそだろう、とも思うのです。

 

 

 

「自己肯定感」
とは、自分を肯定する感情です。
 
マイナスであれ、ネガティブであれ、そんな自分をそれでいいんだ、と受け入れることに不満や不自由を感じなければ何も問題はないはずなのです。
 
しかしながら、いつの間にか「自己肯定感が低いことは悪いことだ」と見下すような意見が増えました。
 
でも、これを言い出したのは自己肯定感が高い人ではなく、「自己肯定感が低い自分」を受け入れられずにコンプレックスを抱いていた人たちだったのではないだろうか、と思います。
優劣をつけて蔑むことでしか自分を正当化できない人こそが、自己肯定感が低いことを悪く言っているのではないかと思うのです。
 
これを、先述のA群の人が言うのならまだしも、B群の人に悪く言われるのは気分の良いものではありません。
B群気質が強いことを悪いことだと思っていない人も世の中にはたくさんいるのに、自分の気質を受け入れられないでいる人たちの言葉に苦しめられてしまっているのです。
 
B群気質を持っていることが嫌だと思うなら、黙って変わればいい。
自分の今を受け入れられないのなら、受け入れられるようになるための努力をすればいい。
その努力もしないままに悪く言うことで溜飲を下げようとしているような人にいつまでも好き勝手言われて堪るか!! と思うのです。
 
 
私は、自己肯定感が低い人とは、「自分を過信せず慎重にものごとを考えられる人」という定義を与えたいと思っています。
 
「自己肯定感が低いことは悪いこと」
この言葉はただの思い込みです。
この思い込みが自分を苦しめる理由だと思うのです。
 
でも、きっとそうじゃない。
 
一人ひとり、様々な考え方があって当たり前なのです。
どの考え方にも良い面、悪い面があるのです。
 
A群に属するものが良くて、B群に属するものは悪い。
まずはこの思い込みを捨てて、自分自身の思考パターンが自分を苦しめるものでなければ、それでいいと考えてみませんか。
 
そうすれば、自分に無いものの考え方をする人のこと拒んだり馬鹿にしたり、見下したりする必要もなくなります。

 

 

 

「自己肯定感が低いことは悪いこと」
ではなく、
「今の自分を強く信じるか、過信しないか、どちらが自分にとって楽な生き方ができそうか?」
という目線で考えて、居心地の良い方を選択すれば良いのです。
 
自己肯定感の捉え方に優劣は無い。
そう思いませんか?
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
垣尾成利(READING LIFE編集部 ライターズ俱楽部)

兵庫県生まれ。
「誰かへのエール」をテーマに、自身の経験を踏まえて前向きに生きる、生きることの支えになるような文章を綴れるようになりたいと思っています。

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2022-02-02 | Posted in 週刊READING LIFE vol.156

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