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私をとりこにした陸上部の6年間


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記事:浅野加奈(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
子どもが中学校で陸上競技を始めてから、私は陸上競技の面白さに魅了されている。
私には子どもが2人いて、歳の差は3つ。2人とも中学では陸上部に所属した。
上の子が中学に入学してから下の子が中学を卒業するまでの6年間、私は子ども達と一緒に陸上競技にのめりこんだ。。
 
息子が入部した陸上部は、まだ創部2年目の新しいチームだった。部員も少なく、練習の環境も整っていない。練習場所として与えられていたのは、グラウンドの隅の狭い場所だけだった。
私が住む大阪府の中学校の陸上は、府を8つにわけた地区で予選を行う。
創部間もない陸上部の部員は、まずは地区予選で入賞することを目標としていた。さらに地区予選を突破して、その次の府大会に進むのは容易ではなかった。
また陸上には学校対抗戦がある。短距離、中長距離、跳躍、投擲など複数の種目での各学校の順位を点数化し合計点で争う。こちらも部員数が少ないこともあり、他校に歯がたたなかった。
 
けれども、創部された顧問の先生の陸上愛はすごかった。暑い日も寒い日も、雨の日も、練習を休むことなく熱心に指導を続けてくださった。
その結果、少しずつ府大会に進む選手が増えていき、部員数も増えていった。
 
部員が増えたことで、週に1回、グラウンド全面を使って練習することができるようになった。下の娘が入部するころには、それが週に2回になり、練習道具も充実していた。創部6年目にして、とうとう全国大会に出場する選手が現われ、チームも地区では入賞の常連、強豪校となった。そしてその年、女子の部でチームは大阪府2位になった。
その6年間の顧問の先生を中心とした陸上部の歩みは、まるでドラマを見ているようなサクセスストーリーだった。
 
私が、子ども達の陸上競技にのめりこんだのは、そのサクセスストーリーだけが理由ではない。陸上競技は努力の結果が数字となって表れる、わかりやすさがある。
 
息子は育児をしている中で、決して運動神経がいいとは思えない子だった。
私自身、学生時代ずっとスポーツをしていて、学ぶ事や得るものが多かった。
その経験から子どもにもスポーツをさせたいと思っていたので、とりあえず、息子には幼稚園からサッカーを始めさせた。息子がサッカーに興味を示したわけではなかったが、まさに「とりあえず」という感じで身近に始められるスポーツがサッカーだった。結局小学校卒業まで9年間続けたが、いつも2軍、芽が出る事はなかった。
 
中学に進学した時、部活を迷う息子に陸上部を勧めた。
特に足が速かったわけではない。小学校6年間、運動会でリレーの選手に選ばれたことは一度もなかった。けれども、道具を使わない陸上競技が、なんとなく息子に合う気がした。
 
そんなわけで、息子は陸上部に入部した。
そして驚くべきことに、入部間もなく測った体育の50メートル走で、学年で1番の記録を出した。その結果に本人も驚いたが、小学校から一緒だった周りの同級生や保護者も驚いた。
サッカーでは全くセンスを感じられず、どちらかというと運動音痴のイメージだった息子。それが突然、学年で1番足の速い人になったのだ。
その後、2年生・3年生になると学年1番は人に譲ることになるが、3年間、ずっと体育大会ではリレーの選手に選んでもらった。
 
私の分析はこうだ。
恐らく速く走る素質はあったのだと思うのだが、不器用な息子はそれを十分に発揮する走り方ができていなかった。陸上部に入部して、「体幹」を意識することを教えてもらうことでそれが出来るようになった。その結果、タイムが急激に伸びた。
 
息子は走ることが好きになった。
部活動を楽しみ、休まずさぼらず練習に参加した。その結果、記録が少しずつ伸びていく。努力の結果が数字として表れるのは、とてもわかりやすい。
学校内では俊足だったが、競技者としては地区大会の入賞がやっとだった。
しかし陸上は、人との競争ももちろんあるが、自分との戦いでもある。客観的に見て平凡な記録であったとしても、それぞれの中で成長を感じ、達成感を感じる事ができる。
それは競技外、たとえば勉強も同じで、コツコツ頑張れば、自分なりに成長ができる。それを息子に教えてくれた。
 
陸上の練習は、地味なトレーニングの積み重ねだ。
私の家から、中学校のグラウンドが見える。来る日も来る日も、ひたすら補強と呼ばれるトレーニングが、妥協せず繰り返されていた。必ずしも、その努力と比例して結果がでるわけではない。けれども、それをきちんと継続していれば、ある時パッと花を咲かせるのだ。
 
子ども達は、試合ごと、シーズンごとに、様々な大きさの花を咲かせる。
そして創部した先生は、何もないところから、その一つ一つ違う花たちが、咲き揃い美しい花畑を作るために、何年も種に水をまき肥料をやり続けてくださった。
 
私はその様子を、6年間、夢中になって見続けたのだった。
 
 
 
 
***

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2021-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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