流産を通して気がついた忘れ物
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:はるあや(ライティング・ゼミ 日曜コース)
「残念ながら今回は流産の可能性が非常に高いです」
突然の出来事だった。
頭が真っ白になる。
感情が追いついてないままに、自然と涙が頬をつたう。
「もう一度診てもらえませんか」
信じられず、いや、信じたくなく、震える声で思わず医者に聞いてしまった。
「もう一度診ても同じかと思います」
その言葉を聞いてから一呼吸起き、やっと感情が追いついて現実を受け止めた。
言葉では言い表しようの無いない悲しみが全身を包んだ。
頬をつたう涙はもう、静かに流れることはできず、堤防が壊れたように激しく流れてくる。
私は診察室で声をあげて泣いた。
まだ妊娠初期でお腹に宿ったばかりの赤ちゃんは心拍が確認できず成長が止まっていたのだ。
妊娠が分かった時。
正直計画していたタイミングよりも早かったため少し戸惑いもあった。
仕事で新規部署の課長に抜擢され、周りからの期待を感じていたばかりだったからだ。
それでも日に日に赤ちゃんが愛おしくなり
次第にタイミングなんてどうでもよくなり
赤ちゃんが来てくれたことに、幸せいっぱいだった。
幸せいっぱいで、初期流産が多いことは知っていたが、どこかで自分は大丈夫だと思っていた。
親しい友人たちにも妊娠を報告していた程だった。
それなのに、なぜこうなってしまったのだろう。
母体の過ごし方が原因ではないと、先生からも言われネットで調べてもそう書いてある。
分かってはいるけど、仕事をしすぎただろうか、妊娠が分かった時タイミングがなんて思ってしまったからだろうか。
どうしてもそんなことを考えてしまった。
考えても答えはない。
行き場の無い悲しみはとどまることなく、1日中泣いた。
一体、何日そうやって過ごしていたのだろう。
そんな時、ある方のSNSの投稿が目にとまった。
「お空の上でお父さんとお母さんを選んで産まれてきたよ」
「忘れ物を取りに行っていたんだよ」
それは胎内記憶、中間生記憶を持つ子供の話が書かれた投稿だった。
胎内記憶とは母親のお腹にいた頃の記憶で、中間生記憶とは母親の胎内に宿る前の記憶である。
このSNSの投稿者は最初の妊娠で流産していたそうだ。
胎内記憶を語る投稿者の長女は、本当は妹が先にお母さんのお腹に行ってお姉ちゃんになるはずだったが、忘れ物を取りに一度お空に戻ってきたため、結果的に自分が先に産まれたことを語っていた。
投稿者は流産のことは子供に一度も話したことが無かったのでとても驚いたと同時に、あの時突然失った命がまた戻ってきてくれたのだと思うと胸がいっぱいになったと書かれていた。
「投稿者の方、もう一度赤ちゃんに会えたんだ。よかった」
私は、この話で、どんよりとした厚い曇り空の隙間から太陽の光が見えるように、とても救われたような気持ちになった。
会うことが叶わなかった小さな命に、もう一度会える日が来るかもしれないのだと。
事実かどうかは確かめようの無い話だが、私は間違いなくこの発信に救われた。
夫とも、よく忘れ物をする私に似て、お腹に宿った赤ちゃんも忘れ物をしちゃったのかもね、とベルトできつく締めたように苦しくなっていた心を緩めて話すことができた。
「私を選んでお腹に宿ってくれてありがとう。またいつか会おうね」と何度も心の中で話しかけてお礼を言った。
手術の前には「お母さん初めての手術頑張るね。また会おうね」と話しかけしっかりと自分の中でお別れをすることもできた。
私は、この経験をするまで知らなかった。
人が誕生し、成長することが本当に奇跡なのだということを。
流産は6~7人に1人が経験するという統計があるほど、多くの人が周りに話さないだけで悲しい別れを経験していることを。
そんな奇跡が重なって今の自分がいることを。
本当だったら、今、私には子供がいて子供中心の生活を送っていただろう。
ある意味、赤ちゃんに与えられた時間の中で、奇跡が重なって今ここにいる自分自身がやり残したことがないか、今だからできることはないか、改めて考えさせられることとなった。
そして実際に、元々文章を書くのが好きで、発信にも興味があったものの、行動を起こせていなかったところ、今こうしてライティング・ゼミを受講して行動を起こすことができた。
結婚したから挑戦できないと決めつけていた東京への異動希望の意向も上司に伝えることができた。
私自身、まだまだやり残した忘れ物があったようだ。
せっかく生まれてきたのだから、後悔無い人生をまずは自分自身がしっかりと歩んで、いつかもう一度赤ちゃんに会いたいと今は思っている。
きっと、今も空から見守ってくれているだろうか。
応援してくれているかな。
いつか「待ったよ~」と言われるかもしれないな。
でも、あの時大切なことをたくさん教えてくれてありがとうね、と私は胸をはってもう一度伝えられるように今の時間を大切に過ごしていきたい。
そして、今度はこの投稿が誰かの心を少しでも明るくする光になることを心から願っている。
***
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