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週刊READING LIFE vol.180

人生の半分のお付き合い《週刊READING LIFE Vol.180 変わること・変わらないこと》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2022/08/08/公開
記事:川端彩香(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
歳を重ねるにつれ、あんなに楽しみだった誕生日が近づいてくるたび、なんだか複雑になっている。19歳から20歳になるあたりまではあんなにワクワクしたのに、それ以降は「あ、また歳重ねちゃった」という焦りのようなものが大きくなっていっているような気がする。21歳が22歳になるのに比べて、22歳が23歳になる時の方が、それに比べて23歳が24歳になる時の方が、その焦りは大きくなっていって、半年前に29歳から30歳になった時には、もう焦り慣れていて良いくらいなのに、やっぱり焦っていた。
 
何に焦っているのかは、正直よくわからない。仕事もだし、結婚もだし、その先にある出産や育児もだし、でもこの先自分の理想通りに人生が進んでいくかもわからないし、そのための努力はするけれども、その努力をしたからと言って、自分の理想通りに後悔のない人生が送れるのかというと、決してそうではないこともわかっている。考えれば考えるほど、無駄に焦って無駄に落ち込んでしまうだけなので、この手のことはあまり考えないようにしている。考えないようにすることも、ラクに生きるための、一種の努力なのかもしれない。
 
30歳の誕生日も、家族や友人からLINEが届いた。私は友達がそんなに多い方ではないが、誕生日を祝福してくれる友人は大事にしないといけないな、と毎年感じさせられる日でもある。
 
私が一番仲の良い友人は、高校時代からの友人・マミちゃんだ。彼女とは高校1年生で出会ってから今まで、絶えず連絡を取り、かと言ってベタベタしすぎず、最低限の礼儀や距離感は保ってくれる、非常に居心地の良い友人だ。マミちゃんの結婚式では、友人代表のスピーチもした。私も自分が結婚式を挙げる時は、マミちゃんにスピーチをお願いする予定だ。今のところ予定はないけれども。
こういう友人のことを、世間は「親友」と呼んだりするのかもしれないが、なんかそれはしっくりこないな……という思いがあり、私もマミちゃんもお互いのことをそうは呼ばない。そういう感覚の近さも、マミちゃんと長く付き合えているポイントなのかもしれない。
 
マミちゃんの第一印象は「愛想がなくて、なんかちょっと感じの悪い奴」だった。顔は透明感のある美少女だったのに、なんだかあまり笑わない子だった。入学当初、私がその時一緒にいたクラスメイトが「お昼一緒に食べよ?」とマミちゃんに声をかけたのだが、「いや、他の子待ってるから」と真顔でつっけんどんに返事をしたため、こういう第一印象になった。その時のことは今でも鮮明に思い出せる。たまに思い出したようにマミちゃんにこの話をすると、「だって人見知りやったからさ~、ごめんて」と笑いながら言う。仲良くなるとそんな第一印象は早々に払拭されたのだが、大人になって一緒に出かけると、飲食店の店員さんや、たまに会う私の会社の同僚に対する態度は高校時代のそれとは全く違うもので、ニコリと非常に感じが良い。大人になったのだから、それくらい当たり前かもしれないが。
 
出会って15年経つ私たちだが、よくよく考えてみると話の内容が年齢に応じて変わっている。
 
高校生の時は部活での出来事や、少しクセのある先生の話、たまに恋愛話。冬に部活で手が乾燥して手が荒れて指の間がパックリ割れた時は、ソフトボール部だったマミちゃんに「私の夏のグローブと同じ臭いがする(つまり臭い)!」と言われ、二人で私の手の臭いを嗅いで教室でゲラゲラ笑ったし、クラスメイトはみんなお弁当を食べ終わっているのに、私とマミちゃんは教室の片隅でまだお弁当を食べながら、ギャグ漫画日和の動画をニタニタ笑いながら見ていた。受験生になったら、先に進路が決まっていたマミちゃんは休み時間のたびに私に英単語の問題を出してくれ、お手製のテストまで作ってきてくれていた。そのテストは今でも私の実家にある勉強机の引き出しに保管してある。
 
大学生になると、お互い別の大学に進学したので、各々の大学での友人の話もした。高校時代、人の愚痴をほとんど言わなかったマミちゃんがスタバで延々と愚痴を吐き出し始めた時は驚いた。お互い留学に行ったりインターンに行ったり、当たり前かもしれないが、高校時代よりも行動範囲は広がったし、環境も変わったし、知らない友人も増えたが、私とマミちゃんの関係性は変わらず、数ヵ月に一度は定期的に会っていた。
 
就職してからも関係性は変わらずで、大学時代に会う頻度が減った分を埋めるかのように、仕事終わりに連日ご飯に行ったり、カラオケに行ったり、休日にも少し遠出をしたりしていた。午前中から出かけて、夜まで遊ぶ。でもだいたい帰宅は22時くらいで、遅くても23時には帰宅していた。仮にこれが彼氏彼女の関係だったとしても、非常に健全なお付き合いではないかと胸を張って言える自信が、無駄にある。
話の話題は、彼氏が欲しいだの、結婚したいだの、学生時代にはお互い照れて避けていた話題が多くなった。20代半ばくらいになると、共通の友人でもチラホラ結婚する人が増えていた。学生時代の懐かし話もしたが、遅ばせながら、そういうきゃぴきゃぴとした話も恥ずかしがらずにするようになったのも、社会人になってからだったと思う。
 
その後もマミちゃんが結婚して関東方面へ引っ越したり、私も転職して地元を離れたり、と会う頻度は時と場合によって変わっていったが、友人関係は変わらず今まで続いているし、今はお互い電車で20分くらいの距離に住んでいるので、月に1~2回のペースで会っている。仕事終わりにご飯やスタバに行ったり、休日に丸1日遊ぶけど健全な帰宅時間を守るあたりも、やっぱり変わらない。
まだ私は未婚のため、婚活の話をしたりもするが、もっぱら身体や健康についての話が多くなったような気がする。肩こりがひどい、あそこの整体いいよ、肌荒れがとまらない、あのパックめっちゃ効果あるよ、とか。お互い白髪がチラホラ見え隠れしているので、たまに切り合ったりもする。
人生の先輩方からすると「まだ早いわ! 甘いわ!」と怒られそうな気がせんでもないが、今まで若さにかまけてどうにかしていた部分が、28歳あたりから急ピッチで私たちに襲い掛かってきている気がしてならないのだ。
 
そんなこんなで、15歳で出会ったマミちゃんとは、今でも変わらず仲良くしている。年齢に合わせて話す内容は変わったし、環境に合わせて私たち自身の中身も出会った当時と全く同じではないが、それでも私たちの関係性は変わらない。程良い距離感で、心を許し合える関係性だ。
 
 
今年の誕生日には、マミちゃんからも、もちろんLINEのメッセージが送られてきた。ありがとう、と返信をし、いつも通りしばらくメッセージのやり取りを続けていた。ふと、マミちゃんがこう送ってきた。
 
「私ら15歳の時に出会ったから、もう人生の半分は友達付き合いしてるって考えたらさ、長い付き合いよねー」
 
おお、そういう考えもあるのか。率直にそう思った。
 
現在30歳の私たちは、15歳の時に出会って、そこから15年経っている。確かに人生の半分、私とマミちゃんは友人ということになる。高校を卒業してお互い違う大学に入っても、大学を卒業して就職しても、そこからお互い結婚したり引っ越したり転職したりしながらも、今でも仲の良い友人だ。ライフステージが変わったり、自分の周辺環境が変わったりすると、自分自身の考えが変わったり、それに伴って付き合う人のタイプもその時々で変わることも少なくないと思う。それでも、私とマミちゃんは今でも変わらず仲が良い。こんなに有り難い存在が家族以外にできるなんて、とても有り難いことだよな、とマミちゃんの言葉で気付かされた。
 
時代は流れる。人も時が経てば変わるものだ。良くも悪くも、変わることは当たり前のことだと思う。私も、15歳の私と30歳の私とでは違うし、それはマミちゃんも同じだ。お互いが、出会った時と今では、見た目もそうだが中身も変わっている。それでも、私たちがお互いに心を許し合っていて、居心地の良い友人だということは変わらない。それだけは、15年前に出会った時から、何も変わっていないのだ。
 
「じゃあ、30歳記念と15年記念で写真でも撮りに行こっかー」と、2人で京都に出かけた。大学の卒業式で着た袴が気に入らなくて悔いがある、というマミちゃんの希望を叶えるため、もう二度と着ることのないと思っていた袴を着た。桜が散る前の京都で、プロカメラマンにたくさん写真を撮ってもらった。
 
「40歳の時はどうしよっか? 何着る?」
「え、それは50歳の時にせえへん?」
 
京都を後にしながら、当たり前のように10年後、20年後の話をする。
10年後、20年後、私たちはどんな風に変わっているだろうか。変わっていることは多いだろうが、私たちのこの関係性は、決して変わっていないと自信を持って言えるのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
川端彩香(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

兵庫県生まれ。大阪府在住。
自己肯定感を上げたいと思っている、自己肯定感低めのアラサー女。大阪府内のメーカーで営業職として働く。2021年10月、天狼院書店のライティング・ゼミに参加。2022年1月からライターズ倶楽部に参加。文章を書く楽しさを知り、懐事情と相談しながらあらゆる講座に申し込む。

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2022-08-03 | Posted in 週刊READING LIFE vol.180

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