週刊READING LIFE vol.164

学べば学ぶ程、思考不足を痛感したが……《週刊READING LIFE Vol.164 「面白い」と「つまらない」の差はどこにある?》


2022/04/06/公開
記事:山田THX将治(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
結論から書くと、
『プロが書いた文章は“面白い”』
『素人が書いた文章は“つまらない”』
以上である。
 
これが、
『“面白い”文章を書ければプロ』
『“つまらない”文章しか書けなければ素人』
では、面白くない。
何故なら、つまらない結論になってしまうからだ。
 
ただしこの結論には、一つのトリックが内包されている。それは、プロは常に勝負の世界に生きていることだ。面白くない文章ばかりを書いているとその内、仕事を貰うことが出来なくなるだけだ。それが、プロとしての責任だ。
素人の場合、仕事を失う恐れが無い分気が軽だ。私がその‘お気楽な代表’なのだが、無責任に付ならない文章を書き散らかしても、文句を言われることは無いし責任を取る必要も無いのだ。
 
更にトリックを加えると、“面白い”文章が“上手い”文章の裏張りには為らないことだ。
ただし、大概の場合は“下手な”文章は“つまらない”と言い切れるものだ。極たまに、“下手な”文章でも“面白い”文章は有には有る。
例えば、小学生の書いた作文に多く見られる。それ等は、稚拙な書き方でもそれなりにオリジナルな視点を持っている。言い換えれば、子供なりにしっかりとした主観が、子供ならではの幼い文章で表現されているのだ。
 
 
このところ私は、天狼院で川代紗生さんのライティング系講座を続けて受講している。これらの講義は、それ迄のライティング系ゼミを受講した者が限定で受講する、一歩踏み込んだ論点を学ぶものだ。
その講義で私は、驚くべき体験をした。ライターのプロである川代さんの、プロとしての意識の高さを知ったのだ。それと同時に、私の姿勢が如何に程度の低いものだったのかを思い知らされた。
 
先達ての講義内容は、文章を書く際の『構成』を如何に考えるかというものだった。
私はというと常に、課題と為る文章を書く際は、長目に一気に書くことにしている。書き上がった文章を、今度は時間を掛け、じっくり校正するのだ。多くの場合、余談と為る部分を思いっ切り切ることにしている。
総じて、課題の字数の3割から5割増し(5,000字ならば、6,000字から8,000字程度)を一気に書き上げる。一気にとは、2時間程度だ。何故一気かというと、これは経験則なのだが、私の様な怠け癖の持ち主は、集中力が持続しないからだ。
持続しない集中力は、分断させると前後で熱量に差異が生まれてしまう。それもかなりの格差だ。私はそれを避ける為に、一気に書く様にしているのだ。
その為、書き上がった私の文章は、見るも無残な文章であることが多い。その為、今度は時間を掛けて構成しなければ為らない。
 
既にお解かりかと思うが、ここまで私は、課題として書く文章の構成は一切行っていない。構成を考えすぎると、急にタイピングスピードが落ち、短時間で一気に書き上げることが出来なく為るからだ。
 
講義の中で川代さんは、御自分でライティングされる際の構成を、実際に書かれた記事を参照しながら解説して下さった。それはまるで、秘伝のレシピを公開する様に貴重なことだった。
川代さんの構成は、実に詳細で、一本の記事に対する労力の大半を使ってしまっている様だった。私は、自分の至らなさが恥ずかしくなった程だ。
これに、元々の筆力差が出るのだから、川代さんと私の文章ではもはや、“面白い”“つまらない”の境界線ではなく、次元の違いしか存在しないと気が付かされた。
 
これが多分、“面白いプロ”と“つまらない素人”の差なのだろう。一言でいうなら、“プロ”と“素人”の意識の差といって問題無いだろう。
 
ここから解かることは、文章を書く“プロ”と“素人”の差は、構成を詳細に考えるという実に僅かなことと為る。その差を角度で表すと、ほんの1度程度だろう。
ところがこの1度が問題で、時間が進んでも一切交わらないことを意味するのだ。即ち、“プロ”と“素人”のたった1度の差は、永遠に“素人”は“プロ”を超えることが出来ないエビデンスということに為る。
しかもその差は、『ワニの口』という言葉で示される通り、開く一方でしかないのだ。
 
私はもっともっと、脳に汗して考えなければと痛感した。
 
 
珍しく、私がこうして謙虚な考えを持っていたところ、今度は天狼院の三浦店主が、とんでもないことを講義中に語り出した。何でも、
「最近のライターが書く文章は下手だ」
と、いうのだ。
これは、私にとって衝撃的だった。何故なら、プロのライターが書く文章は、常に考え尽くされ、高度な筆力で“面白く”書かれていると思ったからだ。そうでなければ、プロという、書くことで収入を得る文章では無いと思ったからだ。
 
ところが、三浦店主の話には続きが有り、
「プロのライター時は、たまたま売れる文章を書けただけ」
とのことだった。加えて、
「下手なりに」
と、言葉が付け加えられた。
しかも、しかも、
「(文章が)下手でも、“面白い”と思わせる文章を書くのがプロだ」
とも、仰った。そこには、
『自分は(文章が)下手だと思い込む』
そして、
『自分が書いた文章は、下手であっても“面白い”と信じて書く』
ことが、重要だそうだ。
 
私は少々、考え方を変えることにした。
確かに私は、文章が下手だ。
しかし、自分なりに面白い題材を見付けて文章を書いている気概は有る。
私の文章は、“面白い”と思っている。『下手なりに』の接尾語が付くが。
一度だって、“つまらない”と思って書いたことは無い。
 
 
こうなるともしかして、文章が“面白い”か“つまらない”と感じるかの分水嶺は、自分自身に有るのかも知れない。
“面白い”と思い込んだ文章しか、“面白い”とは感じないだろうから。
“つまらない”と自分が感じた文章は、他人様が読んだところで“面白い”と感じることは無いだろうから。
 
だからこれからも私は、『下手だけど“面白い”文章』を目指し信じ切って書くことにしよう。
そして、周囲の評価より自身の評価を優先しよう。
 
 
そしてその前に、余計なことを考えずに、一先ずプロライターの川代紗生さんより、一時でも多くの文字を毎日書くことにしよう。
 
1度の差を、これ以上開かない様にする為に。
 
この先、大きく開く『ワニの口』を加速度的に進ませない様に。
 
 
さぁ、一休みしたら、また一から書き出すことにしよう。
『下手なり』に“面白い”文章を。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
山田THX将治(天狼院ライターズ倶楽部湘南編集部所属 READING LIFE公認ライター)

1959年、東京生まれ東京育ち 食品会社代表取締役
幼少の頃からの映画狂 現在までの映画観賞本数15,000余
映画解説者・淀川長治師が創設した「東京映画友の会」の事務局を40年にわたり務め続けている 自称、淀川最後の直弟子 『映画感想芸人』を名乗る
これまで、雑誌やTVに映画紹介記事を寄稿
ミドルネーム「THX」は、ジョージ・ルーカス(『スター・ウォーズ』)監督の処女作『THX-1138』からきている
本格的ライティングは、天狼院に通いだしてから学ぶ いわば、「50の手習い」
映画の他に、海外スポーツ・車・ファッションに一家言あり
Web READING LIFEで、前回の東京オリンピックの想い出を伝えて好評を頂いた『2020に伝えたい1964』を連載
加えて同Webに、本業である麺と小麦に関する薀蓄(うんちく)を落語仕立てにした『こな落語』を連載する
天狼院メディアグランプリ38th~41st Season 四連覇達成

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2022-04-01 | Posted in 週刊READING LIFE vol.164

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