天狼院通信

3.11から始めよう《天狼院通信》


今から2年前、2011年当時、3月11日から春にかけて、民放各社はCM枠で、ACを流すようになりました。公共広告機構のCMが繰り返し繰り返し、それこそヘビーローテーションされていたことを、多くの方が覚えておられるかと思います。

 

そんな中、いち早く、通常のCMに切り替えた会社がありました。

その当時のやり取りを記した部分が、ある本にありますので、そのまま引用させて頂きます。

 

「ACって、ありゃなんだ?」

「このタイミングで企業CMを打つとバッシングを受ける可能性があるので、各社自主的にACへの切り替えを行なっています。わが社もそうです。自主返納ですので、放映料は企業が負担します」

手短に説明すると、彼はこう言った。

「今こういう時期だからこそ、CMをやるべきだと考えています。CMをつくってもいいでしょうか?」

聞くと、4月末から放送開始予定だった消臭力のCMはほぼできあがっているという。しかし、震災前につくったCMを、何事もなかったかのような顔をして流すわけにはいかない。だから、新しくCMをつくりたいというのだ。

とはいえ、商品を用意することもできないのが実情だ。CM製作には巨額の投資が必要なのに、そんなことをやってもいいのか……。一瞬、躊躇した。

しかし、これだけのことが起こったのだ。算盤玉はご破算にして、日本中を覆っている重苦しい空気を、ほんの少しでも明るくできればいいんじゃないか。

「空気をかえる」のが俺たちの仕事だ。

 

その時に流したCMこそが、ミゲルくんを起用した、消臭力のあのCMだったのです。

まさに、世の中の「空気をかえる」作品でした。

 

この決断をした人こそが、エステー株式会社会長鈴木喬さんでした。

先の引用文は、鈴木さんの初めての本『社長は少しバカがいい。』から引いたものです。

 

この本との出合いは、今年初め、この本が、まだ世の中に出る前の段階だったと思います。

手元に、本になっていない状態の原稿、いわゆる「ゲラ」があるということは、そうだったのでしょう。

 

「この本は、私が手がけた本の中でも、最高傑作です」

 

そう言ったのは、佐々木常夫さんの『そうか君は課長になったのか』『働く君に贈る25の言葉』、大山泰弘さんの『利他のすすめ』など、数多くの傑作を世に送り出している、WAVE出版のエース、田中泰さんでした。

 

頂いた原稿をめくり、のっけからやられました。

 

危機だ、危機だって、

もっともらしい理屈を並べて、

うるさく言う人もいる。

もっと歴史を勉強したほうがいいよ。

長い目で見れば、

いいときもあれば、悪いときもある。

悪いときのほうが多いんだ。

それが普通なんだ。

だから、いちいち騒ぐなよ。

ビクビクしたってしょうがない。

大将がニコニコして、平気な顔をしてたら、

たいていはうまくいく。

 

「鈴木喬」という署名とともに掲載された、写真の笑顔がいい。とてつもなくいい。瞬間に魅了されてしまうほどにいい。

 

僕は、内容を最後まで読む前に、もう、実はCORE1000プロジェクトとして、この話を受けるかどうか、決めていました。

 

もちろん、受ける、と。

 

実は、本の良し悪しとは、じっくりと悩むべくもなく、瞬間的にわかるものです。その本と出合って3秒して良さが分からなかったとしたら、もっといえば、何か感得するものがなければ、かなり高い確率で、その本とは相性が悪いということになります。

このとき、僕はこの本に、そして、この著者に、瞬間的に魅了されてしまっていました。

読んでから、結論を出すというのは、社交辞令の反対的な意味でしかありませんでした。

更に、僕の頭のなかではシナリオは進んでいました。

 

この本、あれにいいんじゃないだろうか。

 

その時、僕の念頭にあったのは、今年1月の仙台の盛会でした。

仙台を中心とした東北の書店人、出版人が100名以上集まっていました。中央からも大勢、その日、仙台の会場に詰めかけました。

音に聞く仙台書店人会の新年会とは、いったい、どういうものか。

一緒に言った、著者の岩松先生はこう仰ってました。

 

「仙台で新年会があるって聞いで来てみだっけ、こんなんなってだもん、もう私、びっくりしましたよ!」

 

その会で、ブックスみやぎの柴さんのとりなしで、僕が壇上で挨拶させてもらうことになったのですが、その時、僕はこう言ったのでした。

 

「僕は仙台からベストセラーを出したいと思っています。仙台から火をつけて全国に飛び火して、大きく盛り上げることができればと思います。そのために、いい本を持ってきますので、その際はどうぞご協力お願いします」

 

会の中で、様々な書店人の方に会う中で、「仙台からベストセラー」という言葉に、皆興味を持たれているようでした。

ただし、そのとき担当していたのは、『がんワクチン治療革命』で、これは名著には違いないが、扱っている問題が、生死にかかわることなので、おいそれと山積みにして売り出すわけにもいきませんでした。それに、仙台からベストセラーを出すのなら、仙台の役に立てる本がいいと思っていました。

 

この本に出合った瞬間に、その時の光景が蘇ったのは、この本が、きっと仙台や東北のためになるだろうという直感があったからだろうと思います。

 

そして、「仙台からベストセラーを出しましょう」という思いに、WAVE出版さんが答えてくれました。

まずは先月末から仙台入りして、仙台の書店さんを回って「前に言っていた通り、仙台からベストセラーを出したいので、協力してほしい」と説いて歩きました。すると、思った以上に注文が集まりました。

 

ジュンク堂書店さん、丸善アエル店さん、TSUTAYA仙台駅前店さん、ブックスみやぎさん、そして、ヤマト屋書店全店に、八文字屋書店さん。

 

皆、「これは仙台や東北のためになる本だ」という僕の話に、真剣に耳をかたむけ、このプロジェクトに乗ってくれました。

 

そして、この仙台書店人の皆様の想いに、WAVE出版さんもすぐに応えてくれました。

 

宮城の主力紙である、『河北新報』に、大きな広告を出稿してくれることになったのです。

 

3.11、あの日からちょうど2年。

 

たしかに、誰にとっても凄惨な記憶であり、大切な方を失った方にしてみれば、あの日から、世界が変わってしまっただろうと思います。

けれども、いつまでも、下を向いているわけにはいきません。

 

「復興」ではなく、ここから新しいものを「創造」して行こうと考えてもいいのではないでしょうか。

 

故郷の宮城のために、僕は何ができるか、いろいろ考えましたが、やはり、僕には本を売ることしかできないのだと思い至りました。本を売る手助けをすることしかできないのだと。

 

僕は本は、未来を創るものだと、信じています。

 

そして、この本には、未来を創る可能性が込められている。

 

ただ1冊の本を売る、ということ以上に、今回のプロジェクトには意義があると考えております。

仙台からベストセラーを作りたいという想いは、一丸となれば、大きな熱量になるだろうと思います。

その熱量は、必ずや、お客様に伝わるだろうと信じております。

 

そうして、この本を手にとった方々が、何かのきっかけを得られるのならば、このプロジェクトは大成功だと思います。

そうして、この本を売った仙台の書店人の皆様が、ベストセラーにしたことの充実感をかみしめ、喜びを知り、また次なるプロジェクトでいい本を仙台や東北の皆様に熱意を持って届けることができれば、きっと東北の未来は変わるだろうと思います。

 

3.11から、はじめよう。

 

その想いがあれば、もはや、意識上の被災地は被災地ではなくなり、そこから前向きな前進が始まるのではないでしょうか。

 

まずは、この1冊から始めましょう。

 

皆様、どうぞ、ご協力、よろしくお願いします。

 

 


2013-03-11 | Posted in 天狼院通信, 記事

関連記事