心理学用語とステーキの骨の関係性
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記事:髙橋孝子(ライティング・ゼミ特講)
ようやく梅雨が明けた。そして、毎年「夏だな」と思える企画が始まった。
私は車での移動では、NHKラジオ第一放送を聞くことにしている。たまにはFMも聞くが、情報を得るのならNHKが一番良いと思っている。
最近のNHKはとにかく面白いのだ。落ち着いた口調の中に親しみとクスリと笑える要素が数多く散りばめられ、アナウンサーと各パーソナリティの掛け合いが面白い。
パーソナリティとアナウンサーは成人した人の会話の楽しさなのだが、夏休みになるとこれが一変する。
「夏休み化学電話相談」が始まるからだ。
子供たちの素朴な疑問を各分野の専門家が頭を抱えつつ、四苦八苦しながら回答をしていく。
電話での受け答えのため、葉書のように事前に調べる事が出来る訳ではなく、手元に膨大な資料があるわけでもない。文字通り、「子供と専門家の真剣勝負」なのだ。
中には、かなりの知識を蓄えていて、専門家に挑む子供もいる。そうとう深い知識を繰り出しながら質問をぶつけていくのだ。
そのような時にはかなりの聞き応えを感じる。このような質問をするのは小学校中学年以上の子が多い。
しかし、そのように専門的な用語を出して理解できる子供が質問をしてくるばかりではない。小学校に上がる前の幼稚園児や小学校低学年の子供も質問してくるのだ。
そのような子供に対しての回答を聞いていると各専門家がとても苦労していることが分かる。
そして、その専門家の解答で小さな子供と接したことがあるかどうかが分かってしまうのだ。
小さな子供と接したことがある専門家は難しい用語をいかに理解しやすく簡単な言葉で噛み砕いていこうかと四苦八苦する。
ところが、小さな子供と接したことがないだろうと思われる専門家は難しい専門用語をそのまま発してしまう。
先日は小学校4年生だったと記憶しているが、質問の内容が「どうして友達と同じものを持っていたりすると嬉しい気持ちになるのですか」というものだった。
これに答えた心理学の専門家は「認知的斉合性論」のあたりの用語を使ってそのまま説明し「聞いたことあるかな?」と逆に聞くのだ。
私は心の中で即座に「そんな事知る訳ないだろ!」と全力でツッコミを入れる。
当然子供は「知らない」と答えるのだが、その用語に対しての噛み砕いた説明がイマイチすぎて「質問した子供の頭の中はフリーズして、パソコンの待機中マークのようにグルグル回っているんだろうな」と想像してしまう。
心理学を学んでいて、児童心理学やら発達心理学やら学んでいるだろうに、小学4年生に心理学用語をぶっ放すとはなかなかな御仁である。
通常の会話でさえ、意味を理解しきれていないような子供に専門用語を浴びせる回答者はそこそこいて、聞くたびに「そりゃ理解できんだろ!」と心の中で毒付きながらツッコミを入れている。
このツッコミも楽しみの一つなのだが、回答者の説明の仕方は講師業をしている私にとってはとても勉強になることが多い。
だれもが納得できる素晴らしい回答をする専門家もいる。そのような回答を聞くととても参考になる。講義での説明の仕方も工夫しようと意欲が沸いてくる。
いつだったか、こんな質問があった。
「どうして動物には骨があるのですか?」
アナウンサーが疑問に思った経緯を聞くと、こんな返事があった。
「みんなでご飯を食べている時にお肉を食べている時に、骨があって食べにくかったから」
ここで専門家が答えていく。肉や皮は支えるものがないことを丁寧に説明し、こんな質問をした。
「動物の骨が柔らかかったらどうなるかな?」
返ってきた答えが秀逸だ。
「全部食べられる」
確かに!ご飯を食べている時に硬い骨が邪魔で疑問に思ったのだ。だからこそ、質問の原点にある「食事での出来事」が質問の中心にあるのだ。
専門家としては「骨が柔らかければ体を支える事が出来なくなる」という回答が欲しかった。
ただ、質問の仕方が良くなかった。彼女の「食」に対する思いから離れて、動物の体に対しての知識へ意識を向け切れていなかったのだ。
この時の私は心の中で「彼女が正しい!」と呟いていた。
人に何かを伝える事は難しい。
自分が見聞きし、経験したことならば脳裏に浮かぶが、そうでないものはどうやっても思い浮かばない。
「自分が知っていること=相手が知っていること」ではないのだ。
「相手が知っていること」や「誰もが知っていること」などを想像し、理解しやすい言葉に置き換えたり、噛み砕いた表現にしたりすることはとても重要だと、この放送を聞いて思うのだ。
私は難しい用語をそのまま伝えないように心がけているが、果たしてどれだけできているだろう? 私の経験し、学んだことを相手が想像できるために何を例に挙げているだろう?
そのように、自分の紡ぎだす言葉を思い返し、日々表現を精査している。
子供の素朴な疑問に大人が全力で答えるその姿に、私は自分の仕事に対する反省と未来への誓いを新たにするのであった。
***
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