病気になった時、あなたは言う派?言わない派?
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記事:みき(ライティング・ゼミ平日コース)
「ガンになったこと、パパたちに言った方が良いかな」
姉と私は二人姉妹。二人共、既に結婚をしているけれど、何かあれば、お互い聞き合う仲である。そして、私が、ガンになった時、旦那以外にそのことを伝えたのは、この姉だった。すると、顔色を一切変えず、開口一番、「私の知り合いにも、乳がんの人多いよ。3人に1人っていうもんね」と、転んで膝を擦った時くらいの反応。で、私は両親に話すべきかどうか、最初に書いた質問をした。彼女の答えは「言う必要ないでしょ。言っても治るわけじゃないし、心配させるだけ」と。確かに、両親というのは、子どもがよっぽどの有名人だったり、犯罪を犯したりしない限り、日々の出来事は知らないし、確認の方法もない。必要のない心配の種を渡さなくていいのだ。もちろん、隠せない病気だったり、一緒に助け合って乗り越えていく、という選択もあるだろう。
私は、妊娠した時も6ヶ月になるくらいまで会社に報告せず、普通に仕事をしていたし、ガンがわかった時も会社の人には話さなかった。手術は全身麻酔のため、3日は入院しなくてはいけなかったけど、子どもの病気といった別の理由で休みをとった。今思えば、何でこんなに頑なに自分の身体のことを言わず、“普通”そうに働いていたのか。
妊娠のときは、一度流産した経験があり、早くから言わないようにしたのと、安定期になると、“普通”に働けるし、お腹も目立たないから、仕事の引き継ぎの調整が必要になるギリギリまで言わなくていいか、くらいのことだった。しかし、ガンとなると、場合によっては、死を連想する病気だし、話せばおおごとになる。そして何より、いつもと変わらずいたとしても、気を遣われて、心配されるのが、嫌だった。“心配”では、病気は治らない。多分、自分も、大したこと無い、と思いたかったし、心配したくなかったんだと思う。
手術後も、何事もなかったように仕事をして、家でも息子の母親だった。当時、3歳だった息子には、出張で居ないことにして、彼が生まれて初めて、違う場所で3晩を過ごした。手術後は、少し甘えてくるところもあり、傷を見せずにお風呂に入るのも一苦労だったのを覚えている。とにかく、ガンであった自分に向き合っている暇などなかったというか、向き合いたくなかったんだと思う。
ここまで書いておいて何なのだが、この話には後日談がある。父は亡くなる直前、病院横のホスピスに移っていた。そのホスピスがキリスト教系列だったこともあり、定期的に牧師さんが話に来たり、ボランティアさんが歌いに来てくれたりするところだった。家族が、父の最期に向かって、少しづつ準備をしていく過程が用意されていた。そして、夜中に激しい呼吸困難になる様になり、モルヒネを打つことになった。モルヒネを打つと、死までは長くて3日。もうそろそろだな、というタイミングで、先生から「では、ご家族、お一人お一人がお父様と二人でお話する時間をとって下さい」と言われ、母、姉、私の順番で、1人ずつ交代で部屋に入った。「モルヒネによって痛みを抑え、目は閉じているけれど、聞こえているので、ちゃんとお話してくださいね」と言われる。確かに、目は閉じているけれど、呼吸器により定期的に大きく息をするので、同時に顔も動き、定期的に頷いているようにも見える。まずは、私をこの世に送り出してくれたことへの感謝。いろいろ教えてくれたことへの感謝。広告の道に導いてくれたことへの感謝。そして、私は、いたずら心が出た。こんな時に出さなくてもいいのに、出た。
「あのね、パパ、私、ガンになったの。そして、会社も辞めたの」
一瞬、目が動いたような気もしたけれど、定期的な大きな呼吸による頷きがあり、よし、大丈夫だ、わかってくれたはず、と勝手に解釈。生きているうちに心配はさせたくなかったけれど、子どもに内緒にされるということの寂しさを、まとめて解消した、と思っている。そして、その日の深夜12時過ぎ、父は亡くなった。私が話したタイミングがベストだったかどうかわからないけど、私としては、ベストを尽くした。
必要のない心配はさせたくない、という気持ちと、言わないなんて水臭い、という気持ち、どっちがいいとは決められない。しかし、いつも「たいしたことない」と流してくれる姉にだけは話してしまうということは、過度に心配されないから、正直に言う、ということか。よし、私も、どんな時も「たいしたことないよー」って笑い飛ばそう。病気の話をできるくらいの信頼を得るには、“心配”より“笑い”なのだ。そして、本当は誰よりも心から心配してくれている姉には、いつでも最高の“笑い”を用意しておきたい。
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