メディアグランプリ

音楽って時間なんだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:横山恵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
はじめて音楽を聞いたのはいつだったか、明確に覚えてる人はいるだろうか。
それは生まれた瞬間かもしれない。
生まれる前に聞いている可能性もある。
それくらい音楽は日常に溢れているし、なくてはならないものである。
そして、この世からなくそうと思っても不可能なものでもある。
人が歩けば、風が吹けば、水が落ちれば、それだけで音楽になってしまうのだ。
 
音楽という概念がなかった頃から、人々はリズムを刻み、歌い、踊っていただろう。
明治時代、学生運動が盛んになり演説が禁止されれば、代わりに歌を歌った。
戦争という生命をかける場でさえ軍歌が存在している。
 
それは今の時代に受け継がれ、民謡はフォークソングからロックになる。
軍歌は行進曲や応援歌になり、演説歌は明治演歌とされ、今は情念のこもった哀愁のあるものが演歌と呼ばれるようになった。
このようにして、私たち人類とともに変化を遂げ、時代を表してきたのが音楽である。
 

 
過去にこんなライブを経験したことがある。
「即興音楽を聴いて何時何分をイメージして演奏しているものか、考えてみてください。」
ギターや笛、口琴などを使って2分ほど演奏される。
演奏が終わり、観客に何時何分の音楽だと思ったかを答えてもらう。
 
「朝日が登る感じがしたから、5:30かな」
「昼過ぎのちょっとまったりした感じ、14:00くらい」
「夜の落ち着いた時間、23:04」
答えは様々だ。
 
同じ音楽を聴いて、全員が違う時間をイメージする。
では、人々は具体的に何をイメージするのだろう。
そう、経験である。
 
朝日をイメージした人は朝の散歩が習慣なのかもしれない。
主婦の人はお昼が一番ゆっくりできる時間なのだろうか。
夜と答えた人はココアを飲みながら本を読んでるシーンを想像したのではないか。
 
同じ音楽でイメージが違うのは、その人たちの生活リズムや習慣や経験が違うからだ。
もちろん、その時の気分や体調によっても違ってくるだろう。
別の日に同じ音楽を聴いても全然違う時間をイメージする可能性は高い。
 
音楽によって人の記憶からある時間を切り取ることができる。
つまり、時間を音楽で表すことができるのだ。
音楽は時間だという所以はここである。
 

 
もっと身近な例でイメージしてみよう。
 
ある音楽を聴いて懐かしいと感じることはないだろうか。
子供の頃に歌った童話。
中学生の時にハマったロックバンド。
恋人とよく聴いたラブソング。
 
ときに、明確な情景まで思い浮かぶこともあるかもしれない。
通学でよく聴いていたJ-POP。
電車を降りたら曲がはじまり、
サビに入ったところで、本屋さんの前を通る。
Cメロで橋を渡り、曲が終わる頃に学校に到着する。
仲の良かった友人の顔が浮かんできて、ふと、思い耽るのだ。
 
誰もが経験があるはずである。
ヴァイオリンの音を聞けばどこかの湖を思い、ピアノの音を聞けばいつかの月を思う。
人間の身体には音楽によってタイムスリップできる能力が備わっているのではないか。
しかし、それが今、少しずつ変わってきているように感じている。
 

 
まだ言葉がなく音楽で物語を語っていた頃もあったらしい。
鶴が舞う様子を5本の弦で表現したアイヌ民族。
お祝いの気持ちを太鼓で表現したアフリカ民族。
祖国の風景を笛やフィドルで表現したケルト民族。
 
それらは楽譜など持たず口頭伝承で現代まで伝えられてきた。
ときに間違えて伝わったかもしれない。
どこかで意味が変わったこともあっただろう。
そんなことを想像して楽しめることがロマンではないか。
 
いつからだろう。
こんなにも音楽に言葉が求められるようになったのは。
いつからだろう。
こんなにも音楽に意義を求めるようになったのは。
もっと曖昧なままで良かったのに。
 
数年後には誰もが同じ音楽を聴いて同じ映像を思い浮かべているような気がする。
音楽を聴いて時間を想像するということを理解できない人が増えているのではないかと恐れている。
 
現代に溢れている音楽を否定するわけではない。
ただ、今の世の中にはもう少し余白がほしい。
情報に溺れそうではないか。
 
音楽は正しく伝えられ、誰もが正しく演奏できる時代になった。
それはいいことでもあるし、おもしろくないことだとも思う。
正しい演奏だけでなく、正しい音楽が良しとされてしまう。
 
音楽って時間なんだ。
人が歩んできた時間に正解などない。
これからは、音楽にもっと余白ができればと願う。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 


 
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2021-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事