僕は京都天狼院書店で恋に落ちた
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:近藤 泰志(ライティング・ゼミ平日コース)
「一目あったその日から、恋の花咲くこともある」
まさにそんな感じだった。
その日もいつもと同じようにライティングゼミ平日コース受講のため、僕は京都天狼院書店を訪れてレジで紅茶を注文していた。
注文した紅茶を受け取るまでのほんの一瞬だった。
僕は恋に落ちた。
ほんの数秒前まではいつものと同じ風景だった。これが運命的な出逢いというやつなのか。身を焦がすような恋の訪れに僕は気持ちを抑えることが出来なくなっていた。
注文した紅茶を受け取ると僕は高ぶる気持ちを抑えながらスタッフの女性にお礼を言った。
「あの……あ、ありがとうございました」
そしてそのまま紅茶を手に階段を昇り2階の席に着いた。
ノートとペンを取りだし、熱い紅茶を飲んで講座が始まるまで待機をしていたが、気持ちは一向に落ち着かない。思い出すのは先ほどの事ばかり。まさか天狼院書店の店内で恋に落ちるなんて、いったい誰が予想できるだろうか。奇跡か、いや必然なのか、そんなことすらもはやどうでもよくなってきた。今は出逢ってしまったという事実だけが僕の心を支配していた。
「そういえばさっき立ち寄った安井金毘羅宮様に良縁が来ますようにとお願いしたが、もう叶えてくださったのか。さすが私の安井さん。仕事が速いな」
なんてことを考えていたら講座がはじまった。しかし案の定、講座の内容はほとんど頭に入ってくるわけもなく、ホワイトボードに書かれた文字を書き写すだけで精いっぱいだった。申し訳ないが今の僕は講座どころではないのだ。
「この遅れは後からアップされる動画を見直して取り戻します。だから今日は許してください」
僕は心の中で講師の三浦さんや、この場を提供してくださっているスタッフのみなさんにお詫びをした。
「早く下に降りて行動に移さないと好機をのがしてしまう……そんなことになったら、きっと半月は後悔して過ごすことになる。 それは絶対に嫌だ」
僕は焦る気持ちをぐっと抑えて、中座することもなく受講をした。
講座も後半に差し掛かりワークショップの時間に入った。ドリンクのお代わりを買いに行く人など中座をするが何人かでてきた。
「今しかない」
僕はそう決心して、足早に階段を下りて1階に向かった。
心に迷いはない。僕はレジにいた女性にこう告げた。
「先ほど見かけてから気になってしまって、講座どころじゃありませんでした」
「えっ? ……出逢ってしまったのですね」
「……はい。 この機会を逃してしまったらどうしようかと、そればかり気にしていました。よろしくお願いします」
「ありがとうございます……お会計、638円です」
僕は1冊の本と千円札を彼女に手渡した。
「よかったです。1冊しかなかったので、講座中に売り切れたらどうしようかと」
「ドキドキでしたね。はい、お釣りとご本です。 カバーおつけしますね」
「ありがとうございます。はい、ドキドキでした」
お会計を済ませて足早に2階に戻って自席に座る。パラパラと買ったばかりの本のページを捲って、軽く目次に目を通す。これから読み始めるこの本の内容に想いを馳せるとまだ読み始めていないのに、軽くドキドキしてきた。早く読み始めたい気持ちが先走ってしまい、いつもなら終わってほしくないと思うはずの講座も今日に限っては早く終わってほしいと思っていた。一刻も早くこの本を読み始めたい。まったく我ながら身勝手な奴だ。
その本は大好きな作家さんの本だった。著者は今野敏さん。作家としても著名な方なのだが、空手家としても自分の流派を立ち上げて門弟をとり指導もされている。機会があれば僕も今野さんの流派で学んでみたいと今も思っている。そんな敬愛する今野敏さんが生い立ちから空手のこと、はてはご自身の作家生活について語っているエッセイ『流行作家は伊達じゃない』に出逢い、僕は恋に落ちた。
こんな素敵な本を選んで棚に置いてくれたスタッフの方に僕は心の底から感謝した。
もしかしたら、僕以外はだれも買おうとは思わなかったかもしれないが、そんなことはどうでもいい。なぜならこの本はレジ横の本棚から僕に「私はここにいるよ」と呼び掛けてくれていたのだ。そしてそのラブコールを僕は受け止めた。
恋が成就したのだ。
もうそれだけで十分ではないか。
他に何をこの本に求めるというのだ。
出逢った本と僕が恋に落ちてしまうことは1年に1回あるかないかの事だ。前回、僕が恋におちた本は本橋信宏さん著の『全裸監督』だった。あの時も衝撃のあまり書店で喜びに打ち震えた。
もしかしたらこの本との出逢いは前回以上かもしれない。
僕と出逢ってくれてありがとう。
僕は京都天狼院書店で1冊の本に出逢い、そして恋に落ちた。
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