原点回帰《天狼院通信》
六本木TSUTAYAに併設されているスタバは、一時、毎週のように通っていました。
しかも、いつも7:30。
久しぶりに来ると、ちょっと懐かしくも思います。
結局はかたちにならなかったのですが、当時は、秘密プロジェクトを進めていて、それに関して、面白いメンバーが集まって、いろいろ出版界について、本について、語っていました。
実は、あのときに話したことが、のちに「CORE1000」になったり、様々な本になったりしました。
今、大活躍している編集者も、また大手版元に移った営業マンも、六本木に集まっていました。
今日、その現場、六本木けやき坂スタバにあって、僕は往時を思い起こしながら、と言っても、まだ1,2年くらいしか立っていませんが、でもまあ、思い起こしながら、とある先生が現れるのを待っておりました。
現れたのは、慶應大学のジョン・キム先生。
ダイヤモンド社から去年出版された『媚びない人生』で、一躍ベストセラー作家になった先生は、当時と変わらず、爽やかでした。
4月に出る新刊のプルーフを手渡したいということで、久しぶりにここにやってきたのでした。
新刊の話のあと、当然のように天狼院書店の話になりました。
思えば、一年ちょっと前、2012年の1月4日に、「三浦書店、立ち上げようと思います」とブログで宣言したのが、そもそもの始まりだったのですが、その少し前、この場所で、「自分の書店を作ろうと思うんです」とキム先生にも相談していたのでした。
そのとき、ちょっと興奮気味で、キム先生が応援してくれたことを覚えております。
それで、今日、どういう書店にしたいかということを、ああいう可能性もある、こういう風にもしたい、とキム先生に話すと、キム先生の表情はかげり、こう言いました。
「三浦さんが、ぶれるのが心配です」
本質的なことを一瞬にして見抜く、類まれなる能力を持ったキム先生の言葉に、僕は思い当たることがありました。そして、最近、確かに根底に芽生えていた、迷いがすっと消えてなくなるのが、わかりました。
そのあとキム先生が僕にこうすればいいと言ったことは、僕にとって企業秘密にも当たる部分もあるので、詳細は書きませんが、それはまさに1年ほど前に、自分の書店をやりたいと思った時に言っていたことでした。
僕は元々、「ビジネス書の専門店をやりたい」と言っていたのです。
しかし、それを「広義の意味での」という言葉を付加することによって、「ビジネス書」の境界を最近では無限に広げられる余地を残そうとしておりました。
それでは、天狼院の特長が消えてなくなってしまう。
もちろん、たとえば『海賊とよばれた男』を「広義のビジネス書」として天狼院で大きく展開したり、ビジネスマンのために英語が必要だということになれば、英語の棚を充実させることは必要なことです。
しかし、やはり、「ビジネス書が中心」という軸がぶれてはいけない。
もっと言えば、「前向きに自分の理想に向かっている人」のための書店でなければならない。本気で理想を実現しようと想い、そのために成長しようとしている人の拠り所となる書店となりたい。
そう、始めから考えていたのでした。
もちろん、今も、その想いは変わっていなかったのですが、キム先生が感じたように、確かに僕はぶれていたところがありました。
僕にしかできないことをやるから天狼院であって、他の書店ができることをやってしまえば、単なるちょっと発信力のある小さな書店ということになってします。
もしかして、オープンしたときはそれでもちょっとは話題になって、お客さんは来てくれるかもしれませんが、軸がぶれてしまっている書店からは、時を待たずに、お客さんはすっと引いていってしまうことでしょう。
自分の得意なところ、自分にしかできないことの、深度を深めていく。
まず取るべき戦略は、それしかない。
もっとも、新たな可能性を模索することは当然必要でしょうし、天狼院では常に新しい可能性を探っていくことでしょう。けれども、やはり、そのためにも、拠るべき場所、ぶれない軸がなければならない。
軸さえしっかりすれば、もし、何かで失敗したとしても動揺することなく、原点に戻ることができるからです。
「何か、すっとわだかまりがなくなりました」
そう、キム先生に言いました。
可能性を広げるだけでなく、「やらないことを決める」ことも、重要なことなのだと改めて思いました。
キム先生の新刊『時間に支配されない人生(仮)』は、4月12日発売です。
この本の装丁を担当するのは、これまた実にスペシャルで、しかも天狼院のアートディレクション担当のコンシリエーレでもある「あの方」なので、本当に楽しみです!
店頭に並ぶのが楽しみですね。まずは、僕も読ませて頂きます。
キム先生、大きな気付きをありがとうございました。いや、やはり、さすがです笑。