アラサーが甘え下手を卒業する時は。
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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:エリイ(ライティング・ゼミ日曜コース)
私は人に頼ったり、時間をもらったりするのが極端に苦手なタイプの人間だ。
職場では、迷惑がかかることや全体の進行が遅れるのが最も悪だから、
責任を全うするという意味で、きちんと周りに協力要請する。
ただ、自分自身においてはとても苦手なのだ。
ハタチを過ぎた頃、実の母親にまで「もっと人に頼った方がいい」と言われた事がある。
忘れっぽいことを自覚する母が、「しっかりしてね、忘れないでね。」
そう何回も子供の私に言い聞かせてきた賜物なのだが。
どれくらい苦手かというと、相手の時間を押さえることすらドギマギするのだ。
例えば、会議のスケジュールを入れる時。
今は便利な世の中で、会社の全メンバーの予定がネット上のカレンダーで一目瞭然だ。
社長のスケジュールすらもボタン一つで見れる。
呼びたいメンバーを選べば、1クリックで空いている時間が表示されるなど、手順はとってもイージーだ。
それなのに私は尻込んでしまう。
「Aさんは午前中に会議が埋まっているから、お昼は避けて夕方に入れた方がいいかな?」
スケジュールがあまり埋まっていないBさんは、
「朝イチの会議の方が、1日のリズム出やすいかな?」
「リフレッシュも兼ねて、午後の会議の方がいいかな?」
など、カレンダーに表示されるスケジュールにストーリーを作ってしまう。
そんな具合に迷いに迷うため、最終的には目をつぶって、えいや!と言いながら予定を入れる。
大袈裟ではない。感覚的には事実だ。
翻って、他人にスケジュールを入れられることが嫌なのか? というと
朝イチだろうが、終業時間をオーバーしようが、気にした事は一度もない。
思えば、小学生の頃から、友達を誘うのにひと踏ん張り必要だった。
平日は遊ぶことがルーティン化されていたので苦労しなかったが、
土日に、「あえて」遊びの予定を入れる時は、自分から声をかけるのが億劫だった感覚が微かにある。
三つ子の魂百まで、というのだろうか。
信頼のおける同僚に、こういった無駄に気を使い過ぎてしまうことを吐露した時、
「自分が思う以上に、誰もあんたのことを気にしていない」と返答をもらったことがある。
お酒の勢いもあるが、真実を言い当てた実に切れ味の鋭い指摘だった。
そう、わかっている。
どうでもいいこだわりにかちこちにされて自分を苦しめ、誰の得にもならないことを。
パートナーと暮らしている時もそうだった。
かちこちのルールを自分に課したせいで、私は私をどんどん追い込んでいった。
相手が嫌がらないように。迷惑をかけないように。
気がつく前に、全ての家事を終えておこう。さもなければ、自分の持ちポイントが減る。
そんな風に自分のポイントを死守するために、毎日ゲームを戦っていた。
「やって」なんて頼んだ事ないけど?
という喧嘩中の捨てセリフを聞いた時は、本当に絶望した。
その後もそのゲーム生活を何年も続けていたが、
ある時本当に「ぷつり」と糸が切れて、昨年末、電車で小一時間の実家で10年ぶりに過ごすことになった。
基本的に、我が家は個人主義・放任主義で、
実家を出た後、たまに帰省しても食べ切れないほどの食事で歓迎されないし、
一人暮らしの家に野菜やお米が届くなんてことを経験したことは一度もない。
そんなこんなで10年ぶりの実家生活も、つかず離れずのほどよい距離感で行われていたが、
しばらくして、ハッとしたことがある。
母や妹からの
「〇〇しようか?」「〇〇手伝おうか?」「XXまで送ろうか?」という言葉を
私は全て「大丈夫」と断っていたのである。
パートナーとの生活では、全て自分でなんとかしていた。
協力してもらえれば、すぐ終わることも自力でこなした。
だから、実家に帰っても自分のポイントを無意識に守っていたのである。
でも信頼関係にある人同士は、
1人で必死に我慢をしなくても保たれ、少し欠点があっても責められなるような脆いものでは無いという事に母と妹と過ごす数ヶ月にふと気づいた。
なんとも、頭を殴られたような衝撃だった。
できたばかりの友人と二軒目のお店でウイスキーを引っ掛けながらその話をした時、つい涙が出た。
私にとって、信頼できる人にはもっと気楽に肩を借りてもいいんだ。という発見は、それくらい嬉しかった事らしい。
世間はこんな状況で、仕事はフルリモート。
親しい友人たちと都会でおいしい食事をする機会もめっきり減り、
通勤の利便性や繁華街へのアクセスは、住む場所を選ぶ条件には必須ではなくなってきた。
そんなお盆中に、
母と私の「実家帰ってきたら」と「実家に帰ろうかな」が見事合致した。
今の家賃の半分は確実に貯金できるし、悪くない。と思いつつ、
即答しない自分もそこにいた。
なぜだろう。
一人暮らしの家に戻るまでの道でさっきのやりとりを反芻しつつ、
副都心のキラキラを見下ろすことができる坂道で私はおもむろに立ち止まった。
そうか、私は行き帰りに観るこの景色が嫌いじゃない。
なんだかんだこの風景に力をもらえるんだ、と。
おそらくこの先にはもっとしんどい事があるだろう。だから実家に戻るのはその時まで取っておく。
いつなんどきも、自分を受け入れてもらえる場所があり、一人で頑張り過ぎる必要がないことを知った今。
甘え下手を卒業するのは、もう少し先でもいいかな。と、私は前向きに決心した。
***
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