週刊READING LIFE vol.201

電気代の節約に挑戦!自宅の省エネ大作戦《週刊READING LIFE Vol.201》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2023/1/23/公開
記事:深谷百合子(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
1月の電気料金予測を見て驚いた。高い。12月の電気代の2倍を超えている。12月だって電気の使用量は前年の半分近くまで減らしたのに、電気代は2割も減らなかった。単価が上がっているからだ。
 
会社員時代は家に居るのは朝晩だけだったから、そんなに電気代はかからなかった。でも独立して在宅で仕事をするようになってから、毎月支払う電気代のなんと多いことか。家にずっといるとこんなにも電気を使うのだと思い知った。このご時世で在宅勤務に切り替わった方も、同じように感じている方は少なくないと思う。
 
私の家では、一昨年冷蔵庫とエアコンが相次いで壊れ、買い替えた。冷蔵庫は23年前に購入したもの、エアコンは17年前のものだった。新しい冷蔵庫は、容量が以前の1.2倍になったのに電気使用量は約40%減った。エアコンも約10%の省エネになった。
 
昨年はキッチンの照明器具が壊れ、LED照明に買い替えた。LED照明は明るさが調節できるし、照明の色も変えることができる。取り付けてみると、蛍光灯だった時と比べてずっと明るい。おまけに省エネだ。今まで使っていた蛍光管は86ワットだったのに、新しいLED照明は33ワットだ。明るさは同じかそれ以上なのに、電気の使用量は60%以上も少ない。
 
そんなわけで、我が家も省エネ性能の高い家電製品に置き換わってきた。それなのに、毎月届く電気代の明細を見ると、思ったほど電気の使用量が減っていない。
 
私は期待が外れてがっかりしたものの、「家に居る時間が長いから、仕方がない」と思うだけで、これといって何かを変えようと思うことはなかった。こまめに節電したらいいのは分かっているけれど、なんとなくモチベーションも湧かなかった。
 
ところが、昨年の夏、ちょっとした変化があった。
 
我が家の電力メーターがスマートメーターに取り換えられたのだ。今までの円盤がグルグル回っているタイプのメーターから、デジタルのメーターに変わったのである。スマートメーターになると、電気の使用量が簡単に把握できるようになる。
 
「1日の電気使用量を知りたい」と思ったら、今までだと電力メーターを自分の目で確認しなければならなかった。例えば朝7時に電力メーターが表示している数字を記録し、翌朝7時にまたメーターの表示している数字を記録して、その差を計算する。そうすることで、1日の電気使用量を算出するのだ。そんなの、よほど興味がなければやっていられない。
 
ところが、スマートメーターなら、1日だけでなく、1時間毎の使用量も知ることができる。どの電力会社も、電気料金や使用量をWEBで確認できるサービスを提供している。私は早速、そのWEBサービスに登録して、自分の電気の使い方を見てみることにした。
 
グラフを見ると、外出や就寝時でも一定の電力が使われているのが分かる。
「冷蔵庫、お風呂場の換気扇、WiFiの電源とかだな」
 
私は部屋を見渡しながら、ずっと電源が入っている機器を数えてみた。
 
さらには、グラフの様子から自分がどんな生活をしているのか丸わかりである。
 
昼間の電気使用量が極端に少ない日は、1日中外出をしていた日。
夜中や明け方の電気使用量が多い日は、何もかもつけっぱなしで、寝落ちをした日。
 
「夜更かしをすると、結構電気を使うんだな」と目で見て分かる。
 
そのWEBサービスのメニューの中に「目標の電気料金設定」というのがあった。試しに前年同月の電気使用量から5%減らす目標を立ててみた。目標を設定すると、「今月の目標金額」と「現時点の使い方から予測される今月の料金」が表示された。
 
集計期間は9月9日から10月11日までの1ヵ月。私が目標を設定したのは9月16日で、集計が始まってから1週間が過ぎていた。この9月9日から16日までの1週間の電気の使い方から予測された電気料金は、目標よりも5000円近くオーバーしていた。
 
暑いからエアコンもガンガンつけていたし、夜中遅くまで起きていたこともあったし、エアコンもテレビも照明もつけたまま寝落ちしたこともあったから当然の結果である。
 
そこから私の省エネ大作戦は始まった。
 
朝晩など涼しい時間帯は、エアコンをつけずに過ごした。エアコンのフィルターも掃除した。今まで夜はずっとつけっぱなしだったキッチンの照明も、夕飯の後片付けを終えたら消すようにしてみた。
 
9月下旬になると、エアコンをつけずに過ごせる日が多くなったことで、これまで1日400円のペースで使っていたのが、1日200円のペースになった。9月30日の時点で、見込み金額は最初より減ったものの、目標よりまだ約2000円オーバーしていた。
 
「まだ他にやれることないかな」
 
私は家中にある電気を使っているものを見渡してみた。気になったのは、夜間の電気使用量だった。キッチンの照明は消すようになったけれども、リビングの照明はずっとついている。
 
「リビングの照明を何とかするには、LEDに変えるしかないかな」と思っていたら、ある考えが浮かんできた。
 
「キッチンのLED照明器具と入れ替えてみよう!」
 
キッチンの照明は、使わない時に消すようにしたら、実は1日の内でそんなに使っていないことが分かった。朝晩の食事の支度と後片付けの時くらいなものだ。ところがリビングは朝も夜も長い時間使っている。
 
キッチンに取り付けたのは、省エネタイプのLED照明器具だ。一方で、リビングの照明は蛍光灯器具だ。どうせなら、長時間使う照明の方をLEDにした方がお得ではないか。どちらも6~8畳タイプの照明だから、入れ替えても明るさに問題はない。
 
私は早速脚立を取り出して、キッチンの照明器具を取り外した。それからリビングの照明器具を取り外した。リビングの照明はずっと点灯していたから、蛍光管も器具も熱を持っていた。一方、キッチンのLED器具の方は、点灯していた後でも熱くない。
 
「蛍光灯って、こんなに熱を発するんだな」
 
私は改めて蛍光灯とLEDとの違いを体で感じていた。
 
それから2、3日後、夜間の電気使用量を確認してみた。すると、キッチンとリビングの照明器具を入れ替える前と比べて、入れ替えた後は電気の使用量が20%近く減っていることが分かった。これはかなり効果があったようである。
 
結局10月11日を終えた時点で、実際の電気料金は目標より725円オーバーとなり、目標達成とはならなかった。でも、当初は5000円オーバーの見込みだったのだから、頑張った方である。
 
10月12日から11月9日までの期間は、必ず目標を達成しようと意気込んだ。私の場合は、やはり夜の時間帯の電気使用量が多い。照明の他に使っているものといえば、テレビである。今まで触ったことのない画面の設定を表示してみた。そして、画面の明るさを少し暗めにしてみた。
 
11月に入ると少し肌寒い日があったけれど、1枚着込むことで、エアコンをなるべく使わずに過ごした。そんな小さなことが積み重なったおかげだろうか。今度は目標より2600円も少ない金額に抑えることができた。電気使用量は、前年の同じ期間と比べて半減していた。
 
随分と使用量を減らすことができたので、私は12月9日から1月11日までの期間の目標を少し厳しくしてみようと思った。目標設定の画面を開き、目標値を前年の95%から90%に変更した。これまでに随分省エネ対策をしてきたのだ。余裕で目標達成できるだろうと思っていた。
 
ところがお正月、久しぶりにWEBサービスを立ち上げてみて驚いた。余裕だと思っていたのに予測された電気料金は目標より900円近くオーバーしている。
 
これ以上何を減らせばよいのか?
 
改めて部屋を見渡してみる。部屋の片隅にある使っていない電源タップの光が見えた。スイッチのランプだ。ごくごくわずかな電力には違いない。でも、使っていないなら無駄だ。私はすぐにスイッチを切った。
 
他には? 改めて時間毎のグラフを見てみる。夕方、食事の支度の時間帯になると、電気の使用量が急に増えているのが分かる。照明をつけるし、換気扇も回すし、炊飯器やレンジなどを使うからだ。
 
カレーとか煮込み料理をする時なんかは、調理時間も長い。それなら、暗くなる夕方から調理をするのではなく、昼間の明るい内にやってしまったらどうだろう?
 
私は試しに午後3時頃から料理に取りかかってみた。明るいから照明をつけずに調理ができる。煮込み料理なら、調理を終えた後そのまま寝かしておくと味もしみてちょうどよい。
 
その日、夕方の電気使用量はいつもより減っていた。ほんの少しだけど効果があったようだ。暖房の設定温度も試しに2℃下げてみた。それでどれ位使用量が変わるか、グラフを見れば大体分かる。やってみて寒ければ元の設定温度に戻す。我慢するのは続かないから、無理はしない。
 
深夜遅くまでダラダラとスマホやテレビを見ていないで、今までより1時間早めに寝るようにしたら夜中の電気使用量はグッと減った。
 
毎日、使用量のグラフを見ながら過ごし、取るに足らないようなことでも節電になりそうなことをしていくと、目標より900円近くオーバーしていたのが、日を追う毎に減ってきた。800円になり、600円になり、集計期間まであと4日になったところで500円にまで減ってきていた。
 
もうやりつくしたと思っても、「まだできることはないか?」と考えていると、色々思いつくものである。入浴中も脱衣所の照明はつけたままだったけれど「消せるじゃん」と気がついたりした。
 
集計期間最終日の前日、予測料金は目標より180円オーバーになっていた。あと1日。大きな効果を出すために、暖房をできるだけ使わずに過ごしてみることにした。幸い天気は晴れて日の当たる部屋は暖かい。おかげで昼間は暖房を使わずにすんだ。日が傾き始めて少し寒くなる頃、夕食の支度に取りかかる。料理中はお湯や火を使うから暖房がなくても暖かいのだ。夕方から買い物に出かければ、暖房を使わずにすむ時間を少しだけ稼げる。チマチマしているけど、こうなったらもう意地だ。
 
そうして集計期間が終わった。WEBサービスを見ると、予測料金は「目標より120円節約できそう」に変わっていた。目標をクリアしたのだ。私は小さくガッツポーズをした。
 
何をどんな風に使っているのかを記録して見えるようにすることと、小さな目標をつくることって、「変化のきっかけ」になるものだなと思う。ダイエットでも時間術でも、記録の大切さを聞くことが多いけれども、自分のやっていることを記録して、それを俯瞰して見てみると、今まで見過ごしていたことに気づけるようになる。
 
それにしても、WEBサービスのグラフを見ながら、私はまんまと電力会社の手のひらの上で転がされたような気持ちがして苦笑いした。私は、工場では省エネの仕事をしてきたというのに、自分の家の省エネには全く無頓着だった。人前で省エネの大切さを訴えながら、「お前がよう言うわ」とひとりツッコミを入れていた私だが、ようやくこれで、ちょっぴり面目が立つ。
 
ちなみに、エラそうな感じになったついでにお知らせすると、この電気使用量の詳細を見ることができるWEBサービスは、電力会社各社が提供している。「中部電力 WEBサービス」のように、「契約している電力会社名、WEBサービス」で検索すれば、その電力会社のWEBサービスのサイトが表示される。会員登録すれば、自宅の電気使用量の実態を見ることができる。
 
スマートメーターに切り替わっているかどうかは、自宅の電力メーターを見れば分かる。ぐるぐる円盤が回っているタイプのものではなく、数字がデジタル表示されているものであれば、スマートメーターに切り替わっている。
 
国の計画によれば、スマートメーターは2024年度末までに全国の全世帯・全事業所に導入される予定で、2021年3月現在、全国の設置率は約85%である(出典: 経済産業省「電力データ活用による新たな付加価値創造」2021年9月)。
 
だから、「うちはまだスマートメーターになっていない」というお宅も、あと2年の内には切り替わる。
 
冬の時期は、電気の使用量が多くなる。おまけに、電気代も値上がりしている今、自宅の「省エネ大作戦」に取り組んでみませんか?
 
「電気代節約」という実利だけでなく、目標に向けてあれこれやってみることで、ささやかな達成感も味わえること間違いなしである。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
深谷百合子(READING LIFE編集部公認ライター)

愛知県出身。
国内及び海外電機メーカーで20年以上、技術者として勤務。2020年に独立後は、「専門的な内容を分かりやすく伝える」をモットーに、取材や執筆活動を行っている。現在WEB READING LIFEで「環境カウンセラーと行く! ものづくりの歴史と現場を訪ねる旅」を連載中。天狼院メディアグランプリ42nd Season、44th Season、49th Season総合優勝。

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2023-01-18 | Posted in 週刊READING LIFE vol.201

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