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草津温泉でワーケーションをしてみたら


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記事:松浦純子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
午前中の在宅勤務を終えると、小さめのキャリーケースにノートパソコンを大慌てで詰め込み、草津温泉に向かうべく家を飛び出した。
 
会社は昨年2月から基本は在宅勤務となっており、新型コロナウイルスの第二波が少し落ち着いていた頃、流行りにのってワーケーションなるものを試してみたくなった。
ワーケーションとは、観光地や帰省先など自宅以外の場所でリモートワークをする過ごし方のことだ。ワーケーション=ワーク(仕事)+バケーション(休暇)を表す造語で、コロナ禍によってできた新たな生活様式の1つともいえる。
 
仕事のあと何をしたいか考えると、こんこんと湧き出る温泉にゆっくりと浸かりたかった。私の癒しには温泉は必須アイテムだった。
ワーケーションの場として群馬県の草津温泉を選んだのには、様々な理由がある。
 
草津温泉といえば、兵庫県の有馬温泉、岐阜県の下呂温泉と並んで日本の三名泉と呼ばれている。さらに、にっぽんの温泉100選(主催:観光経済新聞社)による2020年度の総合ランキングでは、草津温泉は不動の18年連続第1位を獲得している。どんなに強いスポーツのチームだってこれほど勝ち続けることはできない。温泉の神様だ。
 
湯量が豊富で、自然湧出量は日本一、毎分32,300リットル以上もの湯が湧きだしているという。1日で換算するとドラム缶約23万本というのだから、どれほど恵まれているかわかるだろう。そのため草津温泉の多くの旅館、ホテルの温泉は源泉かけ流しといって、お湯を循環させずに、贅沢にもお湯を流し続けることが可能となっている。それも草津温泉の大きな魅力の1つだ。
 
温泉と言えば草津温泉というほど、子供の頃から数えきれないほど訪れていたのに、ここ10年は他の温泉地巡りをしており、草津からは足が遠のいていた。
 
空白の10年のあいだ、草津温泉はそのビジネスにおいて大きな変貌を遂げていた。1泊2食付きという温泉旅館なら当然の宿泊スタイルが、素泊まり、もしくは1泊朝食付きのカジュアルなプラン中心になっていることに驚いた。
また、1人で温泉旅館に泊まると宿にとってはコスパが悪いため、非常に割高か、そもそも設定をしていないところもあったが、おひとり様歓迎と1泊2食付きの手ごろなプランがある宿もあった。以前はひとりで草津の温泉旅館に泊まることは非常に敷居が高かったが、今はおひとり様にも泊まりやすい身近な場所になっている。これが今回選ぶ大きな決め手の1つとなった。
 
昔の草津温泉は飲食店の数が観光客の数に対して圧倒的に少なく、食事場所に苦労したが、かつて通りに軒を連ねていたお土産物屋さんの多くは、飲食店に様変わりしており、選択肢は以前よりもずっと広がっていた。ただ、人気店は常に行列ができており、時間内であっても一定数売れたら暖簾を下げてしまうところが多いので注意されたし。とはいえ温泉街には24時間営業のコンビニもあるので安心だ。私のように何を食べるか悩むのが面倒だという人や、せっかく温泉に来たのだから旅館のごはんを食べたい人には2食付きをお勧めするが、節約したい人、気ままに好きなものを食べたい人、食事の時間に縛られたくない人は外食や、宿によっては買ってきたものを部屋で食べることも可能で、自分の気分とお財布に相談すればよい。
 
仕事をする環境として、宿の多くが部屋でのWi-Fi環境を整えていたが、ロビーでしか使えない宿もあったので、予約時には確認が必要だ。滞在中にいくつかのWeb会議があったが、通信状況も全く問題なかった。
 
仕事を早めに終えて、ゆっくりと温泉に浸かる。
硫黄の匂いがする、ざあざあと流れるかけ流しの貸し切り温泉、あー幸せ。
 
夜は、もらっていた手紙の返事も書いた。いつもはなかなか筆が進まないのに、じぶんの想いを素直に文字にのせることができるのは、温泉地のマジックなのだろうか。書いた手紙を持ってポストに向かいながら夜の散歩を楽しむ。
昼夜を問わず賑わいを見せる草津温泉のシンボルでもある湯畑。
夜はライトアップされて幻想的な雰囲気を出し、浴衣と下駄で散歩する家族連れ、女の子のグループ、若いカップル、どれも昔の自分にその姿を重ね懐かしく思った。
 
3泊4日の滞在で仕事をしたのは2日間だが、温泉はもちろん、手紙をしたため、普段は絶対にしない早朝の散歩に森林浴と、かなり休暇寄りで過ごすことができた。
最終日を土曜日に設定したので、出発までゆっくりと散歩をしたりお土産を選んだりできたのも良かったと思う。
温泉といえば観光、旅行、癒しの場所で、そこに仕事が成り立つのか、一抹の不安と疑問を持っていたが、ワーケーションは思った以上によいものだった。仕事のパフォーマンスとしても在宅勤務と全く変わらず、むしろ仕事のあとの温泉と食事が楽しみで、普段以上に集中できたのではないかと思っている。
やってみたいけど、迷っている人にはぜひ一度お勧めしたい。
 
そんな草津温泉、今回初めて知ったことがある。
1979年10月に制定されたという草津町民憲章だ。
 
歩み入る者にやすらぎを
去りゆく人にしあわせを
 
今まで数えきれないほど草津温泉に来ていたのに、こんな素敵な町民憲章があるとは全く知らなかった。Twitterもビックリのたった22字の簡潔さなのに、こんなに人を暖かく迎え入れ、去る人の幸せを願う、懐の広いフレーズがあるだろうか。
私はますます草津温泉を好きになった。
 
春は新緑、夏は避暑、秋は紅葉、冬は雪見温泉、どの季節も楽しめること請け合いだ。
次もワーケーションをするなら草津温泉にしようと、カレンダーとにらめっこをしている。
 
 
 
 
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2021-04-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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