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チーム天狼院

頑張ることがダサいというコスパ重視の時代に生まれて《川代ノート》


最近、スタッフの子達が忙しそうだ。就活をしているのだという。
天狼院書店には現在、東京だけで20人近くのスタッフがいるが、そのうち半分以上はアルバイトスタッフの大学生達である。そして偶然なのかどうかわからないけれど、そのうちの多くが就活生である。

思えば、私が就活をしてからもう5年近く経つのか。なんだか泣きそうな気分になってしまった。時の流れが怖い。社会人になってからはあっという間だよ、と聞かされてはいたものの、まさかこれほどまでに一瞬だとは思わなかった。つい最近まで22歳だと思っていたのに、もう25歳。「25歳〜30歳はさらにその倍の速度ですぎる」と先日聞かされた。きっとその通りなんだろうと覚悟している。

今就活をしながら天狼院に通ってきている子達は、優秀な子ばかりである。文章を書かせれば丁寧でわかりやすいし、ライティング・ゼミで教えたことをあっという間に吸収していく。とても素直だし、そして、器用だ。

そう、彼女たちを見ていて、器用だな、と本当によく思う。私が大学生だった頃と大違いだ。私はもうすべてを散らかしながらバタバタと大慌てで生きているような超不器用人間なので、若干20歳とかそこらなのに、なんでもうまくこなせる彼女たちは本当に優秀だと思うし、純粋に、すごいな、と思う。きっと私なんかよりもずっと、社会の役に立てる大人になるんだろうな、と。

けれども、彼女たちを見ていて、なんだかときたまふと、違和感というか、何かひっかかりのようなものを感じることがある。それは彼女たちだけを見ているときだけではない。ついこの間、たまたまカフェで隣になった大学生を見たときも、そう思った。

この間、休みの日にスタバで文章を書いていたとき、隣の席の子達は、おそらく大学生だった。若い男の子二人で、どうやらテスト勉強をしているらしい。お互いに自分のノートを持ち寄って、おしゃべりをしながら勉強をしていた。そういやこないださあ、とか、あいつってマジ意味わかんねーよな、とか、サークルだかなんだかの噂話をしながら勉強をしていた。そんなにしゃべってたら勉強しにきた意味ねーだろ、と内心心の中でツッコミを入れながら二人の話を聞いていた。私も集中して文章が書きたかったのだが、彼らの会話がつい耳の中に入ってきてしまっていた。

「あっ、そういえばお前、俺がこの間A(一番いい成績)とったときの勉強のやり方知りたい?」と、よりうるさい方の男の子が言った。黒縁のメガネをかけていて、ワックスで頭を流行りの形に整えていた。おしゃれになろうとしてイマイチなりきれていない、いかにも「大学生デビューしたばかり」といった感じがちょっと微笑ましかった。

もう一人の男の子は、普通に勉強をしたくてスタバにきているようで、黒縁メガネくんが色々と話しかけても適当に「へえ」とか「ふうん」とか「あーね」とか言ってごまかしていたのだが、その勉強方法については「何それ?」とちょっと興味を示したようだった。

「あのね、この覚えたい項目の目次作るんだよ。要素を引っ張ってきて、本みたいに目次にすると覚えられる」

「Aなんて誰だって頑張ればとれるよ。どうせ大した勉強方法じゃないっしょ?」と私はイライラしていて内心で悪態をついていたのだが、彼が言っていた勉強方法が思いのほかちゃんとしていて、少し驚いてしまった。たしかに、目次を作るというのは有効かもしれない。もしかしたらみんながやっている方法なのかもしれないけれど、効率が良いやり方だと思った。要素を引っ張ってきて分類して理解することもできるし、覚えやすそうだ。前後関係もうまく整理されるので、とんちんかんな答えをしてしまうこともないだろう。

いかにも「ドヤァ」という感じで得意げに話していたのが癪ではあったが、それでも彼が言っていることはたしかに的を得ていた。もう一人の方も「なるほどね」と頷いて質問をしていた。とはいえ、その後も二人は雑談を終わらせることはなく、結局たいして勉強もしないままスタバを出て行った。
黒縁メガネくんは自分の勉強法を教えることができて満足そうだった。

残された私は、本当は文章を書きたかったのだけれど、しばらく彼ら二人のことを考えて、ぼんやりしてしまった。

なんだろう、あれ。

あー、私が大学生のときもいたいた、ああいうちょっとプライド高めの男の子、と思う一方で、なんかひっかかるな、と思うこともあった。そしてそのひっかかりはおそらく、天狼院にきているスタッフの子達を見ていて思うことと同じだった。

器用で、頭がいい。
そして、効率がいい。
最短ルートで、目的を達成できる方向へ向かう。

そんな感じ。
「こいつらはダメだ」と言われる「ゆとり世代」の次、いわゆる「さとり世代」という子達の特徴なのだろうか、と思った。

さとり世代とは、一般的に「欲がない」と言われているという。野心がなく、上を目指したいという気持ちが薄く、コスパ重視、無駄だと思うことにはお金も時間も使わない、というのが特徴らしい。

なるほど、と思った。たしかに効率重視な感はある。だから頭がよく、器用なのかもしれないと思った。何事もそつなくこなす。丁寧。素直。

別に何も問題なんかないはずなのにな、と私は思った。そうだ。別に自分より年下の子達がさとり世代であることによる弊害なんて一つもない。すごいなあと感心するばかりだ。なのに何が引っかかっているのだろうか。ゆとり世代どんぴしゃの1992年生まれである自分が嫌なのだろうか。コンプレックスを感じているのだろうか。もっとやる気を見せろよとか思っているのだろうか、内心で。コスパじゃなくて精神論?
いや、でも、それは違う気がした。別にやる気が足りん! とかは思っていない。かといって彼らに劣等感を覚えているわけでもない。でも、何か、なんだか。

限定されてる、と思った。
自分のポテンシャルの閾値を、自分自身で決めてるんじゃなくて、社会によって決められてる、って感じ。

あ、と自分の中で、腑に落ちた。そうだ。それだ。

なんか、今の時代って、頑張るのダサい、っていう空気の中で生きなきゃいけない気がする。
無駄は極力省いて、効率よく生きれるのがかっこいい、みたいな。

それってなんか、キモいな、と純粋に思った。

自分はもうある程度自分のやりたいこととか、目標とか決まってるからそんなに気にすることは少なくなってきたけど、きっと大学生の子達は、周りの空気にすごく影響されるんだろうな、と思った。そして、今の大学生の間にただよう空気は、もしかしたら、結構「頑張りにくい」空気なのかもしれない。

あのスタバの子達を思い出した。黒縁メガネくんの口からも、ちょこちょここんな言葉が口から出ていた。

「こんなん要所を押さえておけばすぐわかる」
「重要なのはやり方だよね」
「ってかあんな授業とって何になるのかなー」

いや、わかる。私も自分が大学生の頃は、勉強するのがあまりにめんどくさくて適当な愚痴をあれこれこぼしてストレスを発散していた。けれどもそれにしても、何か、すごく頑張りづらい空気が、最近漂っているような気がした。

自分の全力を出すのがカッコ悪い。
何か一つに向かって全パワーを注ぎ込んで、それで失敗したら取り返しつかないし、リカバリーするのに時間がかかる。
目標達成するために、もっとも効率の良い方法でやったほうがいいに決まってる。

いや、わかる。わかるよ。本当にわかる。その通りだ。何も間違ってない。むしろ、それは私がすごく見習わなければいけないところだ。私はとても不器用で、「効率良く」「生産性の高い方法で」物事に取り組む、ということがとても苦手なのだ。すべてのものに全力を注ごうとして、他がおそろかになって、ということが昔からある。子供の頃からある。一つのことに夢中になると周りが見えなくなるタイプなのだ。だから、最近はかなり生産性を意識するようにはなったのだけれど。

それなので、今の「さとり世代」の子達が、若いうちから生産性やコスパを意識しながら生活しているのは、とてもすごいことだな、本当に頭がいいのだな、と心から尊敬するのだ。それは事実であり、本心だ。だけど。わかるけど。そうなんだけど。

だけど、めちゃくちゃコスパの悪い生き方を思いっきりできるのって、今だけだぞ、と思ってしまうのも、本心なのだ。

社会人になると、当たり前だけれど、生産性が重視される。少ない時間で、少ない労力で結果を出す事が求められる。いかに利益を生み出せるかを考えて、どうすれば役に立てるかを考えながら行動しなければならない。それは当然だ。だって社会人なんだから。

だから、その社会人になる前の準備期間として、コスパの良い生き方の練習をしておくのは良いと思う。その時間の使い方こそが、コスパがいいな、と思う。とても有意義だと思う。

でも、本当にそれでいいの、と思ってしまうのは、私のコンプレックスの裏返しなのだろうか。
たかだか4歳とか5歳程度しか変わらないので、別に「大人」としての意見を主張したい気持ちなんてさらさらないけれど、でも、彼らよりも少しだけ早く社会を経験している人間として、思うのは。

もっと、ダサくなってもいいんじゃないかなあ。
もっと、無駄なことを好きなだけやれるように、意識しても良いんじゃないかなあ。

たとえば、一日中ゲームばっかりしてテストすっぽかすとか、朝までオールしてそのまま雀荘行くとか、親に平謝りしてお金借りてデートしに行く、とか、逆に、サークルに全エネルギーを注ぎすぎて留年しちゃう、とか、自分探しの旅に出て日本一周したけど結局何も変わらなかった、とか。
そういう、「本気でクソだな自分」って思いっきり思える期間って、大学生のうちしかないのに、と思ってしまうのだ。

ブラック企業の問題とか、働き方改革とか、不倫とか、介護とか、独居老人とか、耳に入ってくるネガティブな情報があまりに多いせいで、社会から提示された「正解」という枠組みの中でしか、物事を選択できない人間になっているように見えてしまうのだ。

人からこう言われるんじゃないか。社会からこう見られるんじゃないか。すごい人って思われたい。人から認められたい。
私も大学生の頃は、いかに「すごい」と言ってもらえるかということを中心に物事を判断しているところがあったけれど、なんだかもはや、そんな風に「意識高い系」になることすらかっこ悪くて、ダサくて、プライドを持つことすらも怖い、という思考回路に自分でも気がつかないうちになってしまっているような気がする。

がむしゃらに、自分を見失うほど、周りの何もかも見えなくなるくらい頑張る、とか、逆に思う存分ダメ人間になるとか、そういうことが、やりづらい時代だなあ、と思う。とても。

社会すべてに、監視されてるみたいな感じ。誰かはわからない何かが、「世間」の目が、じろじろと自分を見ている。
学校に、バイト先に、サークルに、オンラインに、自分を「正解」か「不正解」かを判断する目は溢れていて、そいつらに対抗するよりも、従ったほうが結果的に楽に思える。

別に、正解なんてないのに、と思う。
絶対的に正しいことなんて、この世のどこにも存在しないのに。

社会が求める「正解」なんて、時代によって、人によって、いくらでも変わる。1日でひっくり返る可能性だってある。もしかしたら明日には、不倫が正しい事だと言われるようになるかもしれない。
重要なのは、「正しいか」「正しくないか」ではない。自分が何を「好きだ」と感じ、何を「嫌いだ」と思うかだ。

「何が正しいか」ではかるものさしなんて、自分が本気で「好きだ」と思うものへの情熱に比べたら、自分が強烈に「これは嫌だな」と思うものへの恐怖に比べたら、何の当てにもならない。
「こういう人間になりたい」とか、「こういう行動をとる人間は嫌いだ」とか、「人として恥ずかしいことはしない」とか。
そういう、自分だけの哲学を思いっきり集中して作れるのは、大学生だからこそなのに。

自分を全力で試して、何が本気で好きで、何が本気で嫌いなのかをちゃんと探る事ができる機会なんて、今しかないぞ、と思う。

自分のことだけ考えてればいい大学生時代なんて一瞬で終わって、社会人になり、家族を持つようになると、他人のために生きなければならなくなる。
「自分」に対して本気になれるのは、今だけだ。

まだたかだか25歳の、社会人としてはぺーぺーの人間が、それでももし偉そうに説教することが許されるのならば。
 

 

ねえ、もっと、クソ人間になってもいいんだよ。

バカでもいい。ダメでもいい。死にたくなるくらいのクズでも、もちろんいい。

自分の本当の閾値を決める事ができるのは、自分しかいないのだ。

最低最悪な自分の底を決めるのも、自分がどこまでいけるのかを決めるのも、社会じゃない。世間じゃない。自分だけだ。

 

ねえ、大人なんかに、振り回されんなよ。
社会なんかに、自分の価値を決めさせるなよ。

もっと好き勝手に、自分勝手に、わがままに、自己中心的に生きろ、バカー!!!

 

 

あれ、なんだ、もしかして精神論か、これって。

言ってること、矛盾してる。
すいません、アホで。
 

 

 

 

 

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*この記事は、人生を変える「ライティング・ゼミ《平日コース》」フィードバック担当でもあるライターの川代が書いたものです。
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❏ライタープロフィール
川代紗生(Kawashiro Saki)
東京都生まれ。早稲田大学卒。
天狼院書店 池袋駅前店店長。ライター。雑誌『READING LIFE』副編集長。WEB記事「国際教養学部という階級社会で生きるということ」をはじめ、大学時代からWEB天狼院書店で連載中のブログ「川代ノート」が人気を得る。天狼院書店スタッフとして働く傍ら、ブックライター・WEBライターとしても活動中。
メディア出演:雑誌『Hanako』/雑誌『日経おとなのOFF』/2017年1月、福岡天狼院店長時代にNHK Eテレ『人生デザインU-29』に、「書店店長・ライター」の主人公として出演。
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2018-01-20 | Posted in チーム天狼院, 川代ノート, 記事

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