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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:山田THX将治(ライティング・ゼミ書塾)
 
 
「えっ!! マジかよ!!」
テレビのニュースを見ながら、私は思わず声を上げてしまった。
そこではニュースキャスターが、折からの外出自粛要請の対象業種を読み上げていた。
 
新型肺炎の蔓延で、今年もゴールデンウィークは、気軽に外出等出来ないことは想定済みだった。問題は、休業要請を受ける業種と受諾(じゅだく)した企業だ。
私も子供ではないので、或る程度、贔屓(ひいき)にしている企業が休業してしまうのは覚悟していた。
 
テレビのニュースでは、デパートの休業を告げていた。
私の想定では、今まで以上の営業時間短縮は有るものの、休業と迄はいかないと思っていた。何故なら、日本一の売り上げを誇るデパートでも、このところ外国からの旅行者の来店が無いので、以前の様な‘密’に為っている状態を見掛けてはいないからだ。
ところが、急な知らせでは、日常生活に必要な食料品と化粧品を除いて、他の売り場は全て休業とのことだった。
食料品が、日常生活で必要なのは理解出来る。しかし、デパ地下で売っている様な高額の食料品は、日常では喰わないだろうと瞬時に思った。
ましてや化粧品等は、女性には必需品かも知れないが、男性には無縁の物だ。これでは、まるで“逆ジェンダー差別”に為るのではないかとも感じたのだ。
 
ただ、気に為ったのは、日常生活とは他人(ひと)から押し付けられることでは無く、ましてや行政から強(し)いられるものなのかということだ。
それに、贔屓のデパートを巡(めぐ)るのは、私にとっては日常生活の一環でもあったりするのだ。
そして、私にとって問題なのは、昨年の早春、初夏に為ったら着て外出しようと思っていた派手目のシャツが、一度も袖を通すことなくクロゼットに掛かりっ放しになっていることだ。悪いことに、今年も外出出来そうもないので、自慢のシャツはもう一年クロゼット内で眠ることになりそうだ。
昨年の同時期、タレントの指原莉乃さんがTwitterで呟いた嘆き、
「嗚呼! 春服が!!」
というのが、今年も続くとは考えても居なかった。
 
ゴールデンウィークといえば、殆どの人は旅行に充てることだろう。
しかし、都会でばかり遊んできた映画フリークの私にとって、ゴールデンウィークといえば、集中して映画館へ出掛ける時期と例年為っていた。
ところが、昨年同様に東京では、外出自粛要請業種の中に映画館が含まれてしまったのだ。そもそも、昨今の映画館では、座席を一席ずつ空け客同士が‘密’に為らないよう工夫が取られていた。しかも、映画上映中の観客は皆、前を向き一言たりとも発することが無いので、飛沫が飛ぶ危険などサラサラ無い筈だ。
私は思わず、
「こんなことに為るなら、せめて用語に特許を取得しとけばよかったのに」
と、私は呟いてしまった。
 
21世紀の現代では、想像出来ないことだが、昭和の中期では映画が娯楽の王様だった。実際、休日が続くとどこの映画館も、連日連夜満員の札止めの状態だった。映画製作会社や映画館は、大変な収益を上げていた。
その実例を上げると、松竹・東映・大映といった国内映画製作会社は、それぞれプロ野球球団のオーナーだった程だ。現代と比較すれば、IT系の高収益を上げた企業が、プロ野球球団を持っているのと同じだ。
即ち、昭和中期の映画会社は、現代なら携帯電話大手やゲーム制作会社、そしてネット販売大手と同等の会社だったということだ。それ程迄の高収益体制だったし、映画館の観客も想像出来ないほど多かったのだ。
 
昭和30年代の初頭、映画製作大手の大映で新作映画の製作発表会が開かれた。時期は丁度、4月の半ばだった。
当時から4月29日から5月5日の一週間は、現代程ではなかったが、休日が3日有り必ず週末が含まれるので、国民全体がお休み気分だった。映画館は連日満員が予想された。
そこで、大映経営陣の気分を良くしようと、会見に来ていた記者が、
「こう、休日が続くと儲かって仕方が無いのでは?」
と、話を振ったのだ。
大映の永田社長は、得意満面の顔で、
「そうなんだよ。ウチでは4月29日からの一週間を、書き入れ時の“黄金週間”と呼んでいるんだ」
と、答えたという。
これが、世に『ゴールデンウィーク』という言葉が広まる切っ掛けとなった。
また当時は、『ゴールデンウィーク』といえば、映画業界の専門用語として認識されていたのだ。
現に今でも、特定の業界を贔屓することを嫌うNHKでは、4月29日からの一週間を『ゴールデンウィーク』と呼ぶことは無い。『大型連休』と言い換えているのだ。
 
こうして映画界を発祥として出来上がった言葉『ゴールデンウィーク』。
せめて、永田社長が、何等かの特許でも取っておけば、映画業界から始まった素敵な言葉で、休業要請を告げられるニュースを聞くことは無かったろうに。
 
私は、何故だか悔やんでしまう。
 
昨年のゴールデンウィークは、家に籠ってすごしたが、今年は規制の網の目を潜って、横浜にでも出掛けて映画三昧してみようかと思ってしまった。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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