甘酸っぱいレモネードを作りたい《週刊READING LIFE Vol.165「文章」の魔法》
2022/04/11/公開
記事:izumi(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
2022年1月から、ライターズ倶楽部に参加している。
天狼院書店の文章教室で、試験を受けて入るクラスだ。
2021年に受講していたライティングゼミの上級者クラスになる。
ライターズ倶楽部に参加するのは、勇気がいる決断だった。
自分の文章に自信がなく、なかなか申し込みができなかった。
ライティングゼミにいた時から、ライターズ倶楽部の文章を読んでいた。
どの記事も面白く読み応えがあり、表現方法も勉強になる文章ばかりだ。
わたしには、縁のないクラスだと思っていた。
参加資格があるからといって、はたしてついていけるのか? と不安になった。
何度も、ライターズ俱楽部の参加申し込みボタンを押そうとした。
その度にもうちょっと考えてみようと、なかなか申し込みができなかった。
やっと申し込みが出来たのは、2022年に年が変わってからだ。
ライターズ倶楽部には、参加者用のフェイスブックグループがある。
そこに記事を投稿したり、他のメンバーが書いている記事を読める。
グループに入り、メンバーを見た時は衝撃だった。
天狼院書店のウェブで、いつも楽しみに読んでいた記事を書いている人たちがいた。
まるで、芸能人を見ているようだった。
もしそこに入ったら、みなさんはどう思うだろうか?
よし、がんばろう!
いやいや、不安で仕方がない。
わたしは、不安で仕方がない方だ。
講座がまだ始まっていない時、参加者の自己紹介スレッドを読んだ。
書いてある内容は、参加した意気込みを感じる。
画面越しに感じるオーラがすごい。
どの人も、人気作家のように見えた。
フェイスブックのグループに入っただけで、何もしていないのに、思いっきりへこんだ。
もともと、自分に自信がある方ではない。
ライターズ俱楽部に入ったのは、一歩ずつ小さな歩幅で歩いてきた道を、一気に助走をつけて飛んだようなものだ。
何もしていないのに、息切れしてくる。
はぁ……はぁ……。
「レベルが高すぎるのではないかな。一度も記事が掲載されなかったらどうしよう」
はじまる前から、自信がない、ついていけないとネガティブのかたまりになってしまった。
そんな時に、スタッフの方と接する機会があった。
弱音を吐くわたしを、はげましてくれた。
「えらいところにきてしまいました……。みなさんに圧倒されています」
冷静に考えると、自分で選んで入ってきたのに何を言っているの?
突っ込まれそうだが、天狼院書店のスタッフは優しい。
的確で前向きになれるアドバイスを、ありがたくいただいた。
文章がうまくなる機会があって、うまくなりたい気持ちがある。
がんばるしかないのだ。
やってみよう。
できるか、できないかで判断しない。
できるかもしれない可能性にかけてみよう。
ライティングゼミの時も、課題を提出できるか分からないと思ったが、なんとか全部提出したじゃないか。
コツコツと努力するのは、嫌いではない。
いつも通り地道にいこう。
みんながすごいのは、分かっている。
文章を上達させるためには、たくさん失敗して、フィードバックを受けよう。
講座が始まる前に、やっと気持ちが落ち着いた。
フィードバックしてくれる先生から、はじめは思ったように書けないと聞いていた。
まさにそのとおりになった。
ライティングゼミの時は、フリーの題だ。
その時に自分の中にあるコップから、水があふれたことを書く。
ライターズ倶楽部には、お題があった。
フリーの題でもよいが、始めたばかりなので、お題にそって書くようにした。
コップから水があふれていない内容を、書くのは難しい。
何を書けばいいのか悩んだが、とにかくチャレンジした。
はじめて記事が合格になった時は、合格を知らせるスマホを持つ手が震えた。
「大丈夫。ちゃんと合格している」
いつも応援してくれる友達に、すぐに報告した。
「手が震えるほど嬉しいことあるかな? 考えてもないけどなー。すごいやん」
友達からこう言われた時、文章を書くのは通常では得られない喜びを感じるのだと分かった。
ライターズ俱楽部での記事が、天狼院書店のウェブサイトに掲載された。
嬉しくてしかたがなかった。
その後わたしの記事は、合格したり、しなかったりを繰り返した。
フィードバックしてくれる先生は、2人いる。
1人の先生から、一カ月以上たっても、一度も合格をもらえなかった。
落ち込み、泣きそうになるわたしを、一緒に受講している仲間がはげましてくれた。
わたしが頑張っているから、その仲間も頑張れているとメッセージをもらったのだ。
電車の中でメッセージを読んだ時、相手の気持ちが嬉しくて、泣きそうになった。
書く時は1人だけれど、ともに文章を書く仲間がいる。
1人ではない。
仲間も悪戦苦闘しているにもかかわらず、優しい言葉をかけてくれる。
まわりに恵まれていて、いつも誰かに助けられている。
ほんとうにありがたい。
模索しながら受講してた時に、気づいたできごとがあった。
仕事について書いた時、不合格だった。
フィードバックしてもらった内容を読みながら、こうしたら良かったのかなと考えてみる。
指摘された内容をなおすと、随分文章の印象が変わる。
やはり、先生のいう通りだなあと感心していた。
その後、他の人が書いた記事を読んだ時に、ハッとした。
同じように、自分の仕事について書いて、合格をもらっている。
内容を読むと面白い。
仕事をうまくこなすのではなく、やりたい仕事をするために、上司に提案をしていく様子が面白い。
まわりに何を言われても、突き進む力がある。
読むと、まわりを気にせずに、がんばってみようという気持ちになった。
わたしの文章はどうだろう?
読者が読んで、がんばろうという気持ちになるだろうか。
この記事を読んでも、闘志は起きないだろう。
なにが違うのか分析をした結果、気づいた。
「読んでくれる人の気持ちを考えていなかった。ただ課題を提出しているだけ」
初めてのクラスで、緊張していた。
覚悟を決めて入ったクラスなので、どうしてもうまくなりたかった。
先生からフィードバックをたくさん受けたい気持ちが、空回りしていたのだ。
お店のスタンプカードのポイントを集めるように、課題を提出するだけで安心していた。
わざわざ時間をさいて読んでくれる人に、何を提供できるのだろうか。
読んでよかったと思える内容を書けていなかったのだ。
文章の基本を、すっかり忘れてしまっていた。
気づいた内容が本当にあっているかは、分からなかった。
次の課題提出で、読者に何を提供できるかを考えて書いた。
「初心に戻って書きました。どうか合格しますように」
心の中で祈りながら提出すると、合格できた。
ライターズ倶楽部にきてから、落ち続けていた先生から、やっと合格をもらえたのだ。
嬉しくて、思わずやったー! と叫んだ。
読んでくれる人に、何を提供できるか。
がんばろうという気持ち、わかるわーという共感、考えさせられる内容。
笑える面白い内容の文章。
読者に、いろいろな気持ちを感じてもらいたい。
書くことと、人間関係は共通している。
相手に何かをしてもらうのを待っているのではなく、自分から与えていく。
人と仲良くなりたければ、自分から相手を好きになる。
相手のよい所を見つけていく。
待っているだけでは、世界は広がらない。
文章も全く同じで、見返りを求めず心を開くのだ。
自分がした恥ずかしい体験を、隠さずに書く。
そうすると読んでいる人の心は、自然に開いていくのではないだろうか。
ひとつ記事を書く。
自分とは何者なのか? と考えながら心の中を潜っていく作業だ。
本当は、どう思っているのか?
もっと違うことを、感じているのではないか。
深く、思考の中を潜っていく。
時には、本当の気持ちに、目をそむけたくなる時がある。
つらくて逃げたくなる気持ちに向き合う。
本当の気持ちに、向き合って書いた時。
心の奥底に、こんな気持ちがあったのかと気づく。
自分の気持ちに、整理がつくのだ。
人間関係の基本を思い出し、気持ちの整理ができる。
心が救われているのだと気づいた。
文章はレモネードのようなものだ。
人生のなかで、レモンのように酸っぱい失敗や、恥ずかしい経験がある。
わたしは、おっちょこちょいで、恥ずかしがり屋だ。
言葉が足りずに、誤解を受けたりする時もあった。
よく失敗して、もともとない自信がもっとなくなる。
だけど、失敗を振り返ってみると、ギフトがあるのだと分かる。
マイナスなできごとも、何かのメッセージがあり、時間がたてばプラスだ。
プラスは、はちみつとなる。
それを文章にして書けば、水が加わり、レモンが甘酸っぱいレモネードになる。
最近は、思うように書けなくて、苦しむ時も多い。
甘いレモネードが出来上がらず、酸っぱいままな時もある。
まだまだ書くという経験値がたりないのだ。
いまより美味しいレモネードを作れるようになりたい。
そのためには、炭酸を入れたり、レモンの種類を変えてみよう。
試行錯誤を繰り返していく。
自分の心が救われた文章で、今度は誰かの心を救いたい。
文章に救われた恩返しで、感動や感謝を循環させたいのだ。
ライターズ倶楽部のプロフィールに書いた、誰かの応援になる文章を書ける日がくると信じている。
□ライターズプロフィール
izumi(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
2021年7月よりライティング・ゼミ超通信コースを受講。2022年1月よりライターズ倶楽部に参加。ランニング、トレイルランニング歴10年。最近山登りにハマってテント泊を実現したい。誰かの応援になる文章を、書けるようになりたいと日々特訓中
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