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人類史に残る勘違い


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記事:nonchan(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
勘違いしてしまった。
そんな経験は一度や二度、誰にでもある。
けれども勘違いした結果、取り返しのつかない事態を起こしてしまった。
そんな例が歴史上数多く起こっている。
今回ご紹介するのは、ある国のある王様のお話。
 
王様はとても身長が高かった。
ある書物によると192cmあったとか。
筋肉質な体で、狩に出かけるのが趣味だった。
家庭では、妻となった王妃をとても大切にしていた。
なぜなら、前王が多くの女性に手を出していたため。
王様は、前王のように決してならない、そんな決意を固めていた。
清廉潔白すぎる。
さらに王様は大変な読書家でもあった。
どんなに忙しくでも週2、3冊の本を読み、亡くなる前も本を読んでいたとか。
 
王様は政治でも活躍した。
前王の失敗を挽回した。
前王の時代では、宿敵の国に戦争で負け、庶民への負担が大きくなっていた。
庶民への負担を考慮しつつ、敵国に対して一泡吹かせる。
王様はそう考えた。
宿敵と戦うために海軍の強化を進めた。
海軍の強化にはお金が必要。
しかし王様は庶民への増税を一切しなかった。
宮廷の経費を削り、貴族に納税を促した。
庶民思いの王様だった。
 
敵国の植民地で反乱が起きたとき。
王様は今がチャンスとばかりに優秀な将軍を反乱軍に送り込ませた。
反乱軍といってもプロの軍隊ではないため、敵国の軍隊に敵わない。
反乱軍が戦えるように王様はサポートした。
長年強化してきた海軍を使い、敵国の海軍を封じ込めた。
反乱軍は勝利。
王様のおかげで敵国の植民地は独立国になった。
しかし王様は独立国に見返りを求めなかった。
当時、見返りとして土地やお金を体に入れるのが、一般的だったのにも関わらず・
王様の優しさが後に悲劇を生んでしまうとは、この時は誰も想像できなかった。
 
王様が独立国に見返りを求めなかったため、庶民にも増税せざるを得なくなった。
当然、庶民の暮らしが一層厳しくなる。
その結果何が起きたか。
革命が起きた。
初めは牢獄に民衆が押し寄せた。
しばらくして王様のいる宮殿に婦人たちが押し寄せる。
「パンをください」
「国王陛下万歳」
と叫びながらも、婦人たちの後ろには武装した革命軍が控えていた。
革命軍が宮殿を守る兵士たちを次々と倒していく。
婦人たちは囮。
目的は革命軍による王様の誘拐だった。
 
誘拐後、監禁された王様。
王様も人の子。
安全な場所に身を置きたくなるのは当然のこと。
王様にとって、自分の国以外に安全な場所がどこにあろうか。
辺境の地に落ち着き、革命の熱狂が覚めるのを待とうとした。
おそらく王様はきっと分かってもらえると思い、勘違い。
「逃亡」の二文字なんて頭にない王様。
ところが。
「国王陛下は国外に逃げようとしている」
革命軍は逃亡していると思ったらしい。
王妃は国外にある実家に帰りたかったのは事実である。
しかし王様の思いを知らず、「逃亡」と勘違いした革命軍と民衆は騒ぎ立てる。
「国王は我々を見捨てた」
 
王様は裁判にかけられた。
裁判といっても名ばかりで、実態は王様を糾弾する議会だった。
議会で王様を処刑するか否か採決され、僅差で採択されてしまった。
庶民への増税を極力避け続け、植民地の独立にも見返りを求めずに協力した王様。
そんな心優しい王様は断頭台の露と消えた。
王様の名前はルイ16世。
フランスの国王である。
 
庶民が手にかけた国王が、実は誰よりも庶民のことを考えていた。
「わたしは罪を犯したとなじられる。だがわたしに罪はなく、ゆえにわたしは恐れることなく死に赴く。わたしを殺すものたちをわたしは許そう。そして神よ、彼らがこの先流すであろう血が、どうかフランス全土を覆いつくしませぬように」
ルイ16世が監獄を出て断頭台に向かうときの言葉である。
この懸念どおり、その後もフランスは革命の嵐が吹き荒れた。
帝政、共和制、パリコミューン、また共和制……。
フランスは100年以上不安定な政体が続くことになる。
 
庶民の勘違いだったと思う。
庶民は自分たちのために心血を注いできた名君を手にかけてしまった。
しかし庶民は自分たちが行ったことを正当化しないといけない。
自分たちがした取り返しのつかないことに自分たちが耐えられないから。
だからこそルイ16世の実績は後世に伝えない。
自分たちがしてしまった勘違いは後世に伝えない。
よって現在を生きる私たちは、ルイ16世について詳しく知らない。
自ら調べてみない限り。
もちろんルイ16世にも勘違いがあったと思う。
ルイ16世は、まさか革命がここまで熱狂の渦になるとは思いもよらなかっただろう。
人類史上に残る勘違い、フランス革命。
 
人間誰しも勘違いはあるもの。
勘違いから失敗してしまうこともある。
一人の勘違いから生まれる失敗なら、取り返せる場合もあると思う。
しかし、みんな一緒に勘違いしてしまった時は?
私は「歴史を知ること」が勘違いを防ぐ方法でないかと考えている。
例えば、ルイ16世が実は名君だったように、歴史的事実を確認すると従来のイメージと異なる場合がある。
他にもフランス革命のときは国王を断頭台に送ってしまった事実がある。
大勢の人が勘違いしたとき、何が起きたのだろう。
そんな疑問を持って歴史を眺めると、自分の勘違いに気づけるかもしれない。
フランス革命の本を読みながら、私はそんなようなことを考えてみた。
私の勘違いかもしれないが。
 
 
 
 
***
 
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2021-07-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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