チーム天狼院

「努力」という名のファンタジー《川代ノート/クリエイティブ・インターン募集中!》


「そんなの、簡単だよ」が口癖の人と、よく一緒にいる。
私の上司、三浦さんである。あるいは、天狼院によくいらっしゃるお客様は、聞いたことがあるかもしれない。

三浦さんがあまりに「簡単です」「すっごい簡単」「簡単だから大丈夫だよ!」と言いまくるので、私は最近、こうお願いすることにしている。

「三浦さん、お願いですから、すぐに『簡単』とか言うのやめてください」

私は本気でお願いをしているのに、当の本人は、どうもぴんときていないようである。

「え? なんで?」ときょとんとした顔で見返されることもあるし、「わかった、じゃあやめるかー」と適当に返事していたと思ったら、翌日にはすっかり忘れて「簡単だよ」とまた繰り返している。もう、勘弁してほしい。

あなたがしきりに「簡単」と言ってしまうと、困る人間がいるのだから、ちゃんと説明して、と本気で思っている。
私がなぜそこまで心配しているのかというと、最近クリエイティブ・インターンの大量募集を開始したからだ。

天狼院書店は今相当な人手不足で、やりたいコンテンツは山ほどあるのに、それを処理する工数がまるで足りないという状況になっている。ネタはあるのに書くスピードが追いつかないみたいな、そんな感じ。

だから、本の編集や本屋、ライティングに限らず、映画、カメラ、演劇、ライブ、イベント、デザイン、アートなどなど、クリエイティブに関わる仕事をしたい学生の子たちに色々と手伝ってもらいたいと思っているのだけれど、先日こんなことがあった。

たまたま、小説を書くことに興味があるという学生さんがお店にいらしたので、クリエイティブ・インターンについて説明していると、三浦さんは、ためらうことなくこう言ってのけたのである。

「小説家になりたいの? あ、そんなの簡単だよ」

ほら出た、と私は思った。学生さんはといえば、えっ、そうなんですか!? と驚いたようにこちらを見ていた。

私は慌てて訂正した。

「いや、違うんだよ。三浦さんの言う簡単は普通の人の簡単じゃないから」

「そんなことないよ、簡単だよ! 僕だって小説家になれたし」

私がせっかくそう言っているのに、三浦さんはなおも「簡単」だと言い張る。
もう、困ったものだと思った。まあ、慣れたことではあるけれど。

たしかに、三浦さんにとっては「簡単」かもしれない。事実、彼は『殺し屋のマーケティング』(ポプラ社)を発売した。しかも重版になった。

それのどこが、簡単だ、と言うのだろう。
どのあたりが、簡単だと。そう思っているのだろう。

いい加減、本当のことをきちんと説明するようにしないと、本当に困るのだ。

なぜそこまで強く、そう思うのか?

なぜなら、私みたいな過ちを、これから入ってくる子たちがしてしまうのを見続けるのは、ちょっと耐えられそうにないからだ。胸が痛むからだ。昔の自分を見ているようで、放っておけないからだ。

今だから言えることだけれど、かつて、私が天狼院に入ったばかで大学生だった頃、こんな大人になりたいなと思った。自分が目指すべき大人像は、この人なんだ、と。三浦さんなんだと思った。クリエイティブな仕事をしていて、ビジネスもアートも、マルチに活躍できていて。こぢんまりとした小さな個性派書店で尖った企画をたくさんやっていて。自分の好きなことだけを仕事にしている、それこそが自分の理想の人生だと思ったし、そうやって生きていけるならどんなにいいだろうと思った。

三浦さんはいつ会っても楽しそうだった。
ピンチになっても、月末になっても、忙しくて寝ていなくても、それでも楽しそうだった。「やることなすことが面白くて仕方がない」「自分の身の回りに起こること全てに興味がわく」と思っていることが、滲み出ていた。きっとこうやってやりたいことだけをやっていく人生が最高なんだろう、と思った。

それに、その頃から、三浦さんは言っていたのだ。

「そんなの、簡単だよ」と。
やりたいことを達成するのなんて簡単。夢を叶えるのなんて簡単。自分のやりたいことだけを仕事にするのなんて、超簡単。シンプルなことだ。

そう言っていたから、私はそれを真に受けて三浦さんの簡単を、自分の簡単に当てはめてしまっていたのだ。

だから、大学生の頃は、そんなかっこいい大人である三浦さんがいる職場でインターンしていることが誇らしかったし、私もいつかそんな大人になるためにまた天狼院に戻ってこようと思った。

で、戻ってきたら。

社員として戻ってきて、戦場の最前線で働くようになって、自分の身にもリアルにピンチがやってくるようになって、そして気がついた。
三浦さんが見せていた「楽しい」姿は、三浦さんのほんの1%程度でしかなかったんだ、と。

「仕事が面白くて仕方がない」「楽しい」と言うことができるのは、その裏で、99%の血反吐を吐くような努力が隠れているからだと、自分がビジネスという戦場に立ってみてからやっとわかったのだ。

自分が絶対に納得出来るような面白いものを提供するコンテンツを考えるのに、頭が沸騰しそうになるくらい考えて考えて考えて、それでようやく形になっているだなんて、大学生の頃は、思いもしなかった。

いや、私だってまだ入社して2年だから、その片鱗がちょっと掴めてきた程度のものだと思うし、私が知らない苦労もたくさんあるんだろうけど、それでも最近やっとわかってきたのは、自分が考えていた「本気」とは比べものにならないくらい、三浦さんの「本気」は「本気」だったということだ。

私は自分も適当に仕事をして、そりゃあ、苦労とかも色々あるだろうけど、普通に生活していれば自分も面白い企画を思いつける大人になれるだろうと思っていたし、文章を書くことだって、三浦さんにも言われたように、大人に近づいていったら勝手に努力できるようになるだろうと思っていた。だから、なんの根拠もなく「自分は大丈夫」「努力できる」「好きなことをやるための努力なんだから、絶対嫌になったりしない」と信じきっていた。

だから、三浦さんが努力しているんだろうなとなんとなく想像はついたものの、その努力がどんなものなのか、どんな密度で、どんな量でされているものなのかが、実感として理解することができなかったのだ。

三浦さんが言う「そんなの簡単だよ」という言葉の前には「ただし、誰よりも努力さえすればね」という但し書きが必ずついている。そう、簡単なのだ。やりさえすれば、結果は出る。努力さえすれば、自分の未来につながる。

けれども、わからないのだ。想像ができないのだ。

そう、「努力」とは、本気で努力したことがない人にとっては、ただのファンタジーにすぎないのだ。

あくまでも想像上のものであって、「これくらいやるんだろう」とある程度イメージはできるけれど、それを実際に行動にうつすとき、どれくらい苦しくて、どれくらい心臓が痛くなって、何度泣きながら逃げ出したくなるのかが、わからない。「努力」の値が足りていないのだ。

事実、大学生の頃の私も、これまでにしてきた「努力」のマックス値は大学受験だった。入りたくてたまらない大学に合格するために、学年ビリの成績を取ったことすらあったのに、死に物狂いで努力して、合格した。きっと人生でこれ以上努力することなんかないんだろうな、そう思っていた。あんなに辛い思いなんか、二度どするもんか。

でも、違った。甘かった。
私の「死に物狂い」なんて、三浦さんにとっては平常運転どころか、「え、それしかやってないの?」というレベルで、本気でやりたいことを叶えようと思ったら、本当に、同級生よりも、上司よりも、自分が憧れているプロよりも努力しなければならないのだ。

そして、その努力がどれくらいの苦しさを伴うのかは、やっぱり一度やってみないとわからない。行動してみるまでは、「努力」はただのファンタジーであり、だから、「努力」というのは保証ができない。「何かをやる」と決めたとき、自分が本当にそれを達成するに価するだけの努力ができる保証なんて、何もないのだ。
未来の自分がどれだけ頑張れるのかを、現在の自分がはかることはできない。

だって、いつも楽しそうで、笑っている三浦さんが、小説を完成させるまでに、どれだけ集中して原稿に向き合い、どれだけキャラクターを考え、どれだけ読者のことを考えているかなんて、外から見ている人間からは、想像ができないのだ。

だから、最近こう言うことにしている。

「ちゃんと、クリエイティブの厳しさとか伝えてくださいよ!」と。

そうは言っても、結局また忘れられてしまうんだろうけれど。

まったく、クリエイティブな仕事がめちゃくちゃきつい体力仕事だと、どうして誰も教えてくれなかったんだろうか。
99%の努力をしているからこそ、1%のやりたいことを思いっきりできているのだと、なんで言ってくれないんだろうか。
「クリエイティブ」なんて言うとどうもカッコよくておしゃれで、ウェリントンの丸メガネにスタバでマックパタパタ、みたいなイメージが浮かんできてしまうけれど全然そうじゃなくて、その丸メガネをかけている人たちも、実は本当に死ぬほど、吐きそうになるまで、目が血走って使い物にならなくなるまで考えて考えて考えながらマックに向き合っているのかもしれないということを、誰か、教えてくれればよかったのに。

「何かをつくる」ということは、とても泥臭い仕事だと思う。
自分が本気でやりたい、本気で面白いと思うことをやるためには、やりたくないこともめんどくさいことも全部やらなければならなくて、でも、それでも結局一度その「本気」の面白さを知ってしまったら、やめられない。やめられないから、苦しくてもまた、頑張る。その繰り返し。

面白いものをつくって、それを提供して、コンテンツとして認めてもらい、買ってもらったり、時間を投資してもらったりすることは、簡単じゃない。
自分が面白いと思ったものがコンテンツになるとは限らないし、たとえそれが本当に面白くても、きちんとその面白さが相手に伝わる形に変換する作業も必要だ。

一流のクリエイターになるのは、簡単じゃない。ほんの一握り。
でも、努力をすれば、簡単。
誰よりも、誰にも負けないくらい努力すれば、やった分だけ、それは結果として返ってくる。

その事実がここで2年働いてやっと、本当に少しだけ、掴めかけてきているような気がする。ほんのちょっと、本当にほんのちょっとだけれど。

だから、「努力」をファンタジーではなく、リアルに変えていける人だけが、第一線で残っていけるのだと思う。これは直感だけれど。

「え、そんなんで足りると思ってるの?」

昨日、プロゼミの講義のとき、そう言われた。
私は毎日5,000字を書いて記事をアップしているけれど、それでもプロの小説家になるには、とても足りないのだ。

「誰よりも、努力しないと」と三浦さんは言った。

「末席を目指して行動してたら、絶対に末席には座れない。トップに勝つつもりで努力してようやく末席だと思うよ」

それを聞いて頭が痛くなったけれど、それでもやっぱりここにいることをやめられないのは、どんなに泥臭くても、ダサくても、かっこ悪くても、その末に手に入れられる光が、私には見えているからだ。

想像がつく。手が届くイメージがある。
私には、きっとできる。大丈夫。ぎゅっと掴み取ることができる。絶対に。

これは動物的な直感としか言いようがないが、とにかく、大丈夫なのだ。できるのだ。

根拠も何もないけれど、こうやって自分を信じられるようになってきているから、本当に頼りない自分だと思っていたけれど、微々たるものでも、ほんのちょっとでも、前に進んでいる。そんな気がするから。

だから、私はここにいる。ここで働き続けている。

今のうちに、言っておく。本気で天狼院と関わろうと思ったら、血反吐を吐くような努力をしなければならない。
けれどもそれでもやっぱりやってみたいとか、チャレンジしてみたいと思うのなら、ぜひ応募してみてほしい。

クリエイターになれるという保証はないけれど、あなたの求める「面白い仕事」ができる保証はないけれど、それでも確実に、自分の中のエンジンのスイッチは入るはずだ。

 

 

 

「川代ノート」は月〜金の22時更新!

 

*天狼院書店では、クリエイティブ・インターンを大募集しています!

【スタッフ大募集開始】次世代型の「本屋」が提案する新しい働き方「プライスレス・ワーク」とは? 未来を創る「クリエイティブ・インターン」新規50名超! 文章を書く、写真を撮る、モデルになる、演じる、旅を創るなど、未来の自分に投資しながら、クリエイティブな仕事を一緒にしていく仲間を募集しています!

 

 

【クリエイティブ・インターン募集/東京・福岡・京都《学生限定》】

天狼院書店では「本の再定義」を実現するため
本屋を創り、本を創り、雑誌を創り、動画を創り、写真を創り、売場を創り、演劇を創り、旅行を創りたい人材を募集します。
プロの制作の現場に、関わり、そこから学ぶことができます。
また、数々の天狼院のゼミで学んでいただくことができます。(*無料で参加いただける代わりに、全講義をしっかりと受けていただくことが条件となります)
さらには、完全成果主義で、企画に応じて報酬が出ます。
採用のインターン制度も兼ねていますので、天狼院書店およびスタジオ天狼院の運営会社への正社員登用もありえます。(*現在の正社員のうち3名がインターン制度からの登用)

積極的に関わってくれる方、自発的に学ぶ姿勢がある方を採用したいと思います。

 

【お申込方法】

お問い合わせフォームからお申し込みください。
件名に「クリエイティブ・インターン希望」と記入し、本文にお名前、メールアドレス、電話番号をお書きください。
また、写真付きの履歴書(志望動機・どんなことに挑戦したいかも記入して下さい)をギガファイル便にアップロードし、そのURLも一緒にお送りください。
(手書きの履歴書のスキャン、写真可)
いただいた書類にて一次選考をさせていただきます。
書類選考を通過された方には、説明会の詳細のご案内をお送り致します。
*募集定員に達した場合、予告なく打ち切りますので、その点、ご注意ください。
*クリエイティブ・インターンは、学生のみの募集ですが、アルバイト・スタッフも各店募集しておりますので、お問い合わせください。

【募集拠点】
スタジオ天狼院(東京)50名/福岡天狼院(福岡天神)10名/京都天狼院(京都)10名
*クリエイティブ・インターンは、主に、作品制作やその学びの現場のサポートしながら、自ら学び、制作するのが趣旨です。天狼院書店のカフェ・書籍販売業務に関しましては、別途アルバイト制度があります。両方ご希望の方はスタッフへご相談ください。

■クリエイティブ・インターン説明会(東京)

※書類による一次選考を通過した方のみご参加いただけます。
①2018年2月4日(日)10:00〜13:00
②2018年2月27日(火)14:00〜16:00
会場:スタジオ天狼院(東京都豊島区西池袋3丁目31−10)
地下鉄池袋駅C3出口より30秒 ドリームコーヒーの入ってるビルの4階です。
*池袋には天狼院書店が3箇所ございます。お間違いのない様ご確認お願い致します。

スタジオ天狼院 2016.12.23(祝金)OPEN
〒171-0021 東京都豊島区西池袋3丁目31−10 4F
*ドリームコーヒーの入っているビルの4階です。

■クリエイティブ・インターン説明会(福岡)

※書類による一次選考を通過した方のみご参加いただけます。
2018年2月13日(火)14:00〜16:00
会場:福岡天狼院

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021
福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

■クリエイティブ・インターン説明会(京都)

※書類による一次選考を通過した方のみご参加いただけます。
2018年2月20日(火)14:00〜16:00
会場:京都天狼院

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805
京都府京都市東山区博多町112-5

 

*この記事は、人生を変える「ライティング・ゼミ《平日コース》」フィードバック担当でもあるライターの川代が書いたものです。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになると、一般の方でも記事を寄稿していただき、編集部のOKが出ればWEB天狼院書店の記事として掲載することができます。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 

❏ライタープロフィール
川代紗生(Kawashiro Saki)
東京都生まれ。早稲田大学卒。
天狼院書店 池袋駅前店店長。ライター。雑誌『READING LIFE』副編集長。WEB記事「国際教養学部という階級社会で生きるということ」をはじめ、大学時代からWEB天狼院書店で連載中のブログ「川代ノート」が人気を得る。天狼院書店スタッフとして働く傍ら、ブックライター・WEBライターとしても活動中。
メディア出演:雑誌『Hanako』/雑誌『日経おとなのOFF』/2017年1月、福岡天狼院店長時代にNHK Eテレ『人生デザインU-29』に、「書店店長・ライター」の主人公として出演。
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2018-02-05 | Posted in チーム天狼院, 川代ノート, 記事

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