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ジブリ映画『魔女の宅急便』を娘と一緒に見た親父の決意


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記事:鈴木伸貴喜(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
念のため、最初にことわっておきたいことがある。ネタバレ注意である。
 
ぼくは、ジブリ映画『魔女の宅急便』が大好きだ。
思い立ったらすぐ行動、明るく元気な主人公キキが、13歳になった満月の夜に、魔女の修行のために家を出る。
新しい街での生活、新しい出会いや経験、大変なこともあるけど、まわりの人達にも支えられながら成長していく物語。
 
大学進学のために田舎から上京して一人暮らしを始めた頃のぼくは、自分とキキの境遇を重ね合わせて、励まされたものだ。
映画に出てくる街並みや音楽もあわせて、魔女の宅急便の世界観が好きだった。好きすぎて、パズルまで買って、今も玄関に飾っているくらいだ。
 
先日妻が買ってきた『魔女の宅急便』のDVDのジャケットを見たときに、そんな忘れていた記憶がよみがえった。
 
呑気なことを言っているようだが、妻がDVDを買ってきたのには切実な訳がある。
うちは家族5人暮らし。6歳の長男、2歳の長女、0歳の次男と子ども3人になったころから、楽しくもドタバタの育児生活に変わったのだ。
 
イクメンを自負しているぼくも、子ども3人になってからは急にオペレーションが難しくなった。妻が1日出かけているとき、子ども3人と大人ひとりでは、出かけるのも一苦労。しかし出かけられないと子供たちは発散できず、特に2歳の娘は主人公のキキのように元気いっぱいで、部屋の中を所せましと駆けまわった。
例年にない猛暑となった今年、少しのお散歩でも汗だらけの夏休みを乗り切るのは本当に大変だった。
 
そんな1日を乗り切るための一つの方法として活躍したのが、DVD鑑賞。
アンパンマンやドラえもんなど大好きなアニメや映画を見ているときは、子供たちもものすごい集中力を発揮してテレビに釘付けになる。
そして今回、ジブリ映画のなかでトトロに続く2作目として『魔女の宅急便』が選ばれたというわけだ。
 
——もう一度見てみようかな。
しばらく見ていなかったせいか、急に懐かしくなった。
育児の頃合いをみて、娘と一緒にソファーに座り、DVDを再生した。
 
見てみると、出だしから大学生の頃とは全然違った見え方がした。
まず、オープニングでキキが予定を変更し急に今夜出発することを決めたシーン。キキのお父さんが慌てそうになりつつも、どこか悟った様子で、娘の晴れ姿を見る。そして娘にせがまれて「たかいたかい」をしてあげる。
 
ぼくは湧きあがってくるものをこらえながら、いつか自分にもそんな日が来ることを想った。
 
——昔見たときと全然違う。でも、これもいい。
歳をとり経験が加われば、見え方が変わってくる。
キキが奮闘していく様子を親心のような気持ちで見守りながら、そう思った。
 
そしてもう一つ、見え方が変わった理由を感じている。
それは、コンテンツを消費する側か、作る側か、という立ち位置の違いによるものだと思う。
 
——映画ではキキの成長をどう表現しているのだろう?
コンテンツを作る側の視点に立ったとき、また違ったことに気づいた。
 
物語中盤にキキは自分に自信がなくなり、魔法が使えなくなってしまう。困難にもがき苦しみながらも、誰かのため、大切なもののために乗り越える過程で、空を飛ぶ道具が、お母さんからもらったほうきから、デッキブラシに変わるのだ。
それはまぎれもなく、キキだけの才能であり、個性を表していた。
 
ぼくはこれまで、コンテンツを消費する側だった。
テレビや映画、本やYoutubeなど、あらゆるメディアからの情報を受け取り、満足もしていた。
 
しかしいま、自分に何ができるだろうと考えていくなかで、自分のなかにある思いや言葉を伝えてみたいと思うようになった。
コンテンツを作る側へまわってみようと思うようになった。
ライティングゼミで学んでいる理由も、コンテンツを作れるようになりたいと思ったからだ。
些細なことでいい。日常の一コマをきりとり、自分が感じた気づきや学びが、この世界のだれかにとって、よい情報になればと思う。
 
そんなことを考えながら、あっという間に最後まで見てしまった。
「ここから育児・家事を挽回しなきゃ」と、意気込みつつも、すがすがしい気持ちでいる自分がいた。
 
とてもワクワクもしている。
これは大学時代に見たときと同じ気持ちだ。
 
——まだまだお父さんのようになっちゃいけない。これからだ!
キキが手に入れたデッキブラシのように、自分自身もコンテンツを作り、伝える側として頑張っていこう。
そう決意した。
 
ふと見ると、そんな親父をよそに、同じく満足した様子の娘はまたキャッキャと部屋中を走りまわっていた。

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2018-10-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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