人生で起こるできごとはくせっ毛のようなものである
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:中村真紀(ライティング・ゼミ日曜コース)
「人生で起こるできごとは、くせっ毛のようなものだ」、と最近思う。私は、かなり強いくせッ毛で、それがずっーとコンプレックスだった。子供の頃から、きれいなストレートヘアに憧れ続けてきた。ところが、先日、美容院に行ったら、美容師さんが「中村さんのくせっ毛は、本当に素晴らしい。ほれぼれする。こんな素敵なくせっ毛を持っている人はそうそういませんよ。」と言うではないか。そのとき、思ったのである。カットや髪形次第で、私のくせっ毛が、「素晴らしい」とプロにいわれる長所にもなれば、どうにも厄介な短所にもなるように、人生で起こるいろいろなことも、解釈・意味づけ・生かし方次第で、すばらしい宝物にもなれば、忌まわしい不幸なできごとにもなるのではないか、と。
繰り返しになるが、私は、かなり強いくせっ毛である。子供時代のヘアスタイルは、いつも、ショートカットだった。ちょっとでも、長く髪を伸ばそうものなら、髪の毛があっっちやこっちにいってしまい、収拾がつかなくなってしまうので、それしかできなかったのである。
友人や、友人の母親たちからは、「まきちゃん、ショートヘア似合うね」と言ってはもらったものの、大半の女の子が、髪を伸ばし、それをきれいに三つ編みにしたり、ポニーテールにしている中で、ショートカットしかできない自分に、ちょっとした引け目を感じていた。髪の毛伸ばしてみたいなあ、という憧れの気持ちは、常にあったように思う。
大学生になったころ、いわゆる、「ストレートパーマ」というもの、世の中にがあることを知った。大喜びで、かけた。ストレートパーマも、今はだいぶ進化したのだが、その頃のものといったら、板のようなものを髪に当てて、とても強いパーマ液で何時間も我慢しなければかからないような、代物だった。パーマ液があまりに強いので、髪の毛自体も傷んでしまうようなものだった。それでも、子供の頃から、きれいなストレートヘアに憧れ続けてきた私は、喜々として、その苦行に耐えた。そして、やっと、「人並み」のストレートヘアを手に入れて、ほっともしていた。
残念ながら、その頃の写真は、見たくもない。そんなにまで、喜んで、苦労して、手にいれたストレートヘアは、残念ながら、不自然で、まったく私には似合っていないのである。しかし、若くて無知だった私は、それが、自分に似合っていないということを認める勇気も知性ももっていなかった。それどころか、私のストレートパーマ熱は、40代過ぎまで続いたのである。
さすがに、40を過ぎて、美容師さんからのアドバイスもあり、ストレートパーマは卒業した。次に手を出したのは、いわゆる「パーマ」である。子供の頃からのトラウマか、私はどうしてもショートヘアがいやだった。「女性の髪は長くなければいけない」という変な思い込みに囚われていた。しかも、ああ、恥ずかしいことだが、その思い込みを私に植え付けたのは、熱烈な片思いに終わった憧れの男性である。表面的には、仕事を持つ女性として、
男性に負けじと肩に力が入っていたのに、実際には、ステレオタイプな女性観に影響されて、自分に似合いもしない、長髪に憧れていたこと自体も、痛い思い出である。
そんな、思い込みから抜けることができたのは、50代になってから出会った、友人に紹介された凄腕の美容師。彼は、私をひとめみるなり、ショートカットが似合うと判断した。そして、私のくせ毛を生かすべきだ、ということも。彼の腕にかかると、私のくせ毛は、宝物に変わった。ひさしぶりにみる、自分のショートカット姿。自分の心が成熟したせいもあるが、それは、今までのどの髪形よりも似合っているように思えた。自分らしいとも思えた。一方、実は、それは子供時代に、母が切ってくれたショートカットに似てもいた。
そして、先日の美容師さんの言葉である。凄腕のプロである彼が、私の髪を切りながら、しみじみと「中村さんのくせっ毛は、本当に素晴らしい。ほれぼれする。こんな素敵なくせっ毛を持っている人はそうそういませんよ。」と言うではないか。最近になるまで、ずっと、厄介な短所だと思い込んでいた、くせっ毛が、実は、得難い宝物だったとは。そして、この美容師さんのようなプロの手にかかれば、それを生かして、私に似合う、素敵なヘアスタイルになるのだとは。このくせっ毛を宝物と気づかず、それを生かさない「ストレートヘア」にしようとしていたから、うまくいかなかったのだ。なんという遠回り。
人生で起こる様々なできごとも、実は、くせっ毛のようなものなのではないか?一見、忌まわしい出来事が、実は、意味づけや解釈次第で、得難い宝物になるのではないか?髪の毛を切ってもらいながら、そんなことを考えた。
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