【女優がいる書店】舞台の打ち上げってどんな様子なんですか?《女優デイズ》
座長の乾杯の音頭で大宴会が始まった。
杯を傾ける人々の顔は開放感と満足感でほころんでいて、少ないつまみでも酒はすすみ、話題はもはや下世話な話にまで飛んでいた。
某舞台公演の打ち上げ会場は、若い役者の多い座組らしく活気に満ちている。
出来上がりきった隣りの個室のサラリーマンたちに負けず劣らずの大騒ぎである。
舞台公演の最後の楽しみだ。
カンパニーとして役者だけでなく裏方のスタッフまでもが一丸となって作品のために朝から晩まで命を削る。そしてその組での打ち上げは、座組の解散と共に各々が次のステップへ上がるための儀式でもある。
寂しさもあいまって、より一層声が大きくなるようだった。
「お待たせしました、」
の声に、若手俳優が待ってましたの合いの手を入れる。
宴会に遅れて登場したのは制作の代表であった。劇場での作業を終えて遅れての到着である。
改めての乾杯を!と囃し立てられ到着から息つく間もなくグラスを勧められていた。
困ったような表情の後で「ひとことだけ、」とビールの注がれたグラスを受けとった彼が、
お疲れ様でした、の挨拶の後、ぽつりと、
お金を払う、ということに対して、皆さんは何を返しましたか?
それじゃ乾杯、との控えめな音頭で宴会は再開され、挨拶回りで皆が席を立つ中で、本山由乃は席を立つことに遅れをとった。
釘で足を打ち付けられているように、動くことができなかったのだ。
盛り上がり、箸が舞い、揚げ物の皿がすぐに空いていく中で、一人、じんと痺れを感じていた。
劇場まで足を運んでくれるお客様は、作品であったり出演者であったり、それらへの期待にチケット代を支払う。まだ未熟な演技だろうと、以前より台詞がなめらかだという成長を垣間見てチケット代を払った価値があったと思える。
作品のクオリティが高ければ、もっと出しても良いと思うし、そうでなければ高かったな、と思う。
役者はお客様が満足していただけるように作品に携わり、その中で成長していく、新たな一面を、新たな引き出しを、役者は提示し続けなくてはならない。
そして、そんな役者に給料を出すのは制作する側であり、お客様よりもシビアに役者の事を見ている。お客様を満足させる事が出来る、だけでは無いのだ。
たとえ演技が上手くったって、たとえ魅力的な容貌だったって。
現実は数字として迫っている。
この世界で生きていく覚悟、が、決まった気がして、本山由乃は追加の酒の注文ボタンを押した。
劇団天狼院マネージャー本山です。
先日まで舞台の本番でワークショップや天狼院にも顔を出せずにおりました。
商業舞台に出演して感じたのは、自分の役者としての価値は如何ほどなのか、と言う事です。
匠として、職人として腕を磨く事はもちろんなのですが、それとは別のところでも抗っていかねばならない。
劇団天狼院ワークショップでの合い言葉『心を強く!』を今こそ唱える時………かも、と思った打ち上げでありました。
劇団天狼院、劇場と日程がほぼ確定しました。
詳細は追ってお知らせ致します。
オーディションも開催しますのでお楽しみに!
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