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今の仕事と昼のチャーハン


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:長谷川 大祐 (ライティング・ゼミ 超通信コース)
 
 
今の会社で働き始めて、今年で3年目。
先輩から業務について手取り足取り教わる時期も終わり、
会社で出会うおじさん達から
「まだ20代前半?若いね~」と言われることも少なくなってしまった。
 
世間一般的には、「会社に就職したら、まずは3年」という言葉がある。
就職して3年目には、業務を一通りこなせる目安みたいなことを
パッと思い出せない誰かに言われた気がする。
 
 
大学時代にプログラミングを学んだことをきっかけにして、
膨れた好奇心を抱えて今のIT企業に入社した。
入社してから今までは、見たことない技術や概念など、
いくら学んでもゴールが見えない業界の広さに感動したことを覚えている。
仕事に対しても面白さを感じていたので、
いつの間にか社内では、「意欲がある若手」の称号を手に入れていた。
 
周りからの評価にあまり興味が無い私は、
好奇心の赴くままに業務をこなしていった。
徐々に色々な案件を触ったことで「意欲がある若手」もやがて
「戦力として数えられる若手」になった。
 
そんな今では、入社当初と比べて好奇心は衰えてきたものの、
まだ学べることはあると思っている半分、どこかなんとなく過ごしていた。
 
 
ある日行われた上半期目標設定の面談でのこと。
いつものように、「○○の資格取得を目指します」「○○のマニュアルを作成します」
といった簡単ではないけど、決して遠くない目標を話そうかと思っていた。
 
約束の時間になり、ZOOMを立ち上げ、担当の上長と挨拶をする。
面談するくらいならYoutubeでも見たいな。
今日のお昼は何食べようかな。
久しぶりにチャーハンでも作るか。
 
そんなこと思いながら、上長と世間話をする。
そして、目標設定の話になりそうなところで、
思考を休日モードからお仕事集中モードへ切り替える。
 
「今期の目標は○○の資格取得と業務で使用する○○のマニュアル作成を考えています」
事前に考えていた言葉を放ち、上長の様子を伺う。
「うーん 悪くないんだけどね」
 
嫌な予感。
 
「社内でも話が進められているんだけど、
そろそろ長谷川君にもリーダーを目指してほしくて」
「あ、別に今すぐって訳じゃないから安心して」
 
嫌な予感的中。
 
上長のその言葉に対して、
どう返答したのかあまり覚えていないが、
私の事なので愛想笑いで済ましたか「考えます」と一言添えたと思う。
あるいはその両方か。
 
面談はなんとか終えることができた。
しかし、モチベーションの低下による脱力感が凄まじい。
なにせ今までは、ほとんど好奇心一本で仕事を続けてきたと言っても過言ではない。
評価や役職など興味が無い姿がひょっこり顔を出してきて、目の前で居座り続ける。
 
 
ベランダで煙草を吸いながら、
先ほどの面談を振り返る。
なぜ企業の役職には、リーダーやマネージャーという固くて重いような役職しかないのか。
リーダーを支える影のNo.2とか
お悩み相談はお任せ○○部の母とか
色々な役職があってもいいのではないか。
リーダーと部下、というハッキリしすぎた役割に疑問を抱きつつ、
今すぐ解決できる問題では無いことは分かっていた。
なので、一旦考えないように決め、煙草をもみ消した。
 
部屋に戻ってから、空腹であることに気づき、
面談前にチャーハンを作ろうと決めたことを思い出した。
 
昨日の夕飯の残りからお米は炊いてあるので、
卵とネギがあれば問題ない。
 
しかし、野菜室のどこを見てもネギらしいネギが無い。
ネギが無いチャーハン。
先ほどの業務リーダーを目指さないかという案件と、
直面しているネギ無しチャーハン。
どこか意欲を削ぐ、もやもやとした感じはそっくりだった。
 
 
 
ロウソクの灯りが薄暗い店内を照らしている。
レモンサワーを一口飲み、ダーツを手に取り、投げる。
3本すべて狙いが外れる。
 
ダーツが好きな先輩と出社が珍しく被り、久しぶりに投げますか、
という話になり駅近くのダーツバーへ来た。
このご時世ということもあり、
かなり久しぶりに投げたので、私も先輩も惨憺たる結果だった。
 
 
2杯目に注文したハイボールを飲みながら、考える。
先日の面談で急に送られた不安や空虚感。モチベーションの低下。
先輩に話したら何と答えるだろうか。
 
私にとって、他人にキャリア的なプライベートな相談をするという時は、
かなり煮詰まっている時である、ということは大学時代に知った。
 
先輩からしたら面倒くさいだろうなと考えつつ、
半ば独り言のように話してみた。
 
「先日の面談でリーダー目指さないかって話が出て……
正直なところ、モチベーション上がらないんですよね
でも業務は嫌いじゃないし、会社も好きですけど……
きっと、新人のフェーズが終わるから、その充電期間ですかね」
 
あーなんだ。そういうことを考えてたのか。
話ながら思った。
 
先輩は、私の目からそらさず、私が話終えると口を開いた。
「俺からしたら、長谷川君は頑張っていると思うよ
20代半ばでリーダーって話は、そうそう上がらないと思うし」
 
話しかけておいて申し訳無さはあるが、
先輩の話はもはや不要だった。
 
リーダーになったら、確かに考えることや
見なければならない点は増えると思う。
しかし、私は私のままでいいのではないか。
別に、リーダーとは何か論じてみよ、とか命令されている訳ではない。
 
今まで通り、面白いと感じたものに夢中になり、
焦りや不安を感じる必要は無いのだと。
モチベーションが低下してきたなら、
それは自分で言ったように好きな方法で充電すればいいのではないか。
 
 
平日のお昼過ぎにキッチンに立つ。
ネギが無い代わりに、醤油、ニンニク、ウィンナーなどを大量投入した結果、
いつもと違うチャーハンが完成した。
とても人様に出せるものでは無いが、
それはそれで美味しかった。
 
 
 
 
***
 
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