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言葉の印象を操作する!


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記事:串間ひとみ(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
「末代まで呪いますから」
 
もうずいぶん昔のことであるが、電話口の向こうで言われたセリフである。詳細は省くが、私なりに一生懸命取り組んだ案件だったのだが、その対応がよほど意に添わなかったのだろう。いつ終わるとも知れない恨み言を聞くのは正直辛かったが、落ち度が100%ありませんと言える状況でもなかったので、受話器を握りしめたまま、永遠とも思える時間を耐え忍んでいた。そしてその最後に出たのが、このセリフだった。
 
連日にわたる電話対応で精神的にまいっていたところに、たたみかけるように放たれたこのセリフは怖すぎた。電話が切れた後も、「大丈夫?」と声をかけられるまで、しばらくは茫然自失とそこに立ち尽くしていたほどだった。
 
「もう限界だ……」
 
そう思いながら、その日までに何度も聞いてきた恨み言、そしてトドメのように言われた最後の言葉を反芻しているうちに、
 
「ん? 末代って、もしかして私!?」
 
急に思いついてしまった。
 
そうなのだ。私には子どもがいない。法律的にとか詳しいことは分からないけれど、単純に考えれば、私に子どもがいない以上、今のところ、私の子孫は存在しないということではないか? 末代までと言われただけで、家族とか、親戚とは言われてないので、私自身には何かあるかもしれないが、子孫がいない以上、私が最後でジエンド。
 
そう思ったら急に可笑しくなって、さっきまでの深刻な気分が一変、笑いだしてしまった。幸い帰宅中の車の中だったので、誰にも見られずに済んだが、さっきまで暗い顔をしていた人が、突然笑い出したのだから、もしもその表情の変化の一部始終を見ている人がいたとしたら、トドメのセリフに負けないくらい怖かったことだろう。
 
突然の思いつきで、すっかり気持ちは軽くなったが、その思いつきの前と後では、何も状況は変わっていない。電話口の相手が私に怒っていることも、私が100%正しいわけではないので反論できないことも、目の前の問題は何一つ解決していない。
 
それでも私の気持ちは、軽くなったのだ。
 
同じ言葉でも、誰かに向けられた言葉と、自分に向けられた言葉とでは、当たり前だけれど感じ方が全然違う。嬉しい言葉はより嬉しく感じるし、嫌な言葉は、必要以上に重くのしかかってくる。実際に、そのセリフを聞いて現実に戻った後、私はその重みに耐えきれず、すぐにその話をしたのだが、
 
「文句言いたかっただけだと思うよ。気にしない。気にしない」
 
と、あまり深くは相手にされなかった。自分に向けられた言葉でなかったら、私ももっと冷静に受け流せたのかもしれないとも思ったが、当人にとっては、やはり大ごとだ。他人に分かりにくいだけに、誰かに声をかけるとき注意しなければならない言葉の扱い方だと思う。
 
そして言葉について、もう1つ。先日、お世話になっている整体の先生がおしゃっていて、妙に納得したのが
 
「言葉って、誰に言われたかで印象がずいぶん変わるよね。例えば、いくら名医と言われる人の言葉だったとしても、相手に対する信用とか信頼の気持ちがなければ、聞かないでしょ。だからお客様にきちんと施術ができるというのはもちろん大事なんだけど、それ以上に、常に正しい情報を伝えるとか、お話を聞いてしっかりコミュニケーションをとることを心がけて、信用・信頼を作ることの方を大事にしてるかも。じゃないとせっかくするアドバイスもちゃんと聞いてもらえないでしょ」
 
というもの。本当にそう思う。言葉を受けたり、発したりするとき、自分と相手の関係性や、状況、あるいは自分の気持ち次第でいろいろ同じ言葉でも変わっっていくものなのだと思うし、だからこそ使い方一つだなあと改めて考えさせられる。
 
呪術廻戦が流行り、巷で呪いという言葉を聞くことが増えた。すれ違う子ども達がその漫画の話をしているのを聞くたびに、昔言われたセリフを思い出して、ちょっと笑ってしまう。どちらかというと負の意味を持つ「呪い」という言葉に対しても、過去の経験や、流行りの漫画で使われているものだという理由で、言葉の印象というのは変わるものだなあと思う。
 
念のために断っておくが、最初のセリフの案件は、泥沼化した不倫騒動の果てとか言うわけではなく、仕事上の行き違いによるものであり、その後無事解決をしたので、今のところ、私も未来永劫無事だろう。だけど、新たな呪いをかけられないように、言葉には十分に注意して使っていこうと思う。
 
 
 
 
***

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2021-05-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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