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メディアグランプリ

「ほくろ」が与えてくれた力


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小川泰央(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「11月に中学校時代の同窓会を企画しようと思っているので、詳細はまた連絡するね」
 
それは、つい先日、中学時代の友人から届いた一本のメールだった。
中学時代のメンバーと言えば、そのほとんどが、地元の成人式で会った日以来だから、実現すれば30年ぶりの再会となる。
 
「はたして、30年経った今でも顔は分かるかな?」
なんて思っていたら、ふと中学時代のある思い出にタイムスリップしていた。
何ともほろ苦い思い出に……
 
それは、中学に入学した当初のことだった。
小学校5年生頃から悪くなり始めた視力が、中学に入学するころには0.1も見えなくなり、牛乳瓶の底のような厚いレンズの眼鏡、いわゆる「瓶底眼鏡」をかけていた。
 
そのせいか、クラスのメンバーからは、明らかにからかい半分で
「小川先生」とか「小川教授」
とか呼ばれるようになっていた。
 
確かに、当時は、今ほどレンズを圧縮する技術もなく、分厚いレンズを支えるためのフレームも選択肢が限られていたから、その眼鏡をかけると、それこそお堅いイメージに見えるものばかりだった。
 
だからだろうか。
私につけられる形容詞も「まじめ」とか「がり勉」などと言われることが多くなった。
本当はそうじゃないにもかかわらずだ。
だから、言われるたびに、「俺はそんなんじゃない!」と心の中で叫んでいた。それは反発に近い拒絶反応だった。
 
そんな時、あるテレビの歌番組で、強烈なシーンを見た。
それは、沢田研二が派手な化粧に電飾を身にまとい、パラシュートをつけて宙に浮きながら自信満々で歌っているシーンだった。
その派手なパフォーマンスと自由さ、そしてファンを虜にするそのスター性に一気に引き込まれた。「まじめ」や「がり勉」とは全く対極にいる、そんな感じがしたのだ。
 
「そうだ。沢田研二になろう!」と、その瞬間決めた。
 
それは、まるで、「ベルトを締めるだけで悪を退治するヒーローになれる」という変身願望のようなものかも知れない。
 
「沢田研二に変身するのだ!」
しかし、化粧は校則で禁止されているし、さすがに、電飾やパラシュートをつけたまま、学校には行けない。
 
「さてどう変身するか?」
 
「そうだ。沢田研二のほくろをマネしよう!」
沢田研二の顔をよくみると、左の頬のあたりにほくろが1つあることに気がついた。そのほくろをマネするのだ。
 
早速、鏡を見ながら、自分の左の頬に、マジックでほくろのような「黒い点」を描いた。
「よし! これで沢田研二だ!」
しかも、その「黒い点」は、ちょうど良いことに「瓶底眼鏡」のフレームに隠れて目立たない。つまり、他人に気づかれることなく変身できる。それに、校則を破らずにすむから好都合だ。
その日から私の気分は沢田研二になりきっていた。
だから、「まじめ」などと言われても、自分事だとは思わないので全く気にならなかった。
 
しかし残念なことに、「黒い点」は所詮マジックだから、数日で色落ちしてしまう。つまり、スター効果は数日だ。だから、色落ちしないように、朝、顔を洗った時に、「黒い点」を上描いて、毎朝、「変身」して一日を迎えるようにしたのだ。
 
そんなことを繰り返して数ヶ月経った頃だろうか。ある心の変化に気づいた。
相変わらず、「まじめ」などとは言われていたが、「他人からそう見えるなら、それでもいいか。別に悪いことを言われているわけでもないし、ネガティブにとらえることもないな」と思えるようになっていたのだ。もしかすると、自分がスターになりきっているうちに、いつの間にか自分に自信がわいてきたのかもしれない。だからこそ、人の意見も受け入れる余裕ができるようになったのかも知れない。自分の心のポジティブな変化に驚いた。
 
みなさんも、こんなフレーズを聞いたことはないだろうか? 
「人は楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」と。
これは、米国の哲学者で心理学者のウィリアム・ジェームズの言葉だ。
 
私も無意識にウィリアム・ジェームズの教えのような行動をとっていたのかもしれない。
「自信を持てたからスターになるのではなく、スターのようにふるまったから自信が持てたのだ」と。
 
その翌年、寺尾聡が「ルビーの指環」で大ヒットし、一気にスターの階段を駆け上がっていった。私にとって二人目のスターだった。
寺尾聡は左頬にほくろが2つあった。私の左の頬に描く「黒い点」もその日から1つ増えた。寺尾聡になるために。
 
その後、さらに不思議なことが起きた。
 
中学2年の夏、書いた作文が選ばれ、学校代表として、地域の他の学校の代表達とともに、北海道で開催される1週間のセミナーに派遣されるという幸運に恵まれた。
そして、中学3年の秋には、文化祭の弁論大会で、クラス代表としてステージに立ち、全校生徒を前にスピーチを行い拍手喝采を浴びることができた。
ついこの間までの自分では考えられないことだが、スターのようにスポットライトを浴びることができたのだ。それは、「ほくろが私に与えてくれた力」のおかげのように思えた。
 
あれから30年。今は、瓶底眼鏡は卒業し、コンタクトレンズだが、私の顔の左の頬には、中学時代に描き続けた、あの「黒い点」が2つ残っている。不思議なことに、それは消えることなく、本物のほくろのように、今や顔の一部になっている。
毎朝、顔を洗って鏡に映るそのほくろを見るたびに、中学時代の子供じみた変身劇を思い出し、思わず微笑んでしまう。そして、自分の顔に語りかける。「今日も一日自信を持っていこう!」と。「ほくろの力」は今も生きている。

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2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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