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「海の出版社」旗揚げ宣言/なぜ、僕らは海で出版をやろうと考えたのか?


記事:三浦崇典(天狼院書店店主)

場所には意味が宿っている。

トキワ荘は池袋の近く、椎名町と東長崎の間のあの立地でなければなかっただろうし、松下村塾は長州のあの場所でなければならなかった。
ルネッサンスがフィレンツェから起きたことにはわけがあって、中国史上最大の帝国がモンゴルから興ったのにもわけがあったのだろう。
シリコンバレーはアメリカ西海岸でなければならず、世界的な企業が西海岸から続々と生まれたのにもわけがあった。

あるいは、偶然にそこを選び、結果として歴史になっただけかもしれないが、天狼院書店の1店舗目を池袋に出店しなければ、その後に伸長したイメージができない。

出版を考えるときに、東京都心と考えるのが一般的だろう。

日本の出版は、実に9割の機能が東京に集中しているからだ。

僕は、これにずっと違和感を覚えていた。

たしかに機能と才能の9割までが都心に集約すれば、便利ではある。

ただし、便利とクリエイティブは、本来、相性がいいものではないはずだ。

現に文豪たちは、熱海や箱根などの温泉地に逃れて創作をした。

そして、もし、僕らが新しい出版を興そうと思えば、間違ってもその場所は東京都心ではない。

候補を様々考えた。

京都天狼院がある、京都で出版というのもいいような気がした。
福岡を出版の拠点としてもいいだろう。
また、温泉地そのものに出版の機能を持っていってもいいように思えた。

山や高原でも、特定の南の島でもよかっただろう。

僕らが最終的に選んだのは、「海」だった。

湘南に本拠地を構えるが、僕らが想定する「海」は、単一に湘南の海のことではない。
湘南も含めた、広い意味での「海」である。

長崎でも、熱海でも、沖縄でも、函館でも、シーサイドであればどこでも、僕らが創作する場所にしようと考えた。

今は幸い、それができる時代でもある。

そして、これらの海から、世界へとコンテンツを送り出して行こうと考えている。

海から世界にコンテンツを送り出す出版社。

それだから、「海の出版社/SEASIDE PUBLISHING」と名づけた。
名前は少しも迷わなかった。

コンテンツのかたちに、拘るつもりはない。

僕らが思い描く「出版」の定義は幅広い。

もともと、僕らが定義する「本」の概念が広いからだ。

僕らは「有益な情報」はパッケージに関わらず、すべて「本」と定義する。

だとすれば、書籍のみならず、講演も演劇も旅やテレビ番組すらも「本」となる。

ただし、僕らは「海の出版社」は、「物」としての書籍にも徹底してこだわっていこうと考えている。

僕らが出版する条件は、「一度作ったら永遠に売り続ける本」だ。

僕らが存在する限り、自分たちが作った本は、永遠にお客様に届け続けようと考えている。
そういった本しか、作らないと決めた。

もしかして、クリエイターの先生方にとっては、日本一出版が難しい出版社になるかもしれない。

ゆえに、僕らの成功基準は、発行部数ではない。

どれくらいの年月、お客様に必要とされ続けたか、が最も重要な指標になるだろう。

「この本、何万部売れているんですか?」

の問いには、首を捻るだろう。それはわかりませんが、と前置きした上で、たとえばこう答えるだろう。

「この本は、生まれてから5年と4ヶ月、お客様に読まれ続けています」と。

ずっと本棚に残り、ずっと手に取られ続ける本。

僕らが目指すのは、そんな本だ。
自分たちの書店、天狼院書店の棚でずっと置き続けたいと思う本だ。

「あの出版社は、海で始まったんだってね」

数十年後の将来、僕を知らない誰かがそう語ってくれるかもしれない。
僕を知らなくても、僕らが作った本は、どの時代もお客様の傍らにあってほしいと思う。

僕らは、海に出版社を作った。江ノ島の見える、湘南の海だ。

もし、場所に意味が宿っているとすれば、歴史がその意味を物語ってくれるだろう。

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