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チーム天狼院

【世にも恐ろしい女子ヒエラルキー④恋愛編】「少なくとも28には結婚してたいとするでしょ?」就活が終わった途端に人生を逆算で考え出す女たちのナゾ《川代ノート》


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月島雫は、あのあとちゃんと小説家になれたのだろうか? イタリアに修行に行った聖司くんと再会して、お互い夢を叶えて結婚したのだろうか? 杉村はなんだかんだちゃんとしたいい会社にでも就職してそうだ。電機メーカーの営業とかやってそうだな。野球部で鍛えられたから体力もあるし、案外大人になってみたら、文化系の聖司くんよりもエリートサラリーマンになる可能性は高そうだ。夕子はちゃんと健気に杉村を支え続けて、印刷会社の事務とかを一、二年やったら寿退社して、ご近所のママ友同士のバトルに悩みながらも、あたたかな家庭を作りそう。そういう夕子を見て雫はどう感じるだろう? 不安定で叶うかわからない、叶ったとしても儲かるかわからないバイオリン職人という夢を追いかけている彼氏と、思っていたよりも優良物件だった杉村を比べて落ち込んだりするのかな。あーやっぱり告白された時断らなければよかったとか思うのかな。あの頃の私ならどっちでも選べたのにとか思うんだろうか。きっと思うだろうな。どんなに仲のいい友達同士だとしても嫉妬はする。普通のことだ。そういうもやもやした感情を抱えたまま、十四とか十五の頃ほど純粋に夢を語ることが許されない歳になった時、雫はそれでも夢を追い続けられるのだろうか? いつか叶うなんて、保証もない夢を。

女は歳をとればとるほど、しがらみが増える。ジブリの超名作「耳をすませば」で意地汚い妄想をするくらいには、しがらみが増える。
なんて、たかが二十二の女になんて言われたくないだろうけど、本当にそうなんだもん、だって。逆に言えば、二十二ですらしがらみの多さを実感しているんだから、これから三十代になって、結婚適齢期になり、出産適齢期になり……と歳をとるだけで勝手に増え続けるハードルを、いつまで乗り越え続けなければならないのだろうかと、不安でたまらないんだもん。

「就活が終わると女は変わる」

そう男の先輩が言っていた時、私は大学二年でまだまだ余裕こいていた。女はね、怖いよ、急に変わるんだよ、本当に。シビアになるんだよ、俺もう女を信用できねーよ。神妙な顔をして言う彼の言葉をフーンそんなもんかねえと他人事みたいに聞いていたわけだが、まさに就活後、私と同年代の女子たちの会話がガラリと変わる瞬間を私は目の当たりにしたのである。
就活する前の女子会での会話なんて、だいたいこんなもんだった。

「あー、彼氏ほしーい」
「どうしたの、この前いい感じって言ってたサークルの先輩は」
「あー、なんか割り勘細かいからやめたー」
「えーなんでよ、いいじゃん割り勘くらい」
「だってさあ、先輩だよ? 先輩なんだからおごってくれてもいいと思うくらいなのに、一円単位まで割り勘ってちょっとないでしょ!」
「え! 一円単位はないわ! それはその男がちっさすぎ」
「でしょ! だからもういいのー。それに今は彼氏とかいいかなー。なんか遊びたい気分だし」

いい感じになっている男の子とキャッキャウフフと楽しく恋愛していた。なんのしがらみもなく。ただ恋愛って楽しー、モテるって楽しー、たくさん遊びたい。そんな感覚で。
しかし、就活後はこうだ。

「だってさ、だってさ、考えてみ? もーあたしたち二十二じゃん? 三十代になると一気に出産のリスクは高まるっていうから、二十代のうちに一人は産んでおきたいよね。とすると余裕を持って二十八には妊娠していたいでしょ。でも結婚してからすぐに妊娠だと新婚気分も味わえないし、女じゃなくなりそうだから、夫婦二人でいる期間も一年はほしいわけよ。その計算だと遅くても二十七には結婚したいじゃん? でもちゃんと相手が結婚相手にふさわしいかどうか吟味の時間も必要だから、交際期間は二年ほしい。そしたら何歳? 待ってやばい計算できない。二十五? 二十五には運命の人と出会ってなきゃいけないわけ? 早! やば! あと三年しかないよ! 遊びたいとか言ってる場合じゃないよ!」キャー、コンカツ、コンカツ! 飲んでいるのはハイビスカスがのっかっているかわいいカクテルでも、声のトーンは甲高くても、話している内容は結構シビアで現実的である。

そういうわけで、就活を終えた女は逆算が好きだ。就活をし、自分の将来を見つめ直し、現実的に人間一人が生きて行くのにどれくらいのお金がかかるか、ということをしっかりと理解した女はライフプラニングを難なくこなすことができるようになっている。自己分析をし、自分が今までどんな人生を送ってきて、どんな性格になって、どんな経験があったから今があるとか、どんなことをした時に幸せを感じるかとか。そういう面倒なことを細かく分析して行って、自分がこれからどうやって生きて行くかを考えるのが好きな女は意外と多い。行き当たりばったりではなく、何歳で子供を産んで、何歳でどれくらいの収入を得ていて、何歳で子供が大学に入学するからこれまでにいくら貯金して……と、実現するかわからなくても、想像を巡らすのだ。
そういう訓練を就活のなかでしていると、就活を終えた頃には勝手に逆算して行動を決めるという癖がついてしまっているのだ。とくに女子は、福利厚生や産休システムはどうかとか職場復帰はどうかとかいろいろ調べることによって、女の体にはタイムリミットがあることを自覚する。出産年齢には限界があり、もし子供がほしいなら他に何を妥協するかを決めなければならない。これまで勉強を一生懸命頑張ってきて、仕事もバリバリやりたいと考えている女子はとくに、自分の生き方というものを考え直したくなるのだろう。

まあそういうわけで先輩の言っていた「就活が終わると女は変わる」という証言は間違いじゃなく、たしかにそれまでふらふらしてイケメンなら何でもいいといろんな男と遊んだりしていた女の子も、突然スペックで男を見るようになったりする。大学生の頃は全然単位もとってない、いわゆる「だめんず」に夢中だったのに、卒業間際になって「え、別れた。だって〜将来性ないし」とあっさり別れていた子もいた。就活にきちんと向き合ってきたような女子たちはなまじ優秀なせいで、自分よりスペックが低かったり仕事ができなかったりする男はバッサリ切り捨てるようになってしまう。

「うへえ、やっぱり女ってこえーな」

この話をするとたいていの男はそう言って顔をしかめるけれど、私は怖いともなんとも思わない。男だって就活が終わったら突然ビジネスの話し出すでしょ。一年前まではワンチャンある? ワンチャンあるでーマジで! とか意味不明なこと言ってゲラゲラ笑ってたくせに「俺的にはね、どうコミットするかってのが重要なわけよ」「それってエビデンスとってあんの?」「ごめん予定入ったからリスケ頼むわ」って突然やたらビジネス用語使い始めるでしょ? あれと同じです! 言っとくけどね、別に女は就活によってシビアになるわけじゃないから! 女はもともとシビアな生き物だし現金だしスペック大好きだからね。就活を乗り越えたことによってそれを表に出しやすくなっただけだから。みんなポテンシャルはあんのよ。
とは現実の男友達には言えないけども。夢を壊しちゃかわいそうだからね。まーでも仕方ないんですよ。メスには自分の子供を産んで無事に育てて子孫を残すっていう使命が本能的に備わっているんだから、自分と子供が無事に暮らせる確率が高い止まり木を必死で探さなきゃいけないの。
たぶん雫だって、一緒に支え合いながら夢を追いかけ続けたい、という気持ちもありながら、ほんのちょっとは「イケメンでバイオリンが弾けてプロポーズしてくれたボーイフレンド持ち」という優越感に酔っていたはずよ、きっと。え? それこそ夢を壊すなって? ジブリの世界観を崩壊させるなって? 何をおっしゃいますやら、そういう汚い感情もあるのが人間ってもんでしょう。嫉妬とか焦りとか自意識とか、いろいろなものを抱えて、自暴自棄になったりもして、そういう感情を自覚した雫ならきっと、すばらしい小説家になったんじゃないかしらね。(何様?)

つづき(小悪魔になりたかったあの頃)は、12月16日夜9時公開!

前回セックス経験を男の前では少なく、女の前では多く言ってしまうのはなぜなのか?

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