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週刊READING LIFE vol,114

危うく大井町沿線の魅力を知らずに死ぬところだった。港区在住25年のおっさんが東急大井町線沿線の魅力を語る。《週刊READING LIFE vol.114「この記事を読むと、あなたは〇〇を好きになる!」》

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2021/02/08/公開
記事:椎名真嗣READING LIFE編集部ライターズ倶楽部
 
 
私が大井町線沿線に引っ越してきたのは3年前。ここに引っ越す前まで私は港区白金に25年住んでいた。今でこそ、そこに住む奥さん連中をシロガネーゼと呼び、セレブが住む街として全国にも知れ渡った白金。しかし私が住み始めた25年前は南北線が開通する前であり、最寄り駅はJR目黒駅。白金は目黒駅から徒歩20分はかかる、ちょっと不便な場所だった。その不便さから他の地域からに転居者は意外に少なく、隣近所は見知った人ばかりで。しかし南北線 白金台駅ができたころから街の雰囲気がガラリと変わっていったのだった。
 
白金台駅ができた頃から、白金はセレブタウンとしてマスコミにも大いに取り上げられ、駅前の大通りは拡張されることとなった。大通りの拡張に伴い、地元のお店は移転し、代わりにそこには高級ブティックやアクセサリー店が立ち並ぶように。大通りの拡張をほぼ同じタイミングで長年親しくさせていただいたご近所の引っ越しも相次ぐ。引っ越しをして空き地になった土地は更地にされ、大手ディベロッパーによるマンション建設が始まった。マンションができるとコンビニ、スーパーの類も増えていった。確かに白金は以前より買い物、通勤とも便利になった。しかし近所は見慣れない人が増え、商店街はあえなくコンビニに駆逐されていった。情緒豊かな街並みは少しずつ失われ、私達家族は同居していた義母が亡くなったのをきっかけに、白金から転居する事に決めたのだった。
 
移り住んだ場所は東急大井町線沿線の「上野毛」
東急大井町線は1927年開業。開業94年を誇る歴史ある路線である。しかしながら同じ東急電鉄グループの東急東横線や田園都市線、目黒線に比べるとマイナーなイメージがどうしても強い。私も実は上野毛に引っ越しをするまで大井町線に乗った事は今まで一度もなかった。しかし一旦この路線に乗ってみるとこの沿線がもつ様々な街の表情に魅了されたのであった。それはあたかも映画、ドラマの主演はやらないが、ある時は良い父親役、ある時は怖いやくざ、またある時は厳しい刑事、汚れたホームレス等を幅広い役を演じ生前「300の顔を持つ男」と言われた、故大杉連さんのようだ。
 
大杉連さんのような大井町線といってもピンとこないと思うので、この沿線の魅力をお伝えするために、大井町線の駅をいくつか紹介したいと思う。
まずは「二子玉川」
この駅を挟んで2つのショッピングエリアがある。1つは二子玉川ライズ ショッピングセンター。もう1つは高島屋玉川店。この2つの相乗効果により、周辺の東京あるいは神奈川から土日にもなると多くの人が集まってくる。またここには楽天の本社もあり、近代的洗練された建物が林立している。
 
しかし「二子玉川」から2つ先の駅「等々力」にくると風景は一変する。そこは大自然と出会う場所。都内唯一の渓谷 等々力渓谷がある。等々力渓谷は等々力駅からわずか徒歩で3分ほど。昭和初期、当時ゴルフ場があった事で命名されたゴルフ橋のたもとから階段を降りると、緑のカーテン。緑のカーテンをくぐるとそこは緑の水の楽園だ。ついさっきまで街中にいた事が嘘のような風景を眼前に広がる。ささくれだった心を癒すにはもってこいの場所だ。
 
更に2つ先は「自由が丘」は都内随一のおしゃれタウン。スイーツから洋服、文房具等の小物、赤ちゃん用品まで女子の欲望はほとんどここで満たされる。
 
電車を乗り進めると「大岡山」に到着。
ここにはノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典さんが教鞭をとっている東京工業大学がある。この大学はジャーナリスト池上 彰さんがリベラルアーツセンター専任教授を一時やっていたことでも有名。このアカデミックな街「大岡山」は学生の街でもあり、リーズナブルな定食や美味しいラーメンを堪能できる場所でもある。
 
「大岡山」の先は「戸越公園」
駅名にもなっている戸越公園は肥後国藩主細川家下屋敷の庭園跡を利用して造られた公園。隠れた桜の名所としても有名だ。そこから10分ほど歩くと有名な戸越銀座商店街にぶつかるのだ。
 
今あげた5つの駅は東急大井町線16駅の中のわずか3分の1。沿線の全16駅すべてに今あげたような魅力がぎゅっと詰まっている。もし海外からのお客様が1日だけ東京観光をしたい、という事であれば、私は絶対東急大井町線に乗る事を進めるだろう。この路線は、はとバスで周るような観光地ではないが、リアルな東京、真実の日本を知るには一番良いと思っている。東急大井町線沿線を知らずに東京、日本を語るなかれ、だ。
 
今回は紙面の関係もあるので私が愛してやまない「上野毛」を紹介したい。
上野毛の野毛はアイヌで崖の意味の「ノッケ」からきている。確かにこの地域は高台であり、上野毛の坂を下りていくと多摩川に辿りつく。またここは太古の昔から近未来までをタイムスリップを経験できる街でもある。
 
大井町線 上野毛駅に着いたらまず駅自体を注目してほしい。この駅の設計は世界的な建築家 安藤忠雄さんによるものだ。道路に分断された2つの改札をつなぐ大屋根には、ポッカリと開いた8mの円形トップライトがある。駅の外観もとても近未来的。最初この駅を見た時に私は宇宙ステーションのように感じたが、感じ方は人それぞれかと思う。是非上野毛駅を見て自分なり感じてほしい。
 
上野毛駅を十分堪能したら、駅の前を通る環八通りを越えて2本目を右に入る。そして少し歩くと「五島美術館」がある。この美術館は言わずとしれた東急グループを築いた故五島慶太さんが設立した美術館。美術館本館は、吉田五十八さんが設計。寝殿造の意匠を随所に取り入れた建物は、近代建築史における貴重な建造物である。展示物は五島慶太さんが生前収集したと東洋及び日本の古美術が中心。特に源氏物語絵巻と紫式部日記絵巻はどちらも国宝である。どちらも歴史の教科書などで一度はみているかと思うが、一生に一度くらい本物を見てみてはいかがだろうか。
 
五島美術館を後にして駅方面に戻ってくると「UNCLE SAM’S SANDWICH」 1978年創業。今年43年を迎えるアメリカンスタイルのサンドウィッチ専門店。実をいうと私は上野毛に不満が1つだけある。それは気軽にいける飲食店が少ない事だ。この「UNCLE SAM’S SANDWICH」は上野毛では貴重な私が気軽に行ける飲食店である。ここのメニューには60種類のサンドイッチ。どのサンドイッチもたっぷりの具が絶妙にトーストされたパンで、はさんである。しかし、よくありがちな大量のドレッシングやマヨネーズはかかっておらず、味付けは絶妙。私が特に好きなのはBLTだが、何せ60種類。メニューをじっくり見ながら自分好みのサンドイッチを選んでほしい。ここのサンドウィッチは1品で十分お腹がいっぱいになるが、もし恋人、友人と来た場合はもう一品パンケーキ(アイスクリーム付き)をオーダーするのも一興。デザート感覚で食べる事ができる。また毎週金曜日はチキンカレーも食べられる。じっくり煮込んでホロホロになったチキンが丸ごと1本入っているカレーは限定20食。こちらを狙われる方は早めにお店に行く事をお勧めする。私は先日カレー食べたさに11:30にお店に行ってオーダーしたが、既に売り切れと言われてしまった。
 
「UNCLE SAM’S SANDWICH」でお腹を満たしたら、来た道を戻るようにまっすぐ進むと上野毛自然公園がある。この公園はほとんど遊具がなく、初めて訪れると、なんとも殺風景な公園だ。今回ご紹介する上野毛スポットはいつ行っても楽しめる所がほとんどだが、この公園だけは違う。ここは必ず春の桜の開花時期に来てほしい。満開の桜が咲き乱れ、落ちた桜の花びらが地面に引き詰められる。まさに桜のじゅうたん。桜の名所と言われるところは都内でも多いが、ここは隠れた名所。桜のじゅうたんの光景は一度是非みてほしい。
 
上野毛自然公園をでて駅を遠ざかるようにさらに住宅街を進んでいく。右手をなるべく注意してほしい。というのも注意深くみていないと見逃してしまうからだ。右手を注意深くみていくと「上野毛稲荷塚古墳」という高さ50cmほどの柱が立っている。柱がたっている1m幅くらいの脇道にはいっていくと、そこには前方後円墳が! 東京の住宅街にど真ん中に前方後円墳があるのだ。お恥ずかしい話だが、私はこの地に来るまで前方後円墳を見た事がなかった。柵が設置されているため近くまでいけないのが残念だが、古墳の形状は十分確認できる距離。柵の前に立っている看板によると、「規模は全長20数メートル、後円部の高さは約3メートル。築造された時期は古墳時代前期、4世紀後半と推定される」との事。あの有名な高松塚古墳が7世紀末から8世紀初めに築造されたと言われているので、高松塚古墳より300年も早く築造された事になる。そのような古墳がこの住宅街で見られる事は感動に十分値すると思う。
 
実は上野毛にはもう一箇所古墳がある。それはさらに歩を進める事、約10分。玉川野毛町公園の野球グランドの隣の「野毛大塚古墳」。この古墳は先ほどの「上野毛稲荷塚古墳」と違って、触れる古墳、登れる古墳である(現在は補修中のため登る事は不可)これも古墳前の立て看板によると「全長82メートル、後円部の高さは10メートルの帆立貝式の前方後円墳」とある。上野毛稲荷塚古墳の全長、高さとも4倍程度だ。世田谷区のホームページによるとこの野毛大塚古墳は帆立貝型古墳としては最大規模とされているとの事。そのような古墳の隣では草野球の練習が今日もされているのだ。
 
今回は大井町線 上野毛駅周辺をご案内した。移動距離はスタートした上野毛駅から野毛大塚古墳までわずか1キロメートル程度。この1キロメートルの散策で4世紀(上野毛稲荷塚古墳)から11世紀(五島美術館 紫式部日記)へ。そしてさらには現代(安藤忠雄設計 上野毛駅)までタイムスリップを経験できる。
 
こんな大井町線 上野毛の魅力を知らずに死ななくて本当に良かったと思うのだ。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
椎名 真嗣(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

北海道生まれ。
IT企業で営業職を20年。その後マーケティング部に配置転換。右も左もわからないマーケティング部でラインティング能力の必要性を痛感。天狼院ライティングゼミを受講しライティングの面白さに目覚める。現在自身のライティングスキルを更に磨くためにREADING LIFE編集部ライターズ倶楽部に所属

この記事は、人生を変える天狼院「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」をご受講の方が書きました。 ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2021-02-08 | Posted in 週刊READING LIFE vol,114

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