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あなたは、本物のトップアスリートなのだから


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:佐藤賢二(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「私実は20数年ぶりに試合に出ることになって、今すごい不安なんです……」
 
今年10月に名古屋市内で開催された、国際シニアテニス大会に出場した女性選手が、ストレッチを受けながら僕に話しかけた一言だ。
彼女は試合前は本当に不安そうだった。
僕自身、練習不足のまま来てしまったんだと本気で思い込んだ。
けれど……。
 
僕はメディカルトレーナーとして、この大会に1週間帯同した。
 
メディカルトレーナーの主な役割は、選手へのけがの予防と応急処置だ。
僕は主に、クラブハウス近くに設けられたトレーナーブースで選手のケアを行った。
試合中に選手がけがをした場合は審判から無線連絡が入り、急いでコートへ出向く。
選手から要望があれば3分間のタイムアウトを取って、応急処置やストレッチなどを行った。
 
連日ケアと応急処置の対応で、トレーナーブースとコートの往復で慌ただしい。
食事の時間もほとんどとれないくらい、忙しい日々だった。
 
大会も中盤から終盤に差し掛かったところ、1人の女性選手がトレーナーブースにやってきた。
 
「この後ストレッチとテーピングお願いできますか?」
 
やってきたのは45歳以上の部にエントリーしてる女性選手。
話を聞くとすでに1試合終わって、次の試合までに時間があるという。
 
彼女の第一印象は、テニスプレーヤーというよりは、モデルだった。
見た目はスレンダーな体型で、筋肉がしっかりついてる体型ではないように見えた。
 
話を聞くと、どうやら今回20数年ぶりに試合に出るとか。
もしかしてトレーニングや練習不足か? と思わず心配してしまった。
 
「最初はたまたま勝てたんですけど、ふくらはぎも痛いし次の試合勝てるかどうか……」
「神戸からせっかく来たんだし、名古屋の美味しいご飯食べて帰れたら満足かも」
 
僕が彼女の身体をストレッチをする前に、不安な言葉が次々と出てくる。
いかにも今から試合から逃げ出したくなるような表情も、時折僕に見せていた。
 
僕自身、当初は仲間内に連れられて人数合わせで来たのかな、という認識だった。
せっかく遠路はるばる神戸から名古屋に来てくれたのだから、せめて試合が最後まで出来るようにコンディションは整えてあげたいな、と。
 
彼女の太もも周りのストレッチをしてみると、僕は驚いた。
 
身体が硬い人だと、筋肉を数十秒かけて伸ばした後も元に戻ってしまう。
彼女の場合、ストレッチすると、筋肉がまるでつきたてのお餅のような柔らかさになるのだ。
 
お餅のような柔らかさの筋肉を持ってる選手は、僕の経験上、プロツアーに出てる選手に多く、テニスの動きでも筋肉を強くしなやかに使うことが出来ている。
当然、けいれんや肉離れなどのけがを起こすリスクも少ない。
 
「趣味のキックボクシングで多少鍛えてるつもりだけど、テニスとなるとまた違ってきますよね」
 
それでも、彼女はまだ不安なままだ。
 
「こんな柔らかさがすぐ戻る選手ってそんなにいませんよ。 今まで僕が見た中でトップアスリートのような筋肉の質ですよ」
僕は少しでも自信が持てるような言葉を、限られたケアの時間の中で見つけながら伝えた。
 
一通りストレッチを済ませた後、筋肉の動きをサポートするテーピングを左右のふくらはぎに施して、ケアを終えた。
 
「これで何とか試合は出来そうです」
彼女も試合がに挑める覚悟が出来たのか、ケアを受ける前の不安な表情は和らいでいた。
 
「もしまた必要でしたらトレーナーブースに来てくださいね」
僕はそう伝えて、次の試合に向かう彼女を見送った。
 
その後、トレーナーブースでのケアも落ち着いたので、その日行われる最後の試合会場のコートへ応急処置の待機のために向かった。
 
コートに着くと、先程ケアを受けに来てた女性選手がダブルスの試合をしていた。
 
動けてるかな? ふくらはぎに貼ったテープはしっかり効いてるかな?
だがそんな僕の心配は、無用だった。
 
なんと、彼女が躍動してるのだ!
 
不安そうにしてた表情から、キリッとした勝利に向けて貪欲な表情に。
相手選手を翻弄するストロークを次々と決めて、試合展開を有利に。
ふくらはぎの張りを気にする素振りがないくらい、コンディションも上々に。
 
「ホントに20数年ぶりなの!?」
 
何年も試合に出続けてるようなパフォーマンスの連続。
試合前、弱音を吐いていた同じ人とは思えないくらいの素晴らしい活躍だった。
 
試合は圧倒的に彼女たちのペースで進んだ。
終盤は彼女にもミスが続いたが、ペアの選手がそれをカバーする素晴らしいショットを連続で決め、彼女たちが勝ち上がった。
 
「あのふくらはぎにテープ貼ってる人、以前全日本ジュニアのチャンピオンだったらしいぞ」
「やっぱりなあ。 あの子のペアは他のペアと動きが別格だったもんなあ」
 
そんな噂話が試合後のコートサイドでは、次々と聞こえてくる。
そう、彼女はれっきとした、トップアスリートだったのだ。
 
試合後、彼女たちが僕のところに来てくれた。
 
「おかげさまで勝てました! 本当にありがとうございました!」
ケアを受ける前とは明らかに表情が変わっていた。
試合に勝てて嬉しいという笑顔いっぱいの表情だった。
 
「ケア受ける前と比べてすごく調子良いです。 次の試合に向けて、私何をしたらいいですか?」
この言葉を聞いた時、彼女はやはりトップアスリートなんだと僕は確信した。
 
思い返すと、トップアスリートは、常に今の自分自身の身体の調子を理解している。
身体のどこに痛みがあって、張りの強さはどのくらいで、違和感はあるのかないのか。
痛みや張りや違和感が、自分のパフォーマンスにどう影響するのかというのも言語化できる。
 
「必要でしたらこの後もケアの時間は作りますよ」
「ホテルに戻ったら、お風呂に浸かったりテニスボールで足裏のセルフマッサージもしてあげてくださいね」
 
自分の身体の調子に向き合えているからこそ、僕から彼女へ伝える内容も具体的になる。
そして彼女自身も、自分の身体に向き合いながら次の試合に向けて準備していた。
 
翌日、試合は雨で順延したが、次の試合でも彼女は躍動を続けた。
終わってみれば、シングルスとダブルスで両方優勝を飾った。
表彰式では、誇らしい満面の笑顔で優勝トロフィーを掲げていた。
 
「私は、佐藤さんがいなかったら優勝できてなかったです」
大会が終わって、神戸に向けて出発する前に、彼女がわざわざ挨拶に来てくれた。
 
「僕はトレーナーとして出来ることをしたまでですよ」
僕はこう伝えたが、改めて感謝の言葉をもらえると、トレーナー冥利に尽きる。
次の大会でも再会出来るのが楽しみだ。
次の大会までにトレーニングとセルフケアを続けてほしいな。
 
次の大会でも、あなたが今よりもっと活躍するのを僕は信じている。
20数年ぶりの試合で怯えてた姿は、もういない。
あなたは、本物のトップアスリートなのだから。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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